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2015年11月の読書

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なんだかオースターばかり読んでいたな。
まだまだ足りないけれど。
あと実篤先生。


2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2898ページ
ナイス数:92ナイス





■フィクション


孤独の発明 (新潮文庫)孤独の発明 (新潮文庫)感想
  訳者の柴田元幸さんの解説によると本書は詩人として活動していた「オースターが散文作家として出発した一冊」。現実とフィクションが綯い交ぜな作風は実にオースターらしいが、しかし面白いとは限らない。自伝的かつ物語批評的な内容で、面白味はあるが単純に小説として読むとどうか。どこか物語を書くことの照れやためらいを感じさせる。少なくとも後にはそれが作家の鋭利な武器になっていくのだが。終盤の、作中の人物の人生と交わり合うように書かれた『ピノキオ』の批評的な文章がすごくよかった。
読了日:11月3日 著者:ポールオースター





トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)感想
  嘘のような本当の話がオースターの周りには集まってくる。自身の体験した偶然の連鎖もエッセイとして収められている。また見習い作家時代の話も多く、自虐的な貧乏話が面白い。『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』と同時期に刊行された本で、そっちが特にそうなのだけど、庶民的な個々の人々の意思の集まることによりアメリカの国家性が表れてくる。とりわけ、9.11の時期とも重なっている影響が濃く、その文脈は3.11直後の「絆」の氾濫に似た煙たさもある。オースターの書く実話を読むと小説との境目がわからなくなる。
読了日:11月28日 著者:ポールオースター





明暗 (新潮文庫)明暗 (新潮文庫)感想
  この分厚い未完成品を読み始めてみると漱石が生きている気がして、終わりに近づくにつれて漱石の死に近づいていく気がするものだから、内容の面白さに反して読み終えたくない感情が高まってくる。いつもの漱石のように恋や嫉妬によって起こる静かな争いが書かれているが、ここまで心理的に一つ一つの言葉によって運命が左右されるような緊張感を持ったサスペンスは他になかったように思える。冗長であり話の展開の遅さは完成させる気持ちを疑わせるもので、盛り上がりのピークに達した頃にページは続かないのだからもどかしくなる。
読了日:11月28日 著者:夏目漱石





愛と死 (新潮文庫)愛と死 (新潮文庫)感想
  まさかと思いながら読んでいたけど、ベタベタな展開になるものだから驚く。話の流れは疑問だけど、ただ経過が良い。純粋に恋する二人の気持ちが溢れていて、途中からは手紙によって語られる。行き交う手紙を読む読者は二人の祝福を願うようになる。悲愴な感情も含めて、心情の表現に目を見張る。
読了日:11月28日 著者:武者小路実篤





■ノンフィクション


人生論・愛について (新潮文庫)人生論・愛について (新潮文庫)感想
  実篤の随筆や評論集で、山室静さんが解説を書いていて選者でもあるようで。「人生論」を読むと『心理先生』の説教とほとんど同じことを言っているように感じる。人間として当たり前にあるべき姿を語っていて、それは理想だから面白味はないのだけど、そこから著者が理想主義者だということがまざまざと伝わってくる。しかし著者が凄いのは実際に<新しき村>というユートピア的(?)共同体を作り上げたこと。読んでいくにつれ、選ばれたものでなく、全ての文章を読みたいと思うようになる。
読了日:11月3日 著者:武者小路実篤





ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)感想
  古本屋でよくこの本を見かけていて手に取りようやく読んだ。一巻目を見たことがなかったので、「2」まで含めてタイトルなのかと思っていたがちゃんと一巻目がある。でも、この二巻目から読み始めても特に問題はない。アメリカのラジオ番組に集められた一般人からの「本当にあった話」の集まり。この巻のテーマは「見知らぬ隣人」、「戦争」、「愛」、「死」、「夢」、「瞑想」。凄く好きな話もあったが、全体的には人生に一度きりのとびきりの話が寄せ集められているという体裁なので飽きがくる。「必然なる偶然」にオースターらしさを感じる。
読了日:11月28日 著者:





メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)感想
  テレビ、新聞、ウェブなどの第一人者と言える28人のインタビュー。一つ一つは内容が薄いほうかもしれないけど、これだけの人が集まり、多少の偏りはあるもの中立的にまとめられた本は初めて読む。知っていた人では東浩紀津田大介川上量生。2014年刊行。
読了日:11月28日 著者:長澤秀行





戦略PR 空気をつくる。世論で売る。 (アスキー新書 94)戦略PR 空気をつくる。世論で売る。 (アスキー新書 94)感想
  興味はあったけど戦略PR(パブリック・リレーションズ)の本を読むのは初めてで、似ているけど広告とは違っていて新鮮で、なかなか面白い本だった。入門書としていいんじゃないかと思う。佐藤尚之さんの『明日の広告』が下敷きになっていて、最後にあるお二人の対談も濃い内容でいい。2009年刊行でスマホSNSはほぼ出てこないが、基本的な部分は今と変わらないんじゃないでしょうか。2011年に新版が出てるみたい。
読了日:11月3日 著者:本田哲也





これからの広告人へ (アスキー新書)これからの広告人へ (アスキー新書)感想
  広告関係のディープな部分はわからなかってけど、わりと開かれた本なので、おおまかに掴めた感じはする。物を売っていくひととか、伝えていくひと、大雑把にいってクリエイターとか、繋がっていく知識があるように思える。広告業界にはどこか虚像を作り上げていく負のイメージを持っているけど、著者はすごく楽しそうでそういうもんなのか、と思う。2013年刊行。
読了日:11月3日 著者:笠松良彦





読書メーター





明暗 (新潮文庫)

明暗 (新潮文庫)

続 明暗 (ちくま文庫)

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