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藤沢周が語る「なぜいま武蔵無常を論じるのか」

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武蔵無常

武蔵無常


  よく行く紀伊國屋書店に行ったら、藤沢周さんの新刊『武蔵無常』が何か所かに面陳されていて意外だった。けっこう注目されているのかな。

藤沢 周(ふじさわしゅう、1959年1月10日 - )は日本の小説家、法政大学教授。
  新潟県西蒲原郡内野町(現・新潟市西区)出身。新潟明訓高等学校、法政大学文学部卒業。書評誌『図書新聞』編集者などを経て1993年『ゾーンを左に曲がれ』(『死亡遊戯』と改題)でデビュー。1998年『ブエノスアイレス午前零時』で第 119 回芥川賞受賞。日本文学協会に所属する研究者。2004年より母校・法政大学経済学部の教授に就任し、「文章表現」「日本文化論」などを講じている。直木賞作家の藤沢周平とは、名前は似ているが無関係で、藤沢周平ペンネームであるのに対し、藤沢周は本名である。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%B2%A2%E5%91%A8


  芥川賞作家でもある藤沢さんは今まで純文学の場で書いてきた人だけど、『武蔵無常』は純文学風に書いた時代小説、みたいな作品かとおもう。分かり易い宮本武蔵という人物を主人公に置いた小説にも関わらず、武蔵の芸術的な面や武芸の中の哲学面が強く前面に出ているので、モチーフの割にはかなり読むのに苦労するものになっている。


文芸 2016年 02 月号 [雑誌]

文芸 2016年 02 月号 [雑誌]


  ちなみに『文藝』の2016年2月号(春号)に「武蔵無常」は一挙掲載された。『文藝』は普段読んでいないんだけど、一時期は『文學界』や『新潮』をよく読んでいた。『文學界』、『新潮』、『群像』は純文学色が強いけど、その三誌に比べれば『文藝』はもうちょっとエンタメ色が強くなった文芸誌という印象。同じ『文藝』2016年2月号には、『野ブタ。をプロデュース』(第41回文藝賞受賞作)の著者の白岩玄さんの「ヒーロー!」という作品も載っている(読んでないけど)。


  そういった掲載紙の特色を鑑みれば、悪い言い方をすれば純文学と時代小説の中途半端なもの、であって、良い言い方をすればその中間となった画期的な小説、という出来なのが納得できる。純「純文学」でもないし、純「時代小説」でもない。まぁ、そんなジャンルの話ばかりもしてても上っ面だけの世界でつまらないですが……。


なぜいま武蔵無常を論じるのか【1】 藤沢周×黒鉄ヒロシ×西部邁


  「武蔵無常」でググっていたりしたら上の動画を見つけてびっくりした。藤沢さんをゲストに迎えたトークの動画。数年前から藤沢さんのファンになった人間だけど、たぶん喋ってるのは初めて見た。今作もそうだけど、ハードボイルドな小説ばっかり書いてる人なのでもっととっつきにくそうな人かと思ってたけど、声が思っていたより高いし冗談も言いそうな人柄だった。これは第一回目みたいで、続きも楽しみ。


「なぜいま『武蔵無常』を論じるのか」① ゲスト:藤沢周、黒鉄ヒロシ 〜西部邁ゼミナール〜 - sakurajimaoyuwariのブログ
  こちらのブログでは動画の音声がテキスト化されている。


  1分10秒辺りで、司会の人が「剣道の四段だとお伺いしたのですが、いつぐらいから始められたんですか?」という質問をするけど、その藤沢さんの返答は「これがですね、今、ぼくは57歳なんですけども、46歳から始めたんです」というもの。


  これには驚いたね。普通剣道を何歳から始めるか知らないけど、だいたい学生の頃からやってたりするものという認識があった。でも、藤沢さんは46歳から。襲ない頃から柔道はやっていて、剣道のきっかけは子供の付き添いで始めたのがそうらしい。うーん、柔道も意外だけど、きっかけも子供の付き添いという「良い父親像」が、失礼ではあるけどまた意外だ。


  藤沢さんはエッセイとかでもほとんど奥さんや子供について書いていないけど、エッセイか小説家忘れたけど、ほんの一部の文章に子育てかなにかについて書いていて、けっこう良いお父さんなのかもな、と思った記憶がある。


  「46歳から始める剣道」という話を聞くと、自分もまだまだ遅くはないんだな、と思うところ。剣道やりたいし(藤沢周さんの影響)、卓球やりたいし(『ピンポン』の影響)。普段自覚してないけど、漫画とか小説にけっこう影響されるミーハー性質。


武曲 (文春文庫)

武曲 (文春文庫)


  藤沢さんの作品の中で剣道と言えば、2012年頃の『武曲』が青春剣道小説ですごくオススメだけど、ほかにも短編集でよく剣道をしている主人公の話があって、その頃からこの人の書く剣道が好きだった。


  前に書いたエントリーで、武蔵自身の『五輪書』や吉川英治の『宮本武蔵』を読まなきゃ分かり切ることは難しい内容だなーというようなことを書いたけど、その後、吉川版の『宮本武蔵』を電子書籍の一冊にまとまったやつを買って読み始めた。けど、現在は挫折中……。でも、基本的にエンタメな時代小説だと思うけど、意外にも禅とか仏教っぽい静かさもあって意外だった。一方、藤沢さんの『武蔵無常』に至っては、その静かさが度を越してて付いていけない世界が濃いものだから、紙の上で己は迷子、という感覚。


  『武蔵無常』は、とりあえず『文藝』で読んで、単行本も買ってあってまだ読んでいないから、自分の知性も感性も磨き直してから、また再挑戦したい作品。


表現者 2016年 05 月号 [雑誌]

表現者 2016年 05 月号 [雑誌]

  上の動画と関連して、この『表現者』2016年5月号の座談会に藤沢さんも参加しているみたいです。


サラバンド・サラバンダ

サラバンド・サラバンダ

  4月27日発売。「芥川賞作家が円熟の筆で描く珠玉の短篇小説集」。発売もうすぐか、たのしみ。


■「藤沢周関連エントリー
藤沢周による宮本武蔵 「武蔵無常」(16.03.14)
藤沢周さんの新作 「武蔵無常」と「或る小景、黄昏のパース」(16.02.23)
藤沢周 「物狂」 - 飽食の認知症系介護小説(15.04.25)
藤沢周 『武曲』 - 殺し合い生かし合う剣道(15.04.11)
藤沢周 『幻夢』 - 現実と妄想のクロスフェード(13.11.06)
藤沢周 『さだめ』 - AV女優スカウトマン視点(13.07.14)
  ほかにもいろいろ書いていますが、リンク貼るの意外と面倒だと気づいたので最近のだけ。気になるひとは「日記の検索」っぽい部分で「藤沢周」と入力して「一覧」で検索してみてください。