sibafutukuri

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こころ

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  夏目漱石の『こころ』を数年ぶりに読み返そうかと思い、本棚から以前に中古で買った文庫本を取り出した。
  取り出して開きパラパラとページを捲ってみると、鉛筆で書かれた線やら「ここから」、「ここまで」とか傍線や波線、☆マークとか花丸マークとかが目に入る。「なんだこれ」と思いつつ、初めて『こころ』を読んだ時のことを回顧するものの、こんな注意書きやらなんやら書かれたもので読んだ覚えがない。
  けれども、高校の授業で本書を題材として勉強する以前に、自主的に本書を読んだ記憶があるので、おそらくこの文庫本が本書との初めての出会いだろうと思われる。
  おそらく、この第三者による手書きの注釈などは、中学校か高校での授業内に行われた筆跡だろう。初めはこの筆跡に驚かされたけれど、字体が丸っこくてそして稚拙であり、お花マークが可愛かったりすることから、なんだか許せてしまう。というか、これだけのものを買った自分を、まず理解できないのだけど。
  字体は稚拙なのだけど、ペラペラと流し見する限り、ほぼ全ページになにかしらの書き込みがあり、その勤勉さが窺え、つい感心してしまう。
  と、書いている間に、高校の頃のテキストを引っ張り出してみる。その中の『こころ』の部分をパラパラと捲ってみると、自分の物もなかなか頑張っているようで、文字の書き込みこそ少ないものの、傍線は至る所に見受けられる。
  この頃も相変わらず学校へはほとんど行っていない記憶があったから、まず、少なくともこの授業にだけはちゃんと出ていたことに驚いた。漱石が好きで文学にも興味があった、ということが大きな要因なのだろうけど。

  「精神的に向上心がないものは馬鹿だ」


  登場人物の一人のKによるこの言葉は今でも忘れられないほどに、授業中に先生が声に出し朗読した瞬間に衝撃を覚えた。
  件の文庫本で既にこの言葉は目にしていたのだろうけど、その最初は大した記憶には残っていなかった。が、声に出されて音として聴き、目に文字を映しているその状況がそうさせた。別にその先生の声だったからだとかではなくて、普段小説の台詞というものは音にして聴かないけれど、朗読されそして目で追っていたからこそ、その瞬間は確とこころに刻印されたものかと思う。
  日本語としておかしい、と指摘されることもあるけれど、私はこの言葉を格言として認識している。

こゝろ (角川文庫)

こゝろ (角川文庫)