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2013年12月の読書

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  バルトの『明るい部屋』はよかったなぁ、と読んでから数日経って改めて思う。また別の写真論を読みたくなる。自分で写真を撮らないから、せめて本を読むことで関わりたくなっている気分なのかもしれない。
  写真家の畠山直哉さんの名前が最近よく目に留まる。お、いいなと思った写真の撮影者を確認するとこの人だったり。写真についてのまとまった文章を近いうちに書きたい。





2013年12月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2020ページ
ナイス数:67ナイス




明るい部屋―写真についての覚書明るい部屋―写真についての覚書感想
  写真論でありエッセイでもある。母親の死後に書かれ、その喪に服した影響が濃い。そしてバルト自身の遺作。言っていることが難しい。写真とは何か。写真を見て何を考えればいいのか。そういうことを漠然と知りたいと思っていた。すこしは役に立った。また読むべきだろう。目の前に写真がポンとあっても、言葉はなかなか出てこない。バルトの言葉をその手本にする。写真は「それはかつてあった」ことの証明。たしかにそうだろう。人を写せば、その人はその瞬間に過去になり死ぬ。写真でしか見れない表現がある。写真への興味が増す。
読了日:12月31日 著者:ロランバルト





■フィクション


ソロ (講談社文庫)ソロ (講談社文庫)感想
  三篇を収録。どれもストーリーはどうでもいい。この物語を作ろうという意識の無さはもはや潔い。物語は大事ではない。何か書きたい文章、セリフ、文句、瞬間があって、それを書くがために物語が器として用意されているだけのことだ。きっと、そう。藤沢周さんの作品にはそういうものが多々あるが、この一冊の三篇は全部まさにそれ。キワキワって感じか?よくわかんないけど。
読了日:12月24日 著者:藤沢周





失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)感想
  「アメリカ」という名前でも知られている長編。短編「火夫」はこれの序盤部分。オチを言ってしまうけど、オチがない!というオチ。わりと長い小説だがカフカが途中で書いたのをやめたみたいで、すごく中途半端なところで終わっている。というか、カフカがノートなどに書き残したものを集めて編まれているので、明確な終わりと言えるものがないという感じか。読者にとって主人公カール・ロスマンのアメリカでの行方は分からず、まさに失踪者。変な二人組が出てきたり不条理だったりカフカらしさはあるが、どこか物足りない。
読了日:12月24日 著者:フランツカフカ





かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)感想
  初めて読んだ。始めのほうはコミカルで可愛らしいジョナサンだが、なんか最後の方は宗教臭く哲学臭くなっていく……。不思議なお話。なんなんだろう、この、目の前にある奇妙な物体は。自分の頭や器に入りきらない、得体の知れないなにか、という感じの読後感。もう触れたくはないが、この不思議さに再び手にとってしまうかもしれない。変な本だ。
読了日:12月24日 著者:リチャード・バック





海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)感想
  ガルシア=マルケスなどと共に、安部公房のインタビュー集『都市への回路』で名前が挙げられていた小説家・詩人のジュール・シュペルヴィエル。フランス語で作品を発表。マジックリアリズムというものがこれを読むまでほとんど分かっていなかったが、これを読んでだいぶ理解できた気がする。表題作「海に住む少女」では、海の真ん中に不思議と浮かんだ街があり、そこに孤独に暮す少女の話。他には動物が言葉を話す物語が多い。不思議なことが当たり前に起こっているがファンタジーとかおとぎ話らしくはない。安部公房の作品ともやはり近い。
読了日:12月24日 著者:シュペルヴィエル




シャドウ・ライン/秘密の共有者 (コンラッド作品選集)シャドウ・ライン/秘密の共有者 (コンラッド作品選集)感想
  『闇の奥』の著者の中編か短編くらいの二作品を収録。『闇の奥』は語り手の描写が全体的にぼやけていて、それが霧の中を進んでいく船のようでよかったが、今回の二作はそれとはまったく違った。どちらも船を中心とした話だが、船の装備などの部位がこと細かく書かれている。さすが船乗り、と感心する。「秘密の共有者」が特に良かった。他の船から泳いで逃亡してきた罪人を船長が匿う。船長は船長で、その船に乗ったばかりで他の船員とは距離があり、船長も罪人も侵入者という点では同じ。そういう心境の表現やサスペンス性が巧い。
読了日:12月24日 著者:ジョウゼフ・コンラッド





恋愛のディスクール恋愛のディスクール感想
  宗教人類学者で『官能教育』の著者でもある植島啓司さんの小説。タイトルはロラン・バルトの『恋愛のディスクール・断章』より。この本は植島さんの書いたテクストと、引用されたバルトのテクスト、Ralph Gibsonによる写真という三つの要素で成り立っている。植島さんのテクストだけで言えば、サスペンスを主軸としてその上に恋愛話が薄く乗っているというかんじ。意外と普通だが、どことなく江國香織っぽくて好みだ。しかし、そのテクストにバルトやRalph Gibsonの写真が混ざって、どう受け取ればいいのか分からないが。
読了日:12月24日 著者:植島啓司





■ノンフィクション


官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか (幻冬舎新書)官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか (幻冬舎新書)感想
  宗教人類学者である著者が現代における愛の価値観や結婚制度などを問い、未来の愛のありかたを予言する一冊。「私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか」という副題にシビれた。私たちが当たり前と思っている愛の価値観は、本や学校や教育、社会によって教えられてきて作り出されたものだ、という事実を突きつけられる。「官能教育」というタイトルの割に意外と固く、真面目でもある。不倫の是非を考察する際などに文学の古典作品や映画が引用されていたりと、飽きさせない構成になっている。手軽に読めるが得るものは大きい。
読了日:12月2日 著者:植島啓司





知識無用の芸術鑑賞 (幻冬舎新書)知識無用の芸術鑑賞 (幻冬舎新書)感想
  一作品2-4ページ程の解説あるいは芸術の見かたが書かれている。文章が短い分、様々な芸術作品が扱われているので幅広く知ることができる。作品の解説らしくはしないように書かれていて、あくまでも著者の受けた印象による一つの見かた、が紹介されている。芸術の見かたに正解はないだろうから、その判断は良いとおもう。それでも、結論として「現代の○○に対して警鐘を鳴らしている」みたいなものが多すぎてワンパターンだなぁ、と思ってしまう。芸術なんて指摘するだけで結局のところ何も行動を起こせないのでは?と疑問を抱く。
読了日:12月24日 著者:川崎昌平





人間にとって成熟とは何か (幻冬舎新書)人間にとって成熟とは何か (幻冬舎新書)感想
  だいたい人間にとって当たり前のことを言っているだけ。でも、当たり前のこと、当たり前にやるべきことって意外と忘れているもので改めて意識させられる。当たり前を出来るのが「成熟」なんだろう。基本的にご老人が「最近の若者は○○がダメだ」と愚痴っているだけだが、ご老人の言葉を聞く機会があまりないので年配の方から見た現代社会というものが見えて面白い。自己啓発書と括れる本かもしれないが、本業の作家が書いているものなので作家の私生活や思考が見えてくるのも、本題とはズレるがこの本の良いところ。初めての曽野綾子さん。
読了日:12月24日 著者:曽野綾子





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明るい部屋―写真についての覚書

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ソロ (講談社文庫)

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