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7月の読書

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7月に読んだ本と、その感想です。




7月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2536ページ
ナイス数:42ナイス



檸檬 (新潮文庫)檸檬 (新潮文庫)
梶井基次郎の病める作品集。小説と言えるほど客観的ではなくエッセイ的な「小品」と言えそうなこの一冊は、夏目漱石の『文鳥・夢十夜』(新潮文庫)に近いものがあった。どちらも病床に臥していることが多いことも通ずる。 小説らしい小説は少ないのだけれど、その中では「ある崖上の感情」が上手く作られていて面白かった。崖の上にのぼって、様々な開かれた窓を通して民家を覗き見する、というような話。誰もが持っていそうな背徳的な心理を描いたこの短編は、近現代小説らしくおもえた。 退屈でもあるけれど、病人にしか書けそうにない作品群。
読了日:07月31日 著者:梶井 基次郎




文鳥・夢十夜 (新潮文庫)文鳥・夢十夜 (新潮文庫)
全編通して小説でもなくエッセイでもなくという内容。純粋な小説もエッセイもないかもしれない。 シーソーみたいにグラグラとどちらつかずの文章だらけだから、どう読むかという姿勢によって読みとれるものが変わってくるのが面白い一冊になっている。 漱石の実体験として特に読んでて不思議で面白かったのが「永日小品」の「三十分の死」を淡々と書いている部分。段々弱っていって、もうダメだと思うのだけれど、この人が死んでいないとしたらこの書いている「私」や「余」は誰なんだ?と何度も思わされた。
読了日:07月19日 著者:夏目 漱石




砂の女 (新潮文庫)砂の女 (新潮文庫)
文学的脱出系サスペンス小説。サスペンス要素が多いけれど、しっかり文学しているのが凄い。解説でドナルド・キーンが言っている「文体の一番の特徴は、比喩の正確さと豊富さ」ということに文学性が支えられているように思える。 砂の穴からの脱出という観点で言えばサスペンスなのだけれど、理解しがたい砂に浸食され続ける村とそこに住み続ける人々、というのはホラーでさえある。こう書くと、福島という土地とそこに拘泥して住み続ける人々を思い出す。そこの人々には郷土愛があって、第三者からはそれが理解しづらい。


  砂の穴で男女が絡み合っているのを、砂の上から部落の者たちが「見世物」として楽しんでいて、それをぼくら読者は眺めている。この瞬間は、あたかも自分が穴の中にはいなくて第三者として安全だというように錯覚させられたけれど、自分が決して「穴」の中にいるわけではないと断言できるかというと自信がない。この物語の「男」には共感できる部分も多かったりするので。
読了日:07月14日 著者:安部 公房




すべて真夜中の恋人たちすべて真夜中の恋人たち
「昼間のおおきな光が去って、残された半分がありったけのちからで光ってみせるから、真夜中の光はとくべつなんですよ」という文章のある序文はとても綺麗。 でも、後味の良い話ではないし、始めと終わりの中の部分も特に良いというわけではない。終盤が不評という印象があったけれど、確かにこれは読んでいてあまり嬉しくはない。 主人公のセリフなどで表面に出るキャラと、語りのキャラが違いすぎて意図して嘘つきや考えてはいるけれど表に出せない人を描いているのか、意図せずそういう分裂的なキャラになってしまったのか、判別できなかった。


  『乳と卵』や『へヴン』に比べるとだいぶ普通の小説らしくはなっていたように思う。登場人物の登場の比率のバランスというか。でも、これよりも前の二つの方がまだ好きな方だ。 何のために書いたのか、何を言いたいのかということがいまいちわからないし、何も残らない。それはやっぱり、最後で台無しにしてしまったせいなのかもしれない。 川上未映子さんが書いた本でなければ読まないだろうし読まなくて良いと思う。
読了日:07月15日 著者:川上 未映子




夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
時間旅行への夢に溢れ、科学への夢に溢れた作品だった。未来と科学をとても前向きにとらえている。それは終盤の「誰がなんといおうと、世界は日に日に良くなりまさりつつあるのだ」という言葉が明確に表している。あまりにもはっきりと未来への希望を断言したこの言葉は、ぼくにとって唐突で意外でとても眩しく思えた。 古典SFだから当然かもしれないけれど、読んでいてそんなに楽しいものではなかった。つまらなくはないけれど。でも、1956年に発表された作品でありタイムトラベルものの歴史を考えるとやっぱり名作であるのかもしれない。
読了日:07月07日 著者:ロバート・A・ハインライン




リトル・ピープルの時代リトル・ピープルの時代
東浩紀さんらへんの人が言っていた「大きな物語」の喪失を前提として、村上春樹、『仮面ライダー』、『ウルトラマン』などの作品を通して時代の流れを読み解いていく。 宇野さんの批評を読んでいると、ぜひその作品に触れたくなる。『ゼロ年代の想像力』でもそうだったしこの『リトル・ピープルの時代』でもそうだった。今回は『仮面ライダー』と『ウルトラマン』を観たくなり、実際に一部だけは観た。 長い本なのでもう全体像は覚えていないけれど、ところどころ面白い部分はあった。補論にAKB48論があるけど蛇足感。
読了日:07月17日 著者:宇野 常寛




私の個人主義 (講談社学術文庫 271)私の個人主義 (講談社学術文庫 271)
夏目漱石の講演集。 「私の個人主義」という題の講演は読む価値があるとおもった。個人主義という考えがとても文明開化的に思える。 自分は漱石の言う個人主義ではないかもしれないけれど、個人を優先する方に偏った人間のようにおもえる。解説などで漱石の説いた個人主義がいかにも理想的なもののように語られているけれど、協調性や共同体での利益を重視しないということで問題もあって現代においてそれは現れているんじゃないか。 大きな共同体に属しきらず、小さな輪の中でキャラを演じ、切り替える現代人の生き方は個人主義によるものか。
読了日:07月26日 著者:夏目 漱石




第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
お笑いコンビのピースも又吉さんも知らなかったけれど、読んでいて笑えてくるから驚いた。笑えるという意味でも面白いし、又吉さんのエッセイとしても面白い。 本の紹介は凄く少なくて、ほとんどがエッセイみたいなものだけれど、読んでいて飽きないのでそれでもよかった。本が大好きというのがヒシヒシと伝わってくる本。
読了日:07月22日 著者:又吉 直樹






2012年7月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター




檸檬 (新潮文庫)

檸檬 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

リトル・ピープルの時代

リトル・ピープルの時代

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)