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9月の読書

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2012年9月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3123ページ
ナイス数:60ナイス




箱崎ジャンクション (文春文庫)箱崎ジャンクション (文春文庫)感想
ちょっと病んでるタクシードライバーたちの話。読んでいると排気ガスやタクシー車内の匂いがしてくる。盛り上がりのピークはたぶん半分より後ろの方で、それまでじりじりと山を登って行き、後半は下りになっていた。後半は少し物足りなさを感じたが、全体的に病んでいてハードボイルドで男で暗い雰囲気がよかった。 「死亡遊戯」の歌舞伎町のキャッチなどでもそうだけど、特定の業界の用語や隠語を上手く使ってリアリティを出していて、読んでいておもしろい。図書館に一カ月ほど通い、ちびちびと読み進めていた。その時間が毎日楽しみだった。
  夢とかファンタジーの領域にたまに踏みこんで、全身がそのまま異界に持っていかれそうになるのだけど、でも片足だけは絶対にいつも現実の地面ついていて、やっぱり根底は現実にあるという物語。日常に混ざるちょっとの違和感のバランスが絶妙。
読了日:9月26日 著者:藤沢 周





死亡遊戯 (河出文庫文芸コレクション)死亡遊戯 (河出文庫文芸コレクション)感想
新宿歌舞伎町の風俗街の話(「死亡遊戯」)とか、不倫と脅しの話(「DS(ドミネーション・サブミッション)」)とか題材は俗っぽいものが多くて性描写も多いけど、ただ俗なだけでなくハードボイルドっぽく格好良かったり渋かったりする。後の作品もそうだけど、奇妙なサスペンスの要素がこの頃からある。「奇妙な」というのが藤沢周さんの味かもしれない。自己紛失的な幻覚や幻想など。ギリギリのところで現実的ではあるのだけど。「死亡遊戯」という題名は「ゾーンを左に曲がれ」からの改題らしい。
読了日:9月30日 著者:藤沢 周





生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)感想
表題作はその表題の割に恋愛小説ではなくて普通の(人間)小説という具合の作品。前半は特に良かった。くだけた文章だけどセンスが良くて、笑えるしうつ病っぽいんだけど狂い方の描写が面白いしで楽しかった。でも、中盤からどんどんと下り坂でもったいなかった。とは言え、前半部分のためだけでも一応読む価値のある本だとはおもう。 うつ病に関しては軽く扱っているみたいで少し戸惑いがあった。根性で治せるみたいに言うキャラもいて、それを否定はしないしで。本谷有希子さんは初めて読んで気に入った部分もあったので、他のも読みたい。
読了日:9月4日 著者:本谷 有希子





グ、ア、ム (新潮文庫)グ、ア、ム (新潮文庫)感想
小さなことでぶつかり合うけど、母娘の三人でグアム旅行に行き、父と国際電話で話すくらいには仲の良い家族。微笑ましいしうらやましい。作品全体が徹夜明けの妙なハイテンションのような文章だったとおもう。シュールな可笑しさが多くて良い。家族全員がちょっとずつズレているのかな。特に父親は長女を「ワーキングプア」と読んだりウサギのおもちの「世話」をしたり、おどけていて変わっていて良いキャラだった。グアムでのお祭りの場面。姉妹の喧嘩のところはちょっと感動した。チラッと見え隠れする家族愛。
読了日:9月10日 著者:本谷 有希子





わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)感想
もっと早く改行をしてほしくて、もっと句点を早く打ってほしかったなぁ。 よくわからないなぁ。真面目に読んでわかりたい、と思わせる本ではなかったのが残念なところ。すこし狂い気味なのは好きだけど。 会話部分が関西弁なのは良いとしても、地の文までが関西弁なのはさすがに不自然なのではないかな、と途中で考えてしまった、萎えてしまった、真面目に読むことから醒めてしまった。
読了日:9月1日 著者:川上 未映子





キッチン (新潮文庫)キッチン (新潮文庫)感想
もうちょっと硬派な本かと思ったら大分軟派で女の子が好きそうな恋愛小説だった。主人公たちが自分で言ってるけど人がやたらと死にすぎ。『誰も死なない恋愛小説』というタイトルの本を思い出した。どうでもいいやってかんじで、この感想を書いてるのもアホらしい。
読了日:9月4日 著者:吉本 ばなな





