ニコラス・ウィンディング・レフン監督、エル・ファニング主演の『ネオン・デーモン』を見てきた。エログロど変態シンデレラストーリーで、そういう覚悟はしていたけどそれでもちょっと引いてしまった。でも、トンガリ切った映像と音のなどによる演出はやっぱ魅力があって映画館で見られてよかった。
スタッフ・キャスト
・スタッフ
監督・原案・脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン
音楽:クリフ・マルティネス
衣装:エリン・ベナッチ
レフンは『プッシャー』、『ドライブ』、『オンリー・ゴッド』などの監督とかをやっているひと。クリフ・マルティネスは最近のレフン映画でよく音楽を担当している。レトロでチープなうわもののシンセ音と重厚なベース音が特徴的。
Only God Forgives Soundtrack - Wanna Fight by Cliff Martinez
・キャスト
ジェナ・マローン:ルビー
カール・グルスマン:ディーン
クリスティーナ・ヘンドリックス:ロバータ・ホフマン
アビー・リー:サラ
ベラ・ヒースコート:ジジ
キアヌ・リーブス:ハンク
感想(ネタばれなし)
「ストーリーどうでもいい」って思ってしまうくらいに演出面でレフンの作家性がスクリーンから劇場へと飛び散らかされるものだから、それを求めていた自分としては大満足。まぁ、実際ストーリーはしょうもないと言ってもいい感じで、しかも意味不明な伏線なのか謎なシーンがあったり。
一見意味不明なシーンも隠喩になっているのかもしれないし別になっていないのかもしれない。ショーのシーンは特に意味深だけど意味は読み取れず映像としては印象的。実はキアヌ・リーブスが出てくるけど彼が出てくる必要性が感じられないほどのキャラ。ゴツくてカッコいいけど。
最初に「エログロど変態なシンデレラストーリー」と書いたけど、「シンデレラストーリー」というのは御幣があるかもしれない。でも、「業界内での女の嫉妬」みたいなモチーフで近い映画として『ブラック・スワン』が思い浮かぶ人は多そうなので、遠くはないとおもう。『ブラック・スワン』はなぜか当時話題になっていたけど、後から見た自分としてはなにがいいのかサッパリだったな。
映画を見る直前に、国立新美術館で開催している現代アート寄りな展示の「DOMANI・明日展」を見た影響もあって『ネオン・デモーン』もまた、商業映画というより現代アートの文脈の上での映像作品という見方をしてしまう。アンダーグラウンドで怪しげなショーのシーンは音楽のシンクロ性も具合も合わせて凄くよかった。
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色合いも音楽も典型的にレフンっぽくて好きな映像。
エル・ファニングはあんま可愛いと思えない。劇中でケバケバな化粧をした時は別人みたいに可愛く見えるけど。劇中でモデルや関係者たちに「かわいい」とか「(モデルとして)光っているものがある」と言われたり、本人も「綺麗」、「美人」とか言っていたりするけど、どこがじゃって思ってしまう。
とは言っても商業映画なのでエル・ファニングが主演をやっているけど、そのおかげで映像作りにお金を沢山使えるんだろう。だから現代アートの映像作品と比べた時に予算の規模が大違いになるはずで、大がかりな映像作品を劇場で見られるっていうのはなかなか貴重なことだとおもう。
(スタイルはよさそうだけど)大して可愛くないし観客としては光るものも見えてこないエル・ファニングがモデルとしてチヤホヤされて持て囃されている時点で、『ネオン・デーモン』はもう茶番と言ってもいいくらいストーリー面では陳腐ではある。まぁ別にそこは期待していないから問題ないんだけど。
ルビー役のジェナ・マローンの顔とか雰囲気がすごくよかったな。特に中盤まで。レズっ気があって怪しげなのもまたよい。周りがモデル体型なのもあるだろうけど、脱いだらイレズミだらけだしあまりよいスタイルには見えなかったけど。乳首が黒めだし……。
ちょっとネタばれ
終盤はなんかすごかったね。劇場全体の観客が身を引いてしまっている感じをかってに感じていた。
レズありレイプあり死姦ありカニバリズムありって……。どんだけ広い層の変態の心をつかもうとしているんだ、この映画は!
まー、ふらっと見に来たようなお客さんを突き放したような作風もまたいいところではあるけど。なんとなく暗黒舞踏的な尖ったアート性も感じてしまう。
おわりに
『沈黙』とか『マリアンヌ』とか、あと年末は『スターウォーズ』の新作もか、いろいろと楽しみな映画が多い2017年だけど、『ネオン・デーモン』は1月からいきなり今年ベストなくらいにお気に入りな映画だった。
まあ、他人には気軽にすすめられないけどね。
第19回目らしいドマーニ展。若手の人たちばかりで誰も知らなかったけどなかなかよかった。絵とか写真、映像とか。2月5日(日)まで。