【解説】「裂け目」の向こう側には何が?オーディンが心酔する裂け目について - ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク (GoW:Ragnarok)【ネタバレ 考察】
オーディンが探し求めている「答え」。
それはアトレウスに託された仮面によって「裂け目」で得られるものとオーディンが考えているものだ。
オーディンは裂け目の中を求める理由を「神々が存在する理由と運命を変える術を学び、ラグナロクを止めれば皆を救えるかもしれない」とも言っているが、それはアトレウス(ロキ)を協力させるための建前=ウソでしかない。
オーディンが本当に求めているのは、裂け目の先にあると言われている「知識、真実」(こう表現したのはアトレウス)あるいは「無限の知識の源」(偽テュール時の発言)だ。
以下では、裂け目(ギンヌンガガプ)について、オーディンの真の目的、始祖の巨人ユミルなどについて、神話とゲーム内の情報をもとに紐解いていく。
目次
- 【解説】「裂け目」の向こう側には何が?オーディンが心酔する裂け目について - ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク (GoW:Ragnarok)【ネタバレ 考察】
- 目次
- 【元ネタ】神話における"裂け目"
- 神話でも『GoWR』でもユミルを殺したオーディン
- 前作の予言にも仮面のようなものが
- 好奇心旺盛なオーディン
- 選択を迫られたアトレウス
- 裂け目の向こう側には何が?
- 裂け目という最後の希望にすがるオーディン
- 「ゴッド・オブ・ウォー」の記事
スポンサーリンク
【元ネタ】神話における"裂け目"
ギンヌンガガプ(Ginnungagap、ギンヌンガ・ガップとも)とは、北欧神話に登場する世界の創造の前に存在していた巨大で空虚な裂け目のことである。
日本語訳ではギンヌンガの淵(ふち)、ギンヌンガの裂け目という表記もみられる。
ギンヌンガガプの北からは激しい寒気が、南からはムスペルヘイムの耐え難い熱気が吹きつけている。
世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガガプで衝突した。
熱気が霜に当たると、霜から垂れた滴が毒気となり、その毒気はユミルという巨人に変じた。
このユミルは全ての霜の巨人たちの父となり、またのちに殺され彼の肉体によって世界が形作られることとなる。
滴からは牝牛のアウズンブラも生まれ、ユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びた。
アウズンブラは氷をなめ、そのなめた部分からブーリが生まれた。
北欧神話の主神であるオーディンはブーリの孫にあたる。
のちにオーディンらによってユミルが殺されたときに、ギンヌンガガプはユミルの血で満たされたという。
オーディンたちに殺された始祖の巨人ユミル
ユミルは北欧神話『スノッリのエッダ』に出てくる原初の巨人。
ユミルはギンヌンガガプの、ムスペルヘイムの熱とニヴルヘイムの寒気がまじわったところで生まれ、原初の牛アウズンブラの乳を飲んでいた。
ユミルの身体の各所から何人もの巨人が産み出された。その中には頭が複数ある奇怪な姿の巨人もいたとされている。
あるとき、最初に生まれた神ブーリの息子ボル(ブル)が、ユミルの一族である霜の巨人ボルソルンの娘ベストラと結婚し、オーディン、ヴィリ、ヴェーの三神が生まれた。
神々と常に対立していたが、巨人の王となっていたユミルはこの三神(オーディンら)に倒された。
この時、ユミルから流れ出た血により、ベルゲルミルとその妻以外の巨人は死んでしまった。
(ユミル - Wikipedia を要約)
神話でも『GoWR』でもユミルを殺したオーディン
神話ではユミルの子供から生まれたオーディンだが、巨人の王であるユミルを殺したことになっている。
ゲーム内では、アトレウスに始祖の巨人であるユミルを殺したことを見抜かれて白状している。
種族のために、偉大な何かを創造できると思い残酷であっても殺すことを選択した、というような自己弁護をしながらも、探求心が抑えきれなくなりながら語っている。
神話によると、裂け目(ギンヌンガガプ)とユミルは深い関係にあるようだ。
ゲーム内でもそうなのだろう。
裂け目から発生した霜によって生まれたユミル。
そのユミルを殺し、裂け目の向こう側を覗こうとするオーディン。
オーディンの支配欲もすごいものではあるが、支配の原動力や動機は、なにより少年のような好奇心や探求心などによるもので、力を持つ神が成すことだから邪悪さが強大なものになるのだろう。
スポンサーリンク
前作の予言にも仮面のようなものが
上の画像は前作のもので、どういうシーンだったかは不明。
男が光る仮面のようなものを掲げている。
光る仮面と言えば今作の裂け目に使う仮面であり、この男はオーディンなのだろうか?
