『Far Cry5』と「オンリー・ユー」についての解説・考察
※以下の文章はネタバレを含みます
『Far Cry5』(ファークライ)ではたびたび男性ボーカルの楽曲「オンリー・ユー」が流れます。
エンディングの内のひとつや、ジェイコブの洗脳シーンなどでこの曲が流れるので、記憶に残っている人も多いと思います。
「オンリーユー」自体、どこかで聞いたことがあるけど詳しくは知らない、という人が多いのではないかと思います。
この記事では、『Far Cry5』で流れる「オンリーユー」の意味を解説・考察します。
目次
- 『Far Cry5』と「オンリー・ユー」についての解説・考察
- 目次
- 「オンリー・ユー」とは
- 洗脳シーンで「オンリー・ユー」という違和感
- 「オンリー・ユー」の歌詞
- ファーザーからルーキーに向けられた「オンリー・ユー」
- 「オンリー・ユー」の「誤読」が『Far Cry5』を生んだ
- 余談 募兵ポスターについて
- その他の攻略記事など
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「オンリー・ユー」とは
「オンリー・ユー」(Only You)は、1955年にアメリカ合衆国で発表された、プラターズの楽曲。
プラターズ(The Platters)はアメリカ合衆国のコーラス・グループ。ロックンロール黎明期に登場し、1955年の「オンリー・ユー」のヒットで知られる。1990年にロックの殿堂入りした。
余談ですが、「オンリー・ユー」は ジョージ・ルーカス監督の映画『アメリカン・グラフィティ』(1973年アメリカで公開)の挿入歌として使われています。
おなじくプラターズがカバーした「煙が目にしみる」も同映画に使われています。
●和訳付き動画
●イントロもエンディングと同じ
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洗脳シーンで「オンリー・ユー」という違和感
昔の洋楽に詳しくない自分でも知っているくらいなので、映画やCMなどいろいろなところで使われていたりカバーされていそうな曲です。
なぜこの曲が『Far Cry5』の洗脳シーンで使われていたかは、歌詞がわからないこともあってゲームをやっただけでは意図を把握しづらいです。
曲の雰囲気や冒頭の「オンリーユー♪」からして本来、男から女に向けたロマンス系の歌のように思えるので、アバターを男にした場合、より一層理解不能になるかと思います。
自分は女アバターにしていたので、まだ男対女の構図になっていたので多少は納得しやすくはありましたが。
「オンリー・ユー」の歌詞
こちらのサイトに英語の歌詞と和訳の歌詞が記載されています。
まず、曲名の「Only You」は「あなただけ」と訳されています。
エデンズ・ゲートっぽさのある歌詞を一部抜粋します。
「あなただけがこの世界を正しいように思わせてくれる」
「あなただけがこの暗闇を照らし出してくれる」
「あなたただ1人があなたと同じように私を興奮させてくれる」
「あなただけが私にこんな変化を起こさせる」
「あなたは私の運命さ」
「あなたが私の手を握ると私は分かるんだ あなたがかけた魔法の正体は私の夢の具現さ」
※動画の和訳では→「君に手を握られた時に分かったんだ まるで魔法にかかったよう 僕の夢を叶えてくれるのは かけがえのない君だけなのさ」
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ファーザーからルーキーに向けられた「オンリー・ユー」
(アンクル・サムのイラストと共に「I WANT YOU」と書かれたアメリカ軍向け募兵ポスターのパロディ)
『Far Cry5』の中で「オンリー・ユー」は主にジェイコブが持っているオルゴールから流れる曲として使われています。
この曲をルーキーが聞くことで幻覚を見たり洗脳状態になったりします。
エンディングで「オンリー・ユー」が流れたのは「洗脳が解けていなかったのか!?」という意外さがありましたが、あれは例外的な使い方です。
以上のように、作中の使われ方としては「オンリー・ユー」はジェイコブの曲というイメージが強いです。
ですが、歌詞を見るとどう考えてもこの「オンリー・ユー」はファーザー(ジョセフ)からルーキーに向けられたラブソングのようのものにしか思えません。
「あなただけがこの世界を正しいように思わせてくれる」
⇒世界崩壊のお告げを信じているファーザーにとって、ルーキーの存在によって、崩壊する世界を正しいものに思わせる。
実際、「抵抗する」を選択することでファーザーの預言通りに核爆弾が落ちてきて世界が崩壊する(ように見える)。
「あなただけがこの暗闇を照らし出してくれる」
⇒終末へと向かう世界を乗り越えて、ファーザーと一緒に新世界を歩むのはルーキーただ一人。
「あなたただ1人があなたと同じように私を興奮させてくれる」
⇒救世主=ファザーと英雄=ルーキーという、同格の立場、強さ。二人は同格であり、ルーキーがファザーを超えられなかったからこそ、プレイヤーはファーザーを倒すことも世界崩壊を止めることもできなかった。
「あなただけが私にこんな変化を起こさせる」
⇒ファーザーによる世界崩壊の預言を実現させてしかも生存させたのは、「抵抗する」を選んだルーキー=プレイヤー。預言の実現により、ファーザーは本当に神のような存在になった。
「あなたは私の運命さ」
⇒世界崩壊の預言を実現させるにはルーキー=プレイヤーが必要不可欠。
「君に手を握られた時に分かったんだ まるで魔法にかかったよう 僕の夢を叶えてくれるのは かけがえのない君だけなのさ」
⇒手を握られた時=最初の教会のシーンで手錠をかけた時。
僕の夢=世界崩壊。
ファーザーがルーキーをいつから運命の人だと感じていたあるいは分かっていたかは謎ですが。
教会に行く前や逮捕した瞬間にルーキーを運命の人と感じていたようにはあまり見えないです。
むしろ、最後にダッチのバンカーで二人きりになって行き当たりばったりで、「父と子」の関係に持っていたような印象を受けます。
それでも、ファーザーの手を握ったのもファーザーの夢を叶えたのもルーキー=プレイヤーです。
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「オンリー・ユー」の「誤読」が『Far Cry5』を生んだ
以上に見たように、ファーザーとルーキーの関係は「オンリー・ユー」の歌詞にかなり寄り添っています。
「オンリー・ユー」の歌詞になぞらえて『Far Cry5』のメインストーリーが作られたとさえ思えます。
ラブソングであるはずの「オンリー・ユー」を「誤読」したことで、『Far Cry5』のようなプレイヤーの多くが納得しないバッドエンドオンリーのゲームという結果になりました。
ファーザーには本当に神からお告げがあったのかもしれない。
「世界の崩壊に備えろ」と。
でも、ファーザーの救済の方法は明らかに間違っていました。
エンディングでファーザーが「私は正しかった」と言って勝ち誇っているように見えますが、実際は誰も勝っていません。
核爆弾を撃ったのが北朝鮮だとしたら、アメリカに報復として核爆弾を撃ち込まれるでしょう。
核戦争の起こった世界に勝者となる国はあるのでしょうか。
ファーザーもまた、(見える範囲で)救えたのは自分を除けばルーキーだけです。
ジェイコブもジョンもフェイスも失ったのがファーザーです。
与えられたテクストが正しくても、「誤読」をすれば失敗するという点で 『Far Cry5』もファーザーも共通しています。
余談 募兵ポスターについて
指を差している募兵ポスターは元々キッチナーの募兵ポスターというのがオリジナル。
そのパロディの一つがアンクル・サムのポスター。
こんなポスターも実際にあったみたいです。
※チーズバーガーではありません
1985年、アメリカ合衆国、スモーキー・ベアを用いた山火事防止キャンペーン。「あなただけが、森林火災を防止できる」
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