sibafutukuri

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戦争風の気持ち

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この膠着状態にはうざんりだ
早々に、敵領土へと侵攻すべし
いまならば我が方の勝率は高く
機会はいますでに来ている
敵の補給は尽きつつある
決着は間近にあり、
我々の手中に勝利が収まろうとしている
そうおまえはわたしにけし掛ける
焦燥のおまえは進軍の神話に取り憑かれている
戦争における勝利の神話に浸かりきっている
たしかに、戦争をする以上は
勝利を目指し、それに励むべきだろう
それは、国民と国土の
上に立つ者としての義務である
それはおまえの言うとおりだ
だが、これは本来戦争であったのか
わたしは戦争を始めたつもりはなく
それは言い逃れかもしれないが
少なくとも、計略をめぐらせ槍で刺し合う
それをしようと始めたのではない
国交関係はいま悪化しているのか、そうではない
そうではなくて、おまえがわたしを焦らせる
相手に不足はなく、素晴らしい友ではないか
おまえが執拗にそう拘るのならば
わたしは侵攻が恐いと白状しよう
それなのに、おまえの言うとおりの面もあり
もう引き下がれず、進軍するしかない
という状況に近くもあるのだ
だがもし、敵地へ我々が到達したとして
前面からではなく後方や横から攻撃が
来ないとも限らないではないか
それがあり得ないと、誰も保証できないだろう
ある程度の予測はでき
それにも関わらず危険を顧みず
進撃せざるを得ない時もあるだろうが
なるべくそれは避けるべきであろう
それよりももっと恐ろしいのが
例えば突撃した建物のなかに敵がいるはずが
まったくネズミの一匹もいなくて
もぬけの殻だったら、ということだ
その時攻撃は受けないかもしれない
我が方の損害もほぼなくて済むかもしれない
だが、それまでに掛けた時間や訓練などの苦労は
回収のしようがないのだ
勝利もなければ敗北もない
奪うものもなければ奪われるものもない
とおもうかもしれないが
自尊心だけは別なのではないだろうか
圧し折れた自分の顔を想像するのが恐いのだ




コーヒーにたとえよう
わたしがカップを用意し
それにインスタントの粉や砂糖を入れたりする
その間に、相手側は湯を沸かし
ミルクを冷蔵庫から取り出したりする
いれられたばかりのコーヒーを
互いに静かにすすり、ゆたりとしたいのだ
その気持ちをおまえは、戦闘をけしかけ
戦争へ進展させようとしている
敵国民の耕し作った穀物などの物資を奪い
彼らの国家の宗教をひん曲げて
彼らの言語を押しつぶして
彼らの作ったビールを飲み
捕虜を銃殺し、酔いつぶれ夜を明かす
そうして彼らの中心へ
したり顔でのしのしと闊歩していく
おまえはそれをしたいのか
おまえが望むのは、権力と兵器の威力
それらに恐怖し震えた心の支配である
おびえた彼らの人格を蹂躙し喜ぶ
そういったねじれた行いなのではないか
よし、おまえがそうまで戦争をしたい
そう決めて折れないのならば
それを止めないという手もある
だが、目標は勝利ではない
和平を我々は望むべきだ
意識されたストラテジーはみすぼらしい
しかもそれが支配のためなら尚更だ
だが、われわれは和平に向けて
ストラテジーを練っていくべきではないか
やはりそれは意識されないほうがいい
努力はすべきだ
しかし、もっとわたしは直情的に
勝利に向けてではなく和平に向けて
まっすぐにアプローチしたいのだ
でもそれは、難しいことだと
おまえを見ていておもうのだ
もうそんな戦争風の気持ちを持ってはいけない
コーヒーをゆくりと飲みあえるように
ではどうすべきなのか
おまえは直接は教えてくれなかったが
しかし、和平を思い出させてくれた
戦争のためのストラテジーは使わず
我々は
和平のためにできることをすべきだ
コーヒーとともに過ごすために







宮沢賢治、「宗教風の恋」
http://www.ihatov.cc/haru_1/059_d.htm

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