映画、アニメ、ゲームなど。物語を織り成す媒体はいろいろあるけれど、私はいま本を読んでいた。ポール・オースターの『幻影の書』。この本が特別優れているから、とかではなくてもちろんまだ途中なのでその完全な判断はいまはできないのだけれど、そうではなくて、なぜだかは分からないけれどなんとなく、本で読む物語は良いなとおもったのだった。
さっき書いたとおり、物語はいろいろな媒体で「読む」ことができる。でもいろいろな媒体ごとで読み方は変わって来て当然書き方からしてちがっているのだろう。そういう中で、どれが最も良いとか悪いとかは決める必要がなくて、私もそういうように決めようとは思っていないのだけれど、たぶん私が一番好きなのは本で読む物語なのだろう。
というか、物語と呼ぶときに最もしっくりくるのが本なのかもしれない。実物の紙とインクなどの集合としての本。いまは楽天の商品のタブレットやそれに関しての社長の三木谷さんの発言で問題になっている電子書籍という新媒体だけれど、私はまだまだ馴染めていなくて使ってもいない。
おそらく、実物の本としての媒体として読む、この物語の感覚が私には合っているのだろう。電気スタンドの明りで、好き勝手な音楽を控えめに流して、孤独に本に向かって時間を過ごす。ときにはお酒が傍らにある。紙の触りごこちや目にするテキストの色形なども含めて、本を読んでいるのだろう。
中古でたくさん読めない本を買って、読めない本が机に積まれて溜まっていく。新刊は毎週毎週出る。雑誌などの広告たちは読め読めと私に叫ぶ。どんどん読まなければと日々の中でゆっくりと焦る。実のところ、読まなければならない本は無限大と言っていいくらいある。未来がいつまで続くかはわからないけれど、先へと続く限りどこまでも増えていく。でも、書いたみたい本をある。そして日々の仕事がある。そういう透き通らない濁った日々を過ごしている。
こういうことは普段考えることはあっても、文字にするまでには至らない。そこまで至らさせたのは、やはり今夜の不思議な感覚なのだろう。本で読む物語は良いとおもった。
- 作者: ポール・オースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/10/31
- メディア: 単行本
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