sibafutukuri

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あけましておめでとうございます

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新年の挨拶と短い物語です。






「おはよう」
「あぁ、おはよう。久しぶりだね」
「だね。会うのは二週間ぶりくらい?」
「そのくらいだね。最近、調子はどう」
「うん、わるくないよ」
「そっか。そういえば、お父さんが帰ってきたんだって。『日記』に書いてあったけど」
「そうだねー、帰ってきたよ。やっと、というかんじ。二人の仲も良いみたい」
「よかったね。本当に」
「うん、よかった」
「隆志のお父さんが出ていってどのくらいだっけ」
「三年かな。そんくらいだね」
「三年かー、長いなー」
「お父さんはいてもいなくてもそんなに変わらないものだとおもってたよ。でも、いないと違うもんだね」
「そういうものかねー」
「お母さんは一人になっちゃうし…。でも、ぼくはいるけどさ。ぼくにとっては弘史がいてくれてよかったのかな」
「そう言われると照れるよ。でも、隆志のところに選ばれたのはその為みたなものだしね。ぼくとしてもよかったよ」
「そうだったね。すっかり忘れてたよ」
「ぼくにお母さんとかお父さんはいないけど」
「うん、ごめん」
「いや、大丈夫。知識として知っていても気持ちとしてわからない、というか喉にガラガラってなにか詰まってるみたいな感覚があってね、でも弘史とかお母さんと会ってから少しわかるものがあったよ。ぼくに両親はいないけど、家には的場博士がいるしラボには研究員のひとたちがたくさんいて寂しくはないんだ。でも、本当にそうなってみないとわからないことってあるね」
「ふーん、そうなんだ。ぼくにはよくわからないけど、弘史にとっても良いことがあったならよかった。この前ね、みんなで買い物に行ったよ。お父さんの運転で車に乗って。お母さんと妹の優も一緒に」
「そういうのいいね」
「うん、よかった。すごく久しぶりだったから。弘史にもお母さんとお父さんがいればいいのにね」
「うん、博士が作ってくれればいいんだけど」
「ダメなの?」
「今はまだダメみたいだよ。ぼくがまず成功しなきゃいけないみたいで」
「いつ成功するの?」
「成功するって決まったわけじゃないけどさ、すくなくともぼくが20歳を超えてからだろうね。ちゃんと使えるモノかってのを見極めなきゃいけないんだって。あと、ぼく一体ですんごいお金がかかってるから予算も足りないみたいなことも聞いたよ」
「へー、よくわからないけどまだまだ長いんだね。弘史のお母さんとお父さんに会えるの楽しみだな。お金かかるならぼくのお小遣い使ってよ」
「お小遣いじゃなー、たぶんちょっと足りないかな」
「えー、そうなの。弘史の体すごいんだね。じゃ、がんばってお金貯めなきゃ」
「そうなると、ぼくもがんばんなくっちゃな」




「ねえ、これ訊いたことなかったんだけど訊いてみていい?」
「ん、なに?気になるな」
「んとね、なんで弘史はロボットなのに考えたり感じたりできるの?寂しいとか嬉しいとか感じるでしょ?なんで」
「なるほど。それね。そんなに難しいことじゃないよ。人間が寂しいと感じるときに寂しいと感じるようにプログラムされていて、嬉しいと感じるときにもそう感じるようにプログラムされてるからだよ。本を読んで覚えるみたいなものだね。ぼくの場合は自分で読むんじゃなくて、博士たちに読ませてもらったんだけどね」
「ふーん、よくわかんない。でも、弘史もぼくたちと一緒なんだ。服の下のその鉄の腕は、このブランコみたいに冷たいけどぼくたちと一緒だね」
「そうだね、ぼくはブランコだね。人間と一緒かー、そうなのかな。そうなれればいいんだけど、もっと近く、人間になれれば成功なのかもしれない。まだぼくは、読ませてもらった本の通りにしか考えたり動いたりできてないって、前に博士が言ってたんだよ」
「弘史は本が好きなんだね。物知りだよね。本の通りでもぼくの友達だよ。ぼくだけじゃダメなら、もっと友達増やそうね」
「ありがとう。そうだね、もっと友達増やさなきゃ。そのために隆志たちと一緒に学校行ってるんだとおもうよ。ぼくはみんなより大きくて、見た目も金属で不格好で不釣り合いだけどね」
「そうかなー。ガンダムみたいでカッコいいのになー」
ガンダムみたいか、そいつは嬉しいけど全然人間っぽくはないねえ」
「そっか、ガンダムじゃダメかー」
「博士が言ってたんだけど今は本当に自分で考えたりしなくても、そのうちにぼくの身体にゴーストが生まれるんだって」
「ゴースト?」
「うん、ゴースト。ぼくもよくわかってないんだけどね、機械の身体でもなにかの変化で人間みたいに考えたりできるようになるんだって。そのよくわからないものをゴーストって博士たちが呼んでるんだ」
「ゴーストすごい。弘史ゴースト楽しみだね」
「うん。楽しみにしてて。でも、ゴーストは良いことばかりじゃないんだって。ゴーストが生まれれば人間みたいになれるんだけど、人間も良い人ばかりじゃないでしょ?」
「うん、すんごく良い人もいればすんごく悪い人もいる」
「でしょ、だからぼくが良い人になれるか悪い人になっちゃうかまだわからないんだって。博士たちはすごく頭が良い人たちなのに、それでもわからないみたい」
「弘史良い人にならなきゃダメだよ?だから友達いっぱいにするんだからね」
「うん。新学期楽しみだな。あ、そうだ言い忘れてたことがあった」
「え?」
「新年明けましておめでとう。今年もよろしく」
「そうだ、あけましておめでとう。ことしもよろしくね。2112年になって会うの初めてだった」
「そうそう。メールでは挨拶したけど。だからかな、最初に言うの忘れてたよ。そろそろ日が暮れるし寒いから帰ろうか。今度お父さんに会いに行くよ」
「そうだ、弘史はウチのお父さんにはまだ会ったことなかったね。早く会ってほしいよ」
「うん」
「じゃ、またね」
「うん、明後日の始業式にまた」





本年もよろしくお願いいたします。






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