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sibafutukuri

音響系音楽、文学、アニメ、映画あるいはゲームの感想、攻略などについて書こうかなとおもっています。

2013年8月の読書

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2013年8月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3866ページ





■フィクション


太宰治賞2013 (単行本)太宰治賞2013 (単行本)感想
  受賞作以外は読みたいと思ったが読めなかった。受賞作「さようなら、オレンジ」は納得できる作品。これは芥川賞を受賞してもおかしくない、そしてぼくは納得できる。舞台はおそらくオーストラリア。主に描かれるのはアフリカ難民で英語をうまく話せないシングルマザーのサリマという女性。サリマが異国にうまく溶け込んでいく姿を、日本人女性のサユリが書いた小説としてその先生に手紙で送る、というような手の込んだ構成で綴られる。物語の中心は女性たち、そして異国での女性の自立。現代らしくフェミニズム的で国際的な読む価値のある一篇。
  「さようなら、オレンジ」の作者KSイワキさん自身が、大阪生まれで大学卒業後、単身渡豪、在豪20年とのこと。これから分かる通り、本作は作者の体験を多く使ったものと言えるだろう。彼女にしか書けず、より彼女に近い小説。読み終えた直後、ぼくは一瞬彼女はこれしか書けないのではないか?と思った。でもすぐに、いやこれだけ巧みな構成の小説を書けるなら他にもイワキさんにしか書けないものを書けるはず、と思い直す。これから書かれるであろう小説に期待。
読了日:8月5日 著者:





風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)感想
  ジブリアニメを観てから。「風立ちぬ」も「美しい村」も優れた小説とは言いにくい。あまりにも物語が進まない。そして露骨に私小説的。自然や心情の描写はきれいで落ち着いていて好みだが。小説と言うより、詩みたいだ。アニメとは内容が全然違う。ただ、菜穂子が結核サナトリウムに療養に行く場面は近くて、アニメ版堀越二郎のキャラクターの落ち着いた性格、話し方、庵野秀明さんの声は影響を受けていそう。堀辰雄さんの「菜穂子」という長編小説もアニメに関係ありそうなので読む予定。堀さんの小説はあくまでも原案なのだろう。
読了日:8月8日 著者:堀辰雄





菜穂子・楡の家 (新潮文庫)菜穂子・楡の家 (新潮文庫)感想
  結核が死病だった時代。長野の村や森などの療養所にて、出てくる人々は病人ばかり。「風立ちぬ」は詩のような叙述でまだ味わい甲斐があったけれど、こちらはもっと客観視されて書かれていて面白みに欠ける。あと二倍くらい生きたら身にしみるかもしれない小説。
読了日:8月29日 著者:堀辰雄





トータル・リコール (ディック短篇傑作選)トータル・リコール (ディック短篇傑作選)感想
  「トータル・リコール」と「マイノリティ・リポート」という映画化された有名作品や、初邦訳の「ミスター・スペースシップ」、「非O」、「フード・メーカー」などが収められた短編集。ページ数が多く読むのが大変でもあるけれど、全体的に倫理的だったり哲学的に考えさせられる設定が多くて面白い。大森望さんが「編者あとがき」で書いているけれど、9.11や3.11以後だからこそ身近に感じられる作品がたまにあって凄い。特に「訪問者」は放射能汚染により人間が住めなくなった地球を書いていて、3.11の原発事故を思い出した。
読了日:8月12日 著者:フィリップ・K・ディック





冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)感想
  タイトルだけは誰でも知っていそうで、まさか自分が読むとは思っていなかった。装丁などが、なんかあまりにも大衆小説っぽいイメージが強くて読むのに抵抗があったけれど、読んでみたらすごく良かった。イタリアが舞台の過去の恋愛を引きずったまま、読書とバスタブの世界に引きこもりがちの女性あおいを中心とした恋愛と少しの芸術の物語。絵画など、芸術の世界に最近興味を持ち始めて、江國香織さんの本にはちらちらとそういう舞台設定が登場するようだから、読むにはちょうど良い時期かもしれないと思った。おしゃれ感の演出がうまい。
読了日:8月28日 著者:江國香織





薮の中で…「ポルノグラフィ」 (徳間文庫)薮の中で…「ポルノグラフィ」 (徳間文庫)感想
  カバーの説明に「著者初の官能長編」とある。「官能小説」とは書いていないが、それを意識させる。ただ官能小説と言うにはあまりにも本番までじらし過ぎで、やりきれていなくて中途半端。性描写は著者の作品の読んだ中で最も激しいが、やはり文学っぽさは混ぜずにはいられなかったようだ。文庫で約280ページずっとゴルフ場にいるままで登場人物三人だけ、というのは展開にだいぶ無理が生じていた。エロティックサスペンスとジャンル名としては呼べそうなもので、そのエロの中のサスペンス性の面白さの広がりを感じさせることが救い。
読了日:8月28日 著者:藤沢周





