sibafutukuri

ゲームの攻略情報・感想、音響系音楽、文学、アニメ、映画などについて書こうかなとおもっています。

『かぐや姫の物語』

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※以下の文章には作品のネタばれが含まれている可能性があります。




日が暮れたアスファルトの上。
仕事上がりでぴゅーぴゅーと冷たい風が吹く。
人が履くものと思えない固い皮に囲まれた靴の中の足はじんわり痛む。
師走、12月のもうなかば。
はやく帰りたい気持ちがあったが、今日こそは寄っていなかければならない、と堪える。
前売りチケットをもらっていたということもあり、上映終了までには見なければ、
という半分はいやな義務感があった。
賞味期限が過ぎているメロンパンを、早く食べなきゃなぁという感覚で。
観たいんだけど、食べたいんだけど、今でなくていいじゃないかと。
この日、特に良いこともなく、むしろ細かなことで苛立つ自分に苛立つ。




そういう気持ちで劇場へと足を運ぶ。
だからこそ、まさか涙が堪えられなくなるとは思っていなかった。




ということで、高畑勲監督のジブリアニメかぐや姫の物語を観て来た。
素晴らしかった。
特に後半が。
素晴らしかった。
アニメとして、アニメーションとして十分以上の出来だと思う。




中盤までは、むしろ早く終わらないかなと、少し寝つつ観ていた。
絵柄はやはり好みでなく、原作の竹取物語のあらすじを
おおざっぱに知っていたり、展開もおとぎばなし風で、
先が読めてしまったりと、あまり見応えがない。
たまに目を見張る個所はあるものの、物足りない。


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しかし、後半。
かぐや姫と捨丸の二度目の再会。
飛空シーン。
月からの来訪者のシーン。
ここらは、純愛と悲恋、育ての親たちとの別れと絆というものもあるが、
それに加えて、
アニメーションとしての演出力、表現力がずば抜けているものだから、より感動した。




特に月の人たちの登場シーンには祝福という言葉が浮かんだ。
映像もだが、場違いに軽快でありながら異物的な音楽が作りだすちぐはぐさが、
このシーンに完璧に合っていた。
作品全体として久石譲さんらしさはないが音楽はよくて、
この場面のあの場違いな曲が一番好きだ。




宮崎駿監督の風立ちぬでもアニメーションとしての凄さに感動した。
この『かぐや姫の物語』はそれとはまたちがった表現方法のアニメーションで、良かった。




かぐや姫の物語』は特に原作が日本最古の物語と言われる『竹取物語』であることもあり、
日本文化、日本人の想像力の逞しさを感じる。
規模や民話的な原作の力などがあり、高畑勲さん個人の作家力とも、
ジブリやそのスタッフたちの能力にも限られない映画としての結果を感じる。
それが日本固有の想像力なのではないか。
とか、観ながら考えていて、代々継承されてきた日本思想が、
ここに、目の前のスクリーンに表現されていることに驚き、感動した。






蛇足気味の感想。
観ていて、かぐや姫と『ドラゴンボール』の孫悟空は境遇が似ていると思った。
一方は古典文学、もう一方はジャンプマンガ、バトルマンガでありながら、
どちらも実はSFでもある。
また帰宅後夕食をこの文章を早く書きたいと焦りながら頬ぼっていて、
富野由悠季の『∀ガンダム』も『竹取物語』のパロディなんだなぁ、といまさら気づいた。