2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2235ページ
ナイス数:68ナイス
■フィクション
記憶破断者の感想
序盤は作者の別の短編でほぼ同じ話があり、基本的に映画『メメント』のパクリという点は気になるけどなかなか面白かった。短期記憶障害の主人公と記憶を書き換えられる殺人鬼との超能力心理バトル。記憶操作という能力に現実味は全くないが、その能力者と対峙することで不利でしかないはずの短期記憶障害が強力な超能力になるという展開は、この二人が出会ったからこそ。記憶の連続はノートの記述によって補完される。そこから自己同一性への疑いが効果的に表れている。作者がなんども書いているテーマだから飽きがあるとはいえそこも面白い。
読了日:9月27日 著者:小林泰三
アブサロム、アブサロム!(下) (講談社文芸文庫)の感想
フォークナーのよさは言葉にしづらく特にこの本はそう。冗長で鬱々としている。19世紀のアメリカ南部はアメリカの暗部と言えるかもしれないが、フォークナーはそこでの物語にこだわる。血統にしても土地にしても、忌み嫌おうとも生きていく上で束縛され続ける。黒人奴隷を従えた王の話でもある。王によって身勝手に残された子孫たちの宿命はいくつも枝分かれした血統図に蔓延している。黒人への差別を例えば映画『それでも夜は明ける』みたいに批難するわけではなく、ただそれが当然としてある世界がある。そこに生きる生々しい人々の物語。再読。
読了日:9月21日 著者:ウィリアム・フォークナー
■ノンフィクション
錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)の感想
19世紀のニューヨークの話から始まって、だんだんと現代に近づいてくるものの歴史的な話と出典がわかりにくい引用の多用、それに対するレムの婉曲的な批評など、とても取っつきにくい。区画化されたマンハッタン、摩天楼の立ち並ぶユートピアなど、言語化された都市の読み変えとしては面白いが。ダリとル・コルビュジエの対比が新鮮。
読了日:9月21日 著者:レムコールハース
書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)の感想
時代性が強い。競馬とかパチンコとか興味ない。今の時代には、というか今の若者には合わないだろう。時代を越えられない本だろうな、と一旦は思ったが、荒んだ若者たちの時代がまたくれば、また書店で甦る本でもあるのかな、と思い始める。「書を捨てよ」と言うけれど、そもそも本を読んでいなければ捨てられない。
読了日:9月21日 著者:寺山修司
ポケットに名言を (角川文庫)の感想
作家や寺山修司自身の名言を集めた一冊。後に読んだ『書を捨てよ、町へ出よう』にもここに挙げられた名言がちらちらと出てくることもあり、選ばれた傾向として著者の趣味性が高いようにおもえる。個人的にあまり心に響く言葉との出会いはなく。名言に対してもうちょっと選んだ者の解説などがあったほうが分かり易そう。
読了日:9月21日 著者:寺山修司
沖縄文化論―忘れられた日本 (中公文庫)の感想
沖縄は大雑把に分ければ、ゆったりとした生活と政治に巻き込まれる生活という二面性があると言えるかもしれない。この本で強いのは政治面の方で、広く言ったときの沖縄の人々が歴史的に被支配民であった、ということ。そういう土地で生まれた神話や歌、踊り、楽器の演奏など。想定していなかったが、岡本太郎の民俗学的な部分を読むことになった。
読了日:9月21日 著者:岡本太郎
明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法 (アスキー新書)の感想
3.11のすぐ後に刊行。SNS関係の話題がメインで目を通しておいて損はないかと。3.11や鳩山元首相とのSNS企画の経験が自慢話っぽくもあるが、成功例として書かれている。
読了日:9月21日 著者:佐藤尚之
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