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2014年2月の読書

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2014年2月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2667ページ
ナイス数:48ナイス





■フィクション


オラクル・ナイトオラクル・ナイト感想
  貴重で新鮮な読書体験をした。物語内物語が大好きなオースター。今まで読んだ『ムーン・パレス』、『幻影の書』でもよく登場した手法だが、本書でもいくつものフィクションがこの本の中にありそして最も巧く物語に絡み合っていて見事。物語の中の物語は複雑で頻繁で混乱をもたらすが、それらは全て主人公を通して存在し、しっかりと結末に繋がり整合性もある。ぼくはどこが現実か見失った。虚構性を強調し尽くすことで現実性を得ることがあるのだと気づかされた。主人公が自分のように感じそこにある一次世界までが現実と思える。今までにない感覚。
読了日:2月13日 著者:ポールオースター


「ポール・オースター 『オラクル・ナイト』 ―n次世界の氾濫による一次世界への自覚―」(2014.02.24)





ジップ&キャンディ―ロボットたちのクリスマスジップ&キャンディ―ロボットたちのクリスマス感想
  キングコング西野亮廣さんの絵本で、読むのは三冊目。これは一冊で一つのお話。主人公が新型ロボットでヒロインは旧型ロボット。やはり西野さんはSFが好きなのだろうか。ヒロインのキャンディは性能の低いロボットで記憶できる容量が限られていて、そこが切ないロマンスのキーとなっている。なんとなく『メメント』や『博士の愛した数式』を思い出す。主人公ジップはピノキオみたいに人間になるのかと思ったが……。絵は相変わらず濃密で巧いが、白の装丁のせいかやや開けている印象。ストーリーは他と比べて典型的で少し物足りない。
読了日:2月13日 著者:にしのあきひろ





オキナワの少年 (文春文庫 ひ 3-1)オキナワの少年 (文春文庫 ひ 3-1)感想
  1971年下半期芥川賞受賞作。上原隆さんのルポ『友がみな我よりえらく見える日は』で知った作家。ホームレス同然の生活をしていたとか。アメリカ占領下の沖縄に住む小学校高学年くらいの少年が主人公で、彼の主観で語られるわけだがその文体がすごくよくて話にも合っている。沖縄のたまに全く意味不明なほどの方言まじりで売春宿の実家などへの不満など、感受性という液体を一粒も漏らさず生々しく綴る。この物語にこの文体は完璧とさえ思える。読んだ甲斐があった。この独特の日本でもありながらの異文化性は思い出してまた読みたくなりそうだ。
読了日:2月13日 著者:東峰夫





虹の岬の喫茶店 (幻冬舎文庫)虹の岬の喫茶店 (幻冬舎文庫)感想
  『あなたへ』小説版の著者。岬にあるお婆さんが経営している小さな喫茶店を中心とした六つの物語。キャラクター、物語ともに典型的で、物語の構造やテンプレートの存在を気にしてしまう。だから純粋に読書を楽しむには至らなかったが、逆に考えれば物語のテンプレを改めて意識するには良い機会だった。それに、テンプレ通りに書くのも技術がいるだろう。例えは悪いが「職業軍人」的意味で「職業作家」という印象を受ける。
読了日:2月28日 著者:森沢明夫





15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-1)15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-1)感想
  ネット心中を企む少年をきっかけに始まる15人の24時間。海外ドラマの『24』などに影響されていそうな、ライトなサスペンス。『サマー/タイム/トラベラー 』はとてもよかったのだが、こちらは何かが物足りない。スピーディーさや展開が気になる点は良いんだが。6巻中の一巻目。読んでいて思ったが、ミステリーとかこういう話は誰かが死んだりするわけだが、死を物語の目的にしているためなぜか全体としては結局軽い印象を受ける。良くも悪くも。そもそも、人の死をフィクションで「使う」ということが悪く言えば「遊び」になるのだろう。
読了日:2月13日 著者:新城カズマ