走れメロス (新潮文庫)走れメロス (新潮文庫)感想
「ダス・ゲマイネ」はそれなりに面白く、「走れメロス」は読めるものではあった。でも、それ以外はあまり読みたいものではなかった。この新潮文庫の『走れメロス』は太宰の「人生を切り張りして小説を書いている」という一面が強く出ていて、私小説というよりエッセイで、小説として真面目に読む気にはなりにくい。これを読んでいる間、自分は太宰治は大学に入ってから読んでいるけど別に好きではないのかな、と思っていた。僕の場合、魅力はあまり感じない。太宰治自身の人生は傍から読めば面白いのだけど。
読了日:9月18日 著者:太宰 治





さよならアメリカさよならアメリカ感想
群像新人文学賞受賞時の『群像 2005年6月号』で読んだ。安部公房の「箱男」のオマージュのような話で、箱が袋に替わっている。家でも外でも袋を被って過ごす青年の話。中盤までは純文学とミステリーの要素というやっぱり安部公房みたいでなかなか面白くてよかった。ただ、終盤が投げやりな展開で残念だった。夢オチのようなもので、語りを何も信じられなくなる。「箱男」をまだ読んでいないので読みたい。少し「闖入者」っぽくもあった。
読了日:9月15日 著者:樋口 直哉





群像 2012年 09月号 [雑誌]群像 2012年 09月号 [雑誌]感想
舞城王太郎「私はあなたの瞳の林檎」、海猫沢めろん冥王星とモネ」、アントワーヌ・コンパニョン「文学は割に合う」、蓮實重彦フローベールの『ボヴァリー夫人』を読んだ。「冥王星とモネ」と「文学は割に合う」がまあまあよかった。
読了日:9月15日 著者:





表層批評宣言 (ちくま文庫)表層批評宣言 (ちくま文庫)感想
9割がた何を言ってるかわからなくて苦痛だった。独特のくだくだしい文体は他人に何かを伝える気が全くないように思える。当時の批評家たちを批判していることが多く、その批評家や論を知らないからよくわからないというのもあるだろう。なにかを批判をするのは良いのだけれど、著者自身が自ら論を立てて説いていくということがなかったように思える。否定ばかりでは愚痴っぽくていやだなぁ。
読了日:9月13日 著者:蓮實 重彦





あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(下) (文庫ダ・ヴィンチ)あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(下) (文庫ダ・ヴィンチ)感想
「もし死んだあの娘がまた現れたなら」という仮定を思い込むゲームのようなもので、そういうゲームだとしたらこれは最高のゲームだった。アニメと小説版を切り離してなにか言うのは難しいけど、これはこれで良かった。アニメでも小説版でも、ぽっぽは一番人間味が出ているようで良いな。
読了日:9月26日 著者:岡田麿里





クロス×レガリア  滅びのヒメ (角川スニーカー文庫)クロス×レガリア 滅びのヒメ (角川スニーカー文庫)感想
三巻目にしていよいよキャラクターが増えてきてよくわからなくなってきた。キャラに多様性が少ないので、それぞれの区別を付けにくい気がする。イラストも叙述でも、似たようなキャラばかりを作りだしているような。女の子はすべてツンデレに見えてくる。ナタとリャンファが読んでいてごっちゃになる。顔の描き分けできないイラストの責任が大きいかもしれない。しかし、キャラが増えてどんどんと世界が広がっていく様は楽しみ。魔法使いも出てきたりと…。
読了日:9月10日 著者:三田 誠





われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)感想
ロボットものSF小説の古典と言っていいのかな。1950年に刊行された短編集だけど、すごく新鮮だった。勿論SFでもあり、「ロボット工学三原則」を使ったミステリーやサスペンス要素もある。ロボットを見て、人間を見ることになる。そういうところに久々に本を読んでいて心を揺さぶられた。映画の『アイ,ロボット』はこの短編集が原作ということになっているけど、だいぶ内容が違ったな。映画もわりと好きだけど。
読了日:9月30日 著者:アイザック・アシモフ





面白いほどよくわかるロボットのしくみ (学校で教えない教科書)面白いほどよくわかるロボットのしくみ (学校で教えない教科書)感想
科学的なところは少し難しかったけど、技術的、歴史的など幅広い観点でロボットについて解説されていて面白かった。これを読んで、アイザック・アシモフの『われはロボット』を読み始めた。
読了日:9月22日 著者:大宮 信光




読書メーター



関連エントリー
「舞城王太郎『私はあなたの瞳の林檎―はじめての舞城王太郎―」(2012.09.10)
「海猫沢めろん『モネと冥王星』、アントワーヌ・コンパニョン『文学は割に合う』(『群像 2012年9月号』)」(2012.09.12)




箱崎ジャンクション (文春文庫)

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生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

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群像 2012年 09月号 [雑誌]

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