sibafutukuri

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2013年3月の読書

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2013年3月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2035ページ
ナイス数:48ナイス





飢餓同盟 (新潮文庫)飢餓同盟 (新潮文庫)感想
コミカルでシュールでいて、シリアス。喜劇的に起きる悲劇。惨たらしく終わる群像喜劇。そういう奇妙な同居。森が来て、湯が上がると森は去る。最後の八行ほどの、ある精神科医の述懐が醒めきっていて格好良い。特に「正気も、狂喜も、いずれ魂の属性にしかすぎないのである」という最後の一文。読み終えてみて、目的のわからない物語という印象だけれど、なんとなくこの人間たち、特にひもじいたち=飢餓同盟員、のどうしようもなさからくる物悲しさがじわじわと心に届いてくるようだ。
  この「飢餓同盟」は、解説で佐々木基一さんが書いているように「高邁な理想をかかげて行われる運動が、現実の中で屈折し、変質していく経過」を書いた物語なのだろう。
読了日:3月20日 著者:安部 公房





愛人 (集英社文庫)愛人 (集英社文庫)感想
「愛人」というタイトルを裏切らない、浮気とか愛人とかそういう話。愛人を作って妻に別居された男は自業自得なのだけど、風呂場の桶に入ったままぬめぬめとした玩具を見て息子のことを思い出したりする姿や、息子にあげた野球のグローブを雨が降る中妻に渡してポリバケツにぶち込まれる姿など、同情してしまう隙がある。自業自得なのだけど…。終盤の息子との電話の回想は心に迫るものがあった。「何かが起きるということが浅薄だ」みたいな藤沢さんらしい一文から始まった記憶があるけどしっかりと離婚という物語にしやすい題材が使われている。
読了日:3月20日 著者:藤沢 周





血の轍血の轍感想
ふだん読まない警察小説。展開や結末が気になる面白さ。登場人物が多く、名前に特徴があまりないので誰が誰かわからなくなる大変さはあったけど。パソコンオタクでハッカーっぽい坂上のキャラが良くも悪くも浮いてて、自分は好きだった。ただ、こういう事件ものでハッカーが活躍するっていうのはありがちな感じだけど。登場人物ほぼすべて警察関係者で、その中に悪者と正義の味方が曖昧な境界で存在する。この物語内ではそこまで強調されていないけど、読みながら「正義とは何か?」と考えてしまう。同じ作者の『震える牛』も読んでみたい。
読了日:3月24日 著者:相場 英雄





レンタルマギカ―魔法使いのクラスメイト (角川スニーカー文庫)レンタルマギカ―魔法使いのクラスメイト (角川スニーカー文庫)感想
短編四話収録。サブタイトル通り学園モノの話が多く、三話が学園モノで書き下ろしの一話はヴェネチアが舞台のフィンと隻蓮の闘いの話。この一冊はサブストーリーの集合みたいなもので本筋との関係は浅いけど、キャラクターを掘り下げていく役割があって、面白いので読まないのはもったいない。ヴェネチアの話が特によかった。フィンも隻蓮も良いキャラしてる。フィンは極悪非道なのに憎めなくて魅力的なところや風貌も、『サイコパス』の槙島聖護に近くおもえる。
読了日:3月12日 著者:三田 誠





深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)感想
二巻から列車は停まっていて、三か月ぶりくらいに動き出した。ここからは一気にあと三冊読みたい気分。久々に続きを読んで、やはり沢木さんの書く文章から旅の雰囲気がひしひしと伝わってきてもっと読みたいと思った。一冊ずつ書く言葉はそんなにないけど。この三巻はインドとネパールの話で、身分制度カーストについて本当に少しだけど言及がある。日本人からすればカーストによって動くインド人は異様に思えるのだろう。どんなに良い奴に見えても、自分より下の者は軽蔑して上の者には媚を売る、というような光景。
読了日:3月20日 著者:沢木 耕太郎





深夜特急〈4〉シルクロード (新潮文庫)深夜特急〈4〉シルクロード (新潮文庫)感想
「第十一章 柘榴と葡萄」の序盤が記憶に残ってる。というか、そこしか思い出せない。気づいたら五巻目を読んでいた。その部分は、カブールの安宿のカマルという若いマネージャーが登場して、この「癖があるが簡潔でわかりやすい英語」を話すカマルと作者の関係が面白かった。宿代を四分の一にしてやる代わりにバスの発着場で客引をやれと言う。命令口調で作者に客引をやれと言うが、自分も客引をやる。カマルは21歳でマネージャーをやっているがもっと昔から働いているとか、英語は話せるが全く文字は読めない、など。文化の差が印象深い。
読了日:3月31日 著者:沢木 耕太郎





シャーマニズム 下 (ちくま学芸文庫)シャーマニズム 下 (ちくま学芸文庫)感想
シャーマニズムとは、Wikipediaによると「シャーマン(巫師・祈祷師)の能力により成立している宗教や宗教現象の総称」とある。そのシャーマニズムに関する事例がいろいろな著書から引用される形で膨大な量が収められている。この量は凄いけど、これでも地域的に不足している部分があるんだろう。解説にも書かれているように言語的な問題もあり、日本のシャーマンについては少ないのだろうし。シャーマンと言っても、巫師、巫女、祈祷師、呪医と表せるように様々なタイプがあって面白い。この本を読むのは大変だけど。
読了日:3月20日 著者:M=エリアーデ




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飢餓同盟 (新潮文庫)

飢餓同盟 (新潮文庫)

血の轍

血の轍