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12月の読書

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  2013年が明けてしまいました。2012年分の読書まとめはこれで最後です。これからも更新していくつもりなのでよろしくお願いします。


  2012年分最後ということでせっかくなので、ページの終わりに2012年各月のエントリーを載せておきます。





2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:3304ページ
ナイス数:58ナイス





壁 (新潮文庫)壁 (新潮文庫)感想
  意味不明、理解困難な箇所も多いけど、それでも面白いし楽しめた。シュールな不条理さはカフカらしく、シュールなファンタジーは『不思議の国のアリス』&『鏡の国のアリス』らしく。一応三部構成になっているけど話はあまり繋がっていないような?とらぬ狸が出てくる第二部が一番好きだ。とらぬ狸が気に入った。どれも初期の作品ということで、若さ溢れる突っ走るような勢いとか荒々しさが感じられる。お気に入りの一冊になりそうだ。
読了日:12月3日 著者:安部 公房


安部公房の『壁』のパロディのような創作小説を書きました。
「月がふたつありましてぼくがみっつ目の月をみているとしたらあなたのみている月はどれでしょう」





第四間氷期 (新潮文庫)第四間氷期 (新潮文庫)感想
  物凄く説明的で冗長で平坦で説教的でもある安部公房SF小説。論理的すぎる。主人公、言いかえれば語り手が冷静すぎて起きていることが奇妙でもなにも面白みをかんじない。死体をいじって記憶から映像を映すという装置は映画『ミッション:8ミニッツ』に重なるところがあって凄いな、と思ったけど。話の筋道は分かりやすいのだけど、なにが面白いのかなにを言いたいとか伝えたいのかというところが分かりにくい。『密会』も『第四間氷期』も求めている安部公房ではなかった。
読了日:12月23日 著者:安部 公房





密会 (新潮文庫)密会 (新潮文庫)感想
  一兎を追う者、己を見失う。「『箱男』は覗き屋の小説であり、『密会』は盗聴者の小説である」(解説より)。元来、病気や怪我を治すところが病院であるのだけど、男が迷い込んだ病院は男以外が病気で怪我をしているような者たちばかりの場所だった。奇妙な病院。そう、奇妙ではある。でも、どこか退屈。語り手が落ち着きすぎているのか。波がない。あったとしても、てっぺんと底の幅がすごく狭い。ストーリーは追いやすいのだけど、その分、小説全体の奇妙さが『箱男』などと比べれば足りないように思える。読んでいて意外性があまりないような。
読了日:12月14日 著者:安部 公房





武曲武曲感想
  真剣小説。よかった。久々に読む終わるのがもったいないと思いながらページをめくった。ラップ命の高校生羽田融(とおる)が剣道にのめり込んでいく。融と30代の矢田部研吾の主観が節毎に交互に入れ替わる。融パートはおちゃらけた部分もあるが、それによって剣道の試合の場面や研吾パートの暗く切迫した真剣さが引き立つ。あと本番の息抜きという役割も果たしていそう。真剣での勝負こそないものの木刀での殺し合いはある。その真剣さの描写が巧くて格好良い。まったくやったことのない、だからこそか剣道に憧れる。ちなみに題名は「むこく」と読むようです。
  藤沢周さんに求めているのは純文学だ。でも、『武曲』は純文学とは言い難く、硬めの本格派エンターテイメント小説という具合。面白いからこれはこれでいいのだけど。でも、ジャンルとして中途半端な感じがしなくもなく、藤沢作品では一般向けだろうけど推薦しにくいように感じる。だから売り出すのも難しいような。こののめり込める面白さを人に薦めたいけど、そうしにくい。分厚いし。
読了日:12月28日 著者:藤沢 周





オレンジ・アンド・タール (光文社文庫)オレンジ・アンド・タール (光文社文庫)感想
  高校生たちと青年ホームレスの前半と後半に分かたれた話。前半は屋上から高校生が飛び降りて死ぬということからか、なんとなく松本大洋原作、豊田利晃監督の映画『青い春』を思い出した。後半の主人公の20代前半でホームレスをやっている伝説的スケーター?でもあるトモロウは、10代特有のカリスマ性のあるキャラクターで面白い。でも、20代になって錆びていく感じ。読書メーターでは藤沢周さんの本でなぜか本書が最も多くの人に読まれてる。『朝日新聞』で連載されていたからか?その割にずば抜けて面白いわけでもないのだけど。
  感想やレビューを読んでいると、お笑いコンビのオードリーの若林さんがこの本を推薦していた、というものをよく見かける。その影響は大きそうだ。ずば抜けて面白いとは思わなかったけど、所々のシーンは印象に残りそう。「キワキワな顔」とか、若者言葉と作者の創造を混ぜたような表現が特殊だったりして。残念なのはスケートの技の名前がよく出てくるけど、どんな技なのかいまいち読んでてわからなかったこと。ググったりして調べつつ読んだ方がいいかもしれない。
  あぁ、文庫の解説?を若林さんが書いているのか。実は単行本の方で読んだので、それはまだ読めていない。その解説のためだけにでも文庫買ってもいいな。10代に読んだほうがいいのかな、これは。でも、10代でも退屈そうなんだよなぁ。これを好きな人は何に惹きつけられるのか、気になるところ。
読了日:12月15日 著者:藤沢 周





