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2014年11月の読書

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2014年11月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2777ページ
ナイス数:92ナイス


■フィクション


前夜(上) (講談社文庫)前夜(上) (講談社文庫)感想
  放浪者ジャック・リーチャーがまだ現役の軍警察だった頃の話。ベルリンの壁が崩壊した1989年大晦日から物語は始まり、年が明けた90年の直後、リーチャーのもとにかかってきた電話から事件は始まる。リーチャーは1960年生まれとのことなのでちょうど30歳の頃で、その若さは新鮮でありながら思考の冷静沈着さと行動の無茶苦茶ぶりというのは、歳をとってからも変わらないので違和感があるのだが。リーチャーの場合、「若い頃はやんちゃだったんだな」ではなく「若い頃も」なのだから。原著八作目、邦訳四作目。
読了日:11月30日 著者:リー・チャイルド





前夜(下) (講談社文庫)前夜(下) (講談社文庫)感想
  冷戦終結による軍縮への焦りが、一連の仕込まれた事件の背景になっているように思えるが実は……、という感じだったか。読んでから時間を置いたので忘れたが、面白かったのは確か。自分にとって冷戦時代が未知のものなので、そこをもっと知っていればより楽しめたかもしれない。パリに住む危篤の母を兄と見舞いに行くことになるリーチャー。このエピソードはアメリカで起こっている事件とは関わりがないが、リーチャーというキャラクターを掘り下げていてよかった。読んだ中では満足度が低いが、それでも高水準。未邦訳作への期待が高まる。
読了日:11月30日 著者:リー・チャイルド





アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)アブサロム、アブサロム!(上) (講談社文芸文庫)感想
  サトペン家そしてジェファソン町の大河小説。この鬱屈としてどこまでも冗長で古びた井戸の底みたいな長編は大好きなのだが、やはり読んでいてちっとも面白くはない。でも、癖になる。トマス・サトペンの独裁者然とした人物像はクズとしか呼べないように思えるが、そのクズさは個人の責任や問題や許容量を越えて南北戦争という時代の潮流、社会、あるいは世界そのものの法則の擬人化のようにも思える。読んでも読みとれないことが大体だが。しかしこの分からないという不安は探究心を駆り立てるのだから、私は読まなければならない。再読。
読了日:11月30日 著者:ウィリアム・フォークナー





探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて感想
  溝の口周辺でなんでも屋をやっているへたれ三十男と自称探偵の十歳美少女のコンビ。好奇心だけで殺人事件に頭を突っ込んでいく探偵少女やそれぞれの事件の殺人の動機の軽さなど、どうしてもこのライトミステリーらしい殺人の軽い扱いには納得できないが、まぁゲームみたいな感覚なんだろう。しかし推理素人の自分がいくらトリックを見破ろうとしても結局惨敗で、リアリティがないにしても予想外の展開はやはりいい。読み終えてみると、この三十男と少女という探偵コンビが名残惜しくなっている自分がいる。この一冊で終わるのはもったいない、と。
読了日:11月28日 著者:東川篤哉





イッツ・オンリー・トークイッツ・オンリー・トーク感想
  ぜんぜんのめり込めない本だった。かわいそうな私どうよ?っていう選択肢のない質問を常に押し付けられているようで、そういう面倒な女とはまじめに会話をしたいとは思わないのだから。話題の作家で気にはなるが、もう一文字も読みたくないなぁ。
読了日:11月10日 著者:絲山秋子





雨月物語・春雨物語―若い人への古典案内 (1980年) (現代教養文庫〈1025〉)雨月物語・春雨物語―若い人への古典案内 (1980年) (現代教養文庫〈1025〉)感想
  現代語訳だが出版されたのが古く昔の地名がよく出てきて、秋成が国学研究者だったこともあり和歌の引用などが多くて教養を試される。難しく読みづらく、退屈まじりでなんとか読んだが、それでもこの二つの物語は面白い。『雨月物語』も『春雨物語』も中国古典小説や日本の古典を典拠としている不思議な話である、という点では近いのだが実は書かれた時期は30年近く離れているとのこと。「蛇性の淫」と「二世の縁」が今のところお気に入り。原著も読んでみたい。泉鏡花柳田國男を読んだ流れの上の読書。
読了日:11月9日 著者:上田秋成





文學界2014年12月号 (文学界)文學界2014年12月号 (文学界)感想
  面白かった:円城塔「プロローグ」、永井均哲学探究」、小林信彦「つなわたり」。新人賞受賞作には不満だらけだったが、初めて読んだ小林信彦さんが良かったりして結果的には満足な12月号。小林さんの「つなわたり」は読んでいる間は凄く楽しかったのだが、読み終えてふと思い返すと何が面白いのかよくわからなくて困った。80年代頃の映画業界人でEDに悩む主人公とその周辺のお話。古いけど未知な時代、未知な世界であり新鮮だったり、自分も業界人っぽい気分に浸れたりしたからかなのかな。他の作品も読んでみたい。
読了日:11月22日 著者:





文學界2014年11月号 (文学界)文學界2014年11月号 (文学界)感想
  読んだ:藤沢周「山王下」、筒井康隆ウクライナ幻想」、片岡義男「五月最後の金曜日」、永井均哲学探究」、穂村弘「も詩も詩」他。円城塔さんの「プロローグ」がお休みで残念。満足できない号だった。代わりに12月号に向けた消化作業が楽で済んだが。柴崎某は気に食わない。片岡さんの短編の会話が変に淡白でその独特さ故に記憶に残る。次の12月号は文學界新人賞受賞作が載るので楽しみ。
読了日:11月1日 著者:





■ノンフィクション


シャーマニズムの世界シャーマニズムの世界感想
  十三人の研究者による様々なシャーマニズムの世界についての論文集。南アジア、台湾、韓国、日本古代のシャーマニズムアパッチ族シャーマニズムアイヌシャーマニズムなど。読みにくいのだが、これだけ多様なシャーマニズムがまとめられた本というのは貴重に思える。ただ、土地という点で幅広いがやはりアジア周辺に偏っていることは否めない。シベリアや南アフリカなどのシャーマニズムもあればより世界的な一冊になったかもしれない。ただ、エリアーデが大著『シャーマニズム』でやり残したアジア部分をこの本が担った面はあるだろう。
読了日:11月11日 著者:桜井徳太郎





他力 (幻冬舎文庫)他力 (幻冬舎文庫)感想
  おもしろいが、言っていることは信用できない。主張に続く例証がめちゃくちゃで突飛なのだが、なぜか納得できることもあるので口が上手い人なのだと思う。だから五木寛之という人はカリスマであり詐欺師でもあり、大衆にとって薬にも毒にもなるように思える。大衆からすれば麻原彰晃池田大作と同じ枠内に見え、それはバットマンとジョーカーが同じ「超人」であり、違いは正義か悪かだけ。しかもその善悪は紙一重なのだから、原発や核爆弾と同じく社会に存在するリスクもある。五木さんは宗教寄りの人なので親近性には自覚的でもあるのだろう。
読了日:11月11日 著者:五木寛之





読書メーター


アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

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