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二度目の『ジャッキー・コーガン』を観て原作を読んだ

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  二度目を観るためにどうせなら、ということで『ジャッキー・コーガン』のブルーレイを最近買って観た。


  そして、原作も読んだ。


映画『ジャッキー・コーガン』予告編


  原作の『Cogan's Trade』は73年刊行でブラピ主演の映画が2012年に公開。一度目に映画を見た時、どうやったらこんなつまらない映画を作れるんだ?と呆れた。と同時に、意味ありげに背景にBGM的に流れるオバマの演説の音声や映像が、鑑賞後もずっと引っかかり続けていた。73年以前に書かれた小説だから当然だけど、原作にはオバマもそうだし他の誰か政治家の演説もなく、直接的な政治的描写はゼロ。でも映画の監督や製作にも関わっているブラピは、小説で描かれるギャングたちの騒動を経済や政治の暗喩として解釈して作った。


  アメリカ在住の映画評論家・町山智浩の解説がなければ、今でもこの映画の意味をほとんどの日本人観客が理解できていなかったかもしれない。「サブプライムローンをギャングの賭場荒らしに象徴させたアメリカ経済の話です。」という町山さんの解説に加えて「それがわからないとつらいです。 」というコメント。それでも、アメリカの経済状況を詳しく知っているわけでもなく、言ってしまえば他人事の問題なので、サブプライムローン問題の比喩だ、とわかったところで大して面白くなる映画ではない。でも、そういった現実の経済的問題とギャングたちの騒動が重なるといった視点は考え出すとなかなか面白い。


  映画は政治的演出を抜きにすれば原作にかなり近い構成。ぐだぐだとギャングやチンピラたちのバカ話が延々と続いたりする。一方で、暴力シーンが数行で終わってしまう。そのコントラストが上手い。映画はスローモーションを使うなどして雑談と暴力のギャップを作りだしていたけど、原作は気づいたら読み終えているような「Softly」な殺しが反対に、読者の頭の中で印象として際立つ。


  映画の邦題はこの邦訳書と同じく「ジャッキー・コーガン」で、映画の原題はコーガンの仕事の流儀を表した「Killing Them Softly」。確か映画にあったこのセリフは原作にもあった気がする。でも、映画にあった決めゼリフの「アメリカは国じゃない。ビジネスだ。」は原作にない。なぜならこの(個人的な)名セリフも、映画で肉付けされたアメリカ経済の部分と深く関わるからだ。


  最近見た海外ドラマの『ミスター・ロボット』も、主人公の革命運動の動機のひとつがサブプライムローン問題なんじゃないかな、とうっすらと頭に浮かぶ。経済もアメリカの状況もほとんど知らないのでなんとも言えないけど。



  ちなみに、『ジャッキー・コーガン』の監督でもあるアンドリュー・ドミニクが撮った、主演ブラピの映画『ジェシー・ジェームズの暗殺』はオススメしないけど、一度目は退屈過ぎて苦痛だけど不思議と二度目見たくなる映画、と(自分の中だけで)評判。ケイシー・アフレックもいい味だしてる。




「町山智浩さんによる『ジャッキー・コーガン』ちょっとだけ解説」




ジャッキー・コーガン

ジャッキー・コーガン

原作小説。




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