キルリアンキルリアン感想
  そういえば読み終わったんだった、と読んだことを忘れるくらいストーリーが頭に入ってこなくて、そもそもストーリーはあったのか?幻想的な文体、鎌倉を舞台にした怪談っぽい雰囲気。寺とかの歴史的な建造物、土地の描写に味がある。幽霊とかの存在も含めて、その土地の歴史として大切に感じられるような。なんとなく、鎌倉には住んでみたい。
読了日:12月5日 著者:藤沢 周





第二列の男第二列の男感想
  短編集。他の短編などと記憶が混ざって正直あまり覚えていなく、図書館で読んだもので手元に本がないので語りにくい。短編「袋」に似た話があった。ぼくの心に刻まれ続ける言葉で、ヘミングウェイの短編のタイトルである「何を見ても何かを思いだす」が作中に引用されていて嬉しかった。でも登場人物が言及するように、何かを見ても何かを思い出さなければならない、その状態は些かつらいように思える。「三水と火偏にまつわる四つの物語」が特によかった。花火師と絵師?の話。藤沢周さんの作品としては珍しく、涙的な意味での感動に誘われた。
読了日:12月26日 著者:藤沢 周





ポー詩集 (新潮文庫)ポー詩集 (新潮文庫)感想
  難しい。でもつまらないわけではなく、言語世界の魅力は感じた。これほど薄い本ならどうせなら原文も載せてほしかった。隣に原文があると訳者からすればプレッシャーだろうけど。最も好きだった詩は「ユラリウム Ulalume」。「この詩は肉と霊との対話の形の物語詩」とのこと。「ウイア」や「オウバア」の造語の地名やギリシャ神話に登場する美少女サイキィなどから『指輪物語』のようなファンタジーな世界を想像する。冒険をしたくなる土地。
読了日:12月31日 著者:エドガー・アラン ポー





モルグ街の殺人事件 (新潮文庫)モルグ街の殺人事件 (新潮文庫)感想
  中断していたものを読み始め、三年がかりくらいでやっと読み切れた。いろいろなところで引用されている「盗まれた手紙」を読めたのはよかった。でも、論理学の話みたいなものがあったりと難しくてよくわからなかった。内容も古典だから難しいというのはあるけど、この新潮文庫の本は文字が小さくビッシリと黒くページが埋まっていて非常に疲れる。知識でなく体力が充分な10代の頃なら難なく読めたのかもしれないが、なんてそんなことを考えてしまった。ポーの詩集やあと「黒猫」を読んでみたい。
読了日:12月26日 著者:エドガー・アラン・ポー





流跡流跡感想
  『きことわ』を読んでから。これは、物語と呼べるのかストーリーはあったのか?そこらへんは疑問だけど、文章はいい。文体はいい。難解と言えば難解だけど、妄想に逃げているようで作りは安易かもしれない。文章はいい。ただ、それだけとも言えるけど。ただ、文章はいい。『きことわ』もそうで、和風な雰囲気の作り方がうまい。
読了日:12月12日 著者:朝吹 真理子





はぶらしはぶらし感想
  ミステリーかと思って読んでいたけど……。おもしろかった。ハッピーエンドと言えばハッピーエンドと言えるのだけど、でもすごく切ない思いになる。誰が悪いとも言えない胸苦しさ。親と子の関係とかを意識させられる。
読了日:12月12日 著者:近藤 史恵





情蜜のからだ (幻冬舎アウトロー文庫)情蜜のからだ (幻冬舎アウトロー文庫)感想
  『超訳 ニーチェの言葉』『聖書の言葉』『ブッダの言葉』の超訳シリーズの著者による官能小説集。超訳シリーズは読んだことないけど、作者とジャンルの意外な組み合わせが気になって読んでみた。こういう官能小説というのは初めてだったので新鮮で面白かった。性的行為のためだけに存在するキャラクターたちとか、それのためだけの物語というのはなかなか不思議だ。マンガなどではそれに慣れているけど、小説となると馴染みがないので。文字が大きくて読みやすいのもいい。
読了日:12月23日 著者:白取 春彦





小説の方法 (同時代ライブラリー)小説の方法 (同時代ライブラリー)感想
  小説家大江健三郎による、どういうふうに小説が書かれているか、という意味での「小説の方法」の本。小説はどう書くのか、というものではなくて批評本のようなもの。ロシア・フォルマニズムや構造主義の方法を下地にしてアレンジしたオリジナルに近い方法を取っているようで、初めの方は嫌味なほど言っていることが分かりづらい。『戦争と平和』や『ドン・キホーテ』を扱った中盤は楽しく読めたが。この一冊は、いろいろな文脈の中で意味が生まれる一冊であって、これ一冊だけ読んでも実りは少ないように思える。
読了日:12月17日 著者:大江 健三郎





深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)感想
  朝の満員な通勤電車で読み始めた。当人がインドでぐだっているところから始まる第一章。立ちながら電車に揺られながら衝撃を受けた。比較対象によっては小説以上に小説で文学以上に文学、それでいて最高の紀行文。第一章のおわり、せこい青年タクシードライバーが印象的。この「第一章 朝の光」だけでもこの本を読む価値があった。
読了日:12月12日 著者:沢木 耕太郎





深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)感想
  第一巻に引き続きおもしろい。娼婦たちとひもたちの関係やその宿、オーナーなど、ユーモラスに見える。香港を思い返して、いつでもそこでの楽しさを求めてしまうという切なさが滲んでいる。はやく旅の続きが知りたくて、第三巻を読みたい。
読了日:12月12日 著者:沢木 耕太郎





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壁 (新潮文庫)

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武曲(むこく)

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はぶらし

はぶらし

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)