この仮面が今作と同じものであるならば、前作には仮面やオーディンは一切登場しないものの、ストーリーはある程度決まっていたと考えられる。
好奇心旺盛なオーディン
オーディンはラグナロクに実はあまり関心がない。
ラグナロクを止めたいという気持ちはあるだろうが、それは自分が死なないためで、なにより裂け目の向こう側を知りたいから。
大いなる目的は好奇心によるもので、その他のすべては小目的でしかない。
本来、神であればみんなが幸せな世界をつくるとか、終末戦争を防ぐというようなことが大目的であるべきだが、オーディンの場合は目的の大小が逆転している。
選択を迫られたアトレウス
仮面を完成させて裂け目の前に立った時、アトレウスは選択を迫られた。
仮面を使い裂け目を覗くか、仮面を破壊してすべてを終わらせるか。
上に記したように、オーディンは民にとっても他の神々にとっても良い神ではない。
そのオーディンが裂け目の向こうを知ることは大きなリスクになり得る。
アトレウスだけが向こう側を知ることもできたのかもしれないが、そこでアトレウスは好奇心より父親やほかの神々、どこかで生き延びている巨人たちの安全を優先したように思える。
だから裂け目の前で仮面を割った。
プレイヤーとしては裂け目の向こうが気になるのでものすごく惜しいことをしたという、オーディン側の気持ちになってしまうシーンでもあるけれど。
だが、アトレウスは「良い神」としての選択をしたのだろう。
この選択に至るまでに、偽テュールに騙されたり、ヘルの番犬であるガルムを逃がしてしまったり、ブロックが死ぬ原因を作ってしまったりと、未熟故の失敗を重ねてきた。
仮面を割ることが本当に正解だったかはわからないが、アトレウスは成長し神としてすべきことをしたのだろう。
スポンサーリンク
裂け目の向こう側には何が?
裂け目の向こう側が気になる。
そう思うプレイヤーは多いだろう。
でも、ゲーム内のどこを探しても神話をいくら読んでもその答えは見つからないだろう。
自分もわからない。
オーディンは「無限の知識の源」のようなことを夢見ていたようだ。
そうであるなら、確かに夢がある。
でも、そういう不確実なものを頼りにいろいろなものを犠牲にする言動は異常だ。
誰かが囁きかけてきた、現実(真実?)が生まれし場所、という表現を見ていると、メタフィクション的な妄想が膨らんでいく。
ゲームの制作者(あるいはプレイヤーか)がキャラクターに話しかけるような、裂け目の向こう側には我々が住む地球の世界=現実が広がっているなど。
もし、「ゴッド・オブ・ウォー」のゲーム内でそんな描写をしたら顰蹙を買うだろうが。
当ブログ的には、「知識の源」というとWikipediaであり、裂け目の向こう側はWikipediaあるいはネットが広がっているのかな、なんて思ったり。
「世界の創造の前に存在していた巨大で空虚な裂け目」を現実世界で置き換えると宇宙の始まりとかになりそうだ。
宇宙の始まりや宇宙の外が気になる人も多いだろう。
でも、宇宙の外に何か希望を見出す人は多くないと思う。
希望を見つけるとしても、もっと身近にあるはず。
目の前に次元の裂け目的なものがあっても、好奇心によって覗きたくなるとしても、自分が救われるような希望は抱かないだろう。
(裂け目に希望を抱くのは、異世界転生すれば俺は無双できるんだ!と本気で信じるようなものだ)
というように考えていると、九界に迫っているラグナロクも裂け目によって止められるというのは妄言であるし、神が喜ぶようなことも起きようがない。
謎は謎のままで良いこともある。
裂け目という最後の希望にすがるオーディン
だんだんとオーディンは追い詰められていく。
バルドルたちをクレイトスに殺され、本当の予言は得られず、本当の予言では自分は死ぬことになっていて、ヴァルハラにも行けず、自分が何者かもわからず……。
こうして挫折を重ねていくうちに最後の希望が裂け目になってしまったのだろう。
希望を持つことは大事かもしれないが、その希望にすがりすぎるのは大きなリスクを伴いそうだ。
希望が壊れれば絶望し、希望の先になにもなくても絶望する。
絶望すれば自分が壊れていく。
もっとも、裂け目に心血を注いでいる時点でオーディンの心はすでに壊れている。
受け入れることが成長というのならば、アトレウスが言うようにオーディンはもっと現実を受け入れて成長すべきだったのだろう。
「ゴッド・オブ・ウォー」の記事