■ノンフィクション


移動祝祭日 (新潮文庫)移動祝祭日 (新潮文庫)感想
  晩年に書かれた小説風エッセイ、ヘミングウェイのパリ時代。フィッツジェラルド、ジョイス、エズラ・パウンドガートルード・スタインなどが親しい友人として登場。(実は金があったという説もあるが)貧困さは意外で驚いたが幸せそうなパリでの結婚生活。ヘミングウェイの作家修業時代でもある。フィッツジェラルドがとても阿呆な人物として描かれていて、ヘミングウェイはたまにキレているんだけど二人の関係が滑稽で面白かったり。ここで語り切れないほど面白くて名著。ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』の原案のようなもの。
読了日:2月13日 著者:アーネストヘミングウェイ





遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)感想
  『文学界 2014年1月号』の柄谷行人いとうせいこうの対談で興味を持った本。『遠野物語』や民俗学者として知られる柳田国男だが、それ以前に東大で農政学を学び農商務省の官僚として働いていたというのが意外だった。その頃の柳田は真摯に国の未来について考え、農業によって変えようと活動していたようだ。「山人」(山に住む天狗のような人々?)や狼が残存しているなどのトンデモ論を持ち出して嘲笑されていたりするのも面白い。短い文章に色々と情報が凝縮された本で、読み切れたとは言えないので、もっと理解できるようになりたい。
読了日:2月28日 著者:柄谷行人





話す写真 見えないものに向かって話す写真 見えないものに向かって感想
  石灰石鉱山の発破の瞬間の写真集『BLAST』や東京の半地下の川の写真、東京の俯瞰写真などを撮る写真家、畠山直哉さんの講演集。そのテーマは自身の作品について、写真の歴史、光と写真について、写真と建築物、アートとはなにか写真はアートかなど。とりあえず漠然と写真というものに興味のあったぼくにはちょうど良かった。良い写真を撮るために写真家がいかに苦労していかに創意工夫しているかがわかる。畠山さんの写真をもっと見たくなり、自分でも写真を撮りたくなる。しかし写真というものへの意識のハードルが上がってしまうのも事実。
読了日:2月2日 著者:畠山直哉





人は死なない−ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索−人は死なない−ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索−感想
  医者による医療(前半)とスピリチュアル(後半)な本。「人は死なない」とは医療的に考えれば間違いだが、スピリチュアルとか神秘学的に考えれば正しい。著者はある意味で医療を究め人に施せる医療の限界を知り、神秘の世界に方法を求める。マッドサイエンティスト的。一歩越えればあぶないオカルト本になりかねないが、この本はぎりぎりマジメな本になっている。でも、この手の本は受け手にとっては誤解を生むだろう。神秘学とかに興味があるので面白かったが、例えば「人は死なない」という言葉の危険性は無視できない。登山の話が特に好き。
読了日:2月28日 著者:矢作直樹





L.A. (文春文庫PLUS)L.A. (文春文庫PLUS)感想
  イラストレーターの佐々木悟郎さんによる自伝的小説。主にアメリカでのアートスクール時代の話。エピソードの間に、たまにパステルカラー彩られた輪郭のぼやけたイラストが挟まる。古本でジャケ買いしたが、なかなかよかった。ふとした時間の隙間に読むのにちょうどいい。「昭和のアメリカ」と言えるような文化の混在した雰囲気が、わたせせいぞう村上春樹に近いかもしれない。
読了日:2月28日 著者:佐々木悟郎





映像の修辞学 (ちくま学芸文庫)映像の修辞学 (ちくま学芸文庫)感想
  映画や写真に関するバルトの文章をまとめた本の文庫版。バルトの本の中でぼくはこれが一番嫌いで一番の駄作の失敗作だとおもった。非常にもったいない。なにより蓮實重彦という人が大嫌いなのだと自覚した。嫌いな人が訳したり書いた文章をまじめに読む気になれるだろうか?蓮實重彦という人は難しい文章を難しくしか書けない人だ。紙の上に権威としてしか存在できない。実にくだらない。もう一人の訳者、杉本紀子さんの「文庫版訳者あとがき」は個人的なバルトのエピソードがあり好きだったが。
読了日:2月9日 著者:ロラン・バルト





「読書メーター」


オラクル・ナイト

オラクル・ナイト

移動祝祭日 (新潮文庫)

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話す写真 見えないものに向かって

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