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藤沢周による宮本武蔵 「武蔵無常」

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武蔵無常

武蔵無常


  藤沢周さんの「武蔵無常」を読んだ。『文藝』の春季号(2016年2月号)で。

【長篇一挙掲載】
藤沢周「武蔵無常」(240枚)
勝って、いかになる。殺して、いかになる……それでも武蔵は巌流島へ渡る。迷いと悔いに揺らぐ殺人剣の神髄を描き、鬼気迫る傑作!
http://www.kawade.co.jp/np/bungei.html


  んー、難しい。時代小説風でありながら、ハードボイルド。今まで読んだ中で一番藤沢周さんっぽくないんだけど、ニヒルな感じやハードボイルドっぽさなど、らしさは詰まっている。


  全然宮本武蔵に詳しくなく、そういう小説を読んだこともなければ『五輪書』も読んでいないからか、話が頭になかなか入ってこなかった。武蔵のモノローグが中心で、表現が凝っていて回りくどく、誰と話しているのかも誰が話しているのかもわからなくなる。


  玄人向けの小説だな、と思った。これに付いていける読者はかなり限られてくるだろう。自分もまた置いていかれた感覚が残る。でも、しがみついていきたくなる魅力がある。


  話の筋としては吉川英治の『宮本武蔵』と同じなのかな。この「武蔵無常」は武蔵が佐々木小次郎と巖流島に向かう辺りまでが描かれてるけど、巖流島に行くまでがほとんどでそれが長い。武士道とは、とか絵を描いてた面も出てたり、仏教観も合わさり、以前殺した相手のことで苦しんだりと、物凄くくどい。


  武蔵と小次郎の決闘は憎み合っているから殺し合う、という感じではなく、お互いにリスペクトし合うから刀を交わす、という具合だった。と言っても、小次郎が長刀を持つのに対して、武蔵は船を漕ぐのにつかう櫓(ろ)を持って立ち向かうわけだけど。


  それまで、武士道とはとか五輪とは、とか考えていた人間が、木刀と近い櫓を握って殺し合う。それで刀とはとか武士とか、世界とはなにかを知る、みたいな。なかなか衝撃的だった。同じく藤沢周さんの木刀で殺し合う『武曲』と通じるものを感じる。


  全然理解が追い付かなかったけど、魅力は感じた「武蔵無常」。吉川英治の『宮本武蔵』や『五輪書』を読んで勉強してみたいとおもった。途中まで読んでいた井上雄彦さんの『バガボンド』(とついでに『リアル』も)を読み直したいと思ったけど、未完でまだまだ完結しそうにないのが躊躇するところ。




文芸 2016年 02 月号 [雑誌]

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武蔵無常

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サラバンド・サラバンダ

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  ほかにもいろいろ書いていますが、リンク貼るの意外と面倒だと気づいたので最近のだけ。気になるひとは「日記の検索」っぽい部分で「藤沢周」と入力して「一覧」で検索してみてください。