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『ファーナス/訣別の朝』 - 虚しさとハードボイルドの世界

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  『ファーナス/訣別の朝』を見た。監督はスコット・クーパーという人でさほど有名ではないけど、クリスチャン・ベールとケイシー・アフレック、ウィレム・デフォー出演、リドリー・スコットレオナルド・ディカプリオが制作に関わっているということもあり期待値が凄く高かった。けど、なんの意外性もない映画だった。それが意外。


  でも、エンドクレジットで流れる歌詞の歌を読んで、これってハードボイルドな世界の映画だったのかと思った。貧困層の生活で惨めな人生と言ってもいいかもしれない。そこから始まる物語。希望はかけらくらいで、他は虚しさしかない。なのに、どんどん闇へ堕ちていく主人公。男の虚しさだけが残る。


  男の独りよがり。ヒロインは存在するけど、最後には男しか残らない。クリスチャン・ベールの演じる男の心の底に滞っているのは父親の存在。そう主題歌のPearl Jamの"Release"は感じさせる。それがハードボイルドを思わせる。


  見終わってみて気づくけど、意外なことにロバート・デニーロ主演の『ディア・ハンター』に近いということ。物語上たいした意味はないけど、象徴的に映される鹿狩りがある。それと戦争経験によるPTSD。『ディア・ハンター』でのロシアン・ルーレットがこっちでは喧嘩賭博。オマージュのようなものを感じる。


  『ディア・ハンター』は悲劇的な映画で、『ファーナス』も出来事だけで言えば悲劇にちがいない。でも、『ディア・ハンター』のような仲間たちとのバカ騒ぎみたいな陽気さが堕ちる前にほとんどない。だからゼロからマイナスになるというより、1がゼロになって終わるという虚しさが余韻として残る。悲しい、というより虚しいという感覚。


  予告に「名優たちが魅せる最高級の演技!」という煽り文句があるけど、たしかに名優たちが出ているし彼らの演技もいい。でも逆に言うとこの映画にはそれしかない。ストーリーも演出も凝ったものではないから、役者たちの演技任せとも言える。でも、その演技力のおかげでギリギリのところ成立している気がする。



主題歌。