ポプラの秋 (新潮文庫)ポプラの秋 (新潮文庫)感想
  世田谷文学館に行ったら『ポプラの秋』の一節がちょろっと紹介されていて、湯本香樹実さんを全く知らないけれどものすごく読みたくなった。『夏の庭』で有名な作家だがそちらはまだ読んでいない。『ポプラの秋』は大人になった現在の女性が、幼いころに住んでいたポプラ荘やその大屋さんのお婆さんを思い出したりする話。過去の話がお婆さんが魔女みたいですごくよかった。梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』を思い出す。現在の話はすこし蛇足感がある。そこがもったいない。
読了日:8月28日 著者:湯本香樹実





銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)感想
  江戸時代の大阪での、寒天とかようかんとかを巡る商人たちの話。読んでいると和菓子を食べたくなるねぇ。お話はふつう。
読了日:8月16日 著者:高田郁





グランド・フィナーレ (講談社文庫)グランド・フィナーレ (講談社文庫)感想
  ロリコンオヤジの話の「グランド・フィナーレ」は2005年の第132回芥川賞を受賞。途中から話の筋は面白くなるけどなんか中途半端なところで終わる。文体も内容も俗っぽく、文学性が少なすぎる。賞は作家の前後の文脈を含んで与えられるのだろうけど、なんも読む価値を感じない一篇、一冊。意味がない。この人はもういいかな。他に書いている人がいたけど、本当に、2ちゃんねるでも読んでた方がマシだっていう出来。金も時間もムダだって。そう考えるとこの作家、この一冊に限らず現代あるいは未来における文学とか本の価値を疑う。
読了日:8月12日 著者:阿部和重





瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)感想
  20、30代女性が読めばすごく考えさせられるだろう内容。結婚と仕事、夫と恋人、子供と姑と家族と不倫と離婚、幸せとは何か?というような。女性向けではあるけど、結婚という軸を中心にした物語なので男が読んでも意味はある。登場人物が多く、意地悪に言えばご都合主義的にその関係が「上手く」重なり合っていく。終盤に進むにしたがって、いきなり5年後になるなど展開を急いでいて、人物の心情を描き切れていないようでもったいなかった。そういう部分で、ちょっと抒情性に欠ける。
読了日:8月2日 著者:唯川恵






■ノンフィクション


半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫)半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫)感想
  おもしろい。「腰ぬけ愛国」というのは、日本は世界においてでしゃばらずに端っこでがんばってればいいんだ、それが平和だろうというような愛国精神の意味で宮崎駿さんと半藤一利さんの意見。ぼくはそれに共感する。本のタイトルとしては微妙だが、いい考え方だ。本書はアニメ『風立ちぬ』を中心としてすごく広い範囲の話題での対談本。アニメを観てからでも観る前でも楽しめるでしょう。いきなり夏目漱石の『草枕』が最高傑作だ、という話題から入っていってわくわくした。『草枕』は昔に読んだけれど憶えていなくて再読しようと思った。
読了日:8月28日 著者:半藤一利,宮崎駿





本谷有希子の この映画すき、あの映画きらい本谷有希子の この映画すき、あの映画きらい感想
  読めば読むほどイライラしてくる本谷有希子の映画感想文集。この本もだけど、本谷有希子さん自身の書いたものも読むほどになんか呆れてくるのだけど。単純にこの本を読む限り、彼女はただのミーハーで趣味が合わない。そしてなぜこの人が認めるか否か、みたいな姿勢で感想を読まなきゃいけないのか、と疑問に思ってしまう。本谷さんはバカとかアホと見せかけて頭が良いみたいな人かと思っていたけど、一向に頭の良さは見えてこずに頭の悪さばかりが目立ってきて損な気分だ。読むほどに好きになる作家もいれば、その逆の作家もいるのだなぁ。
読了日:8月16日 著者:本谷有希子





縄文の思考 (ちくま新書)縄文の思考 (ちくま新書)感想
  主に論文調の文章で退屈さもあるが、たまに著者の体験が書かれたり他の研究者の一説を反論する時には強い意志が窺えて縄文愛とでも呼べそうなものを感じる。でも、愛でもありそれはエゴでもあるだろうから発言の信憑性を欠く瞬間でもある。現代にもある左右に関する風習や差別、富士信仰、登山の習慣などが縄文時代にもおそらく行われていたということが発掘物で分かるということを知り、驚いた。縄文草創期が約1万年前で晩期が3千年前だが、現代日本人との連続性が面白い。タイトルの通り、縄文人の思考、思想を知ることができる一冊。
読了日:8月5日 著者:小林達雄





植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ (幻冬舎新書)植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ (幻冬舎新書)感想
  大学時代に同様の「植物はすごい」系の本を読んで面白かったのだけれど、それと内容に差はない気がしてこれ系は一冊読めば十分かもしれない。本書は「婚活」などの植物の擬人化による比喩による説明が多く、それがちょっとくどい。ただ、確かに擬人化しているからこそ植物の「あっぱれ生き方」が強く伝わってくることもある。「植物」というまとめ方は大ざっぱすぎて、同じ植物の本ならばジャック・ブロスの書いたもののほうが毒も薬もあって刺激になる。
読了日:8月28日 著者:田中修





読書メーター





風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

さようなら、オレンジ (単行本)

さようなら、オレンジ (単行本)

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