sibafutukuri

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蜂みたいな蛾を追う家守を追う猫と

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引越前夜
土曜日


なにか思うことがあっても
なにか書きたいと思うことがあっても
パソコンがない
キーボードを叩きたくても叩けない
マウスもない
ネコはいるけど
部屋の隅で丸まっている
最後の晩なのだから触れていたいのだが
ネコはネコで一人に慣れる予行演習か


何年も住んだ窓の網戸は蔓草がはびこる
今晩はヤモリが三度も室内の光につられてかやってきた
尻尾が短いやつだ
ちぎれた後のヤモリなのか
一度は一人で
二度は一人でも見つけた猫に網戸越しに追いかけられて
三度は蜂みたいな蛾もブンブン鳴りながら一緒に
ヤモリはそのハチ蛾に夢中のようで
網戸をよじ登って狩人になっていた
蛾は蛾で光に無我夢中でヤモリになんて気づかない
その内、ヤモリが蛾の片羽をパクリとくわえた
ブンブンとハチ蛾は羽ばたいたまま身動きできない
しかし、ヤモリのからだ半分くらいある蛾だ
どうも狩人ヤモリ氏には食べられそうにはない
NHKとかアニマルプラネットみたいな
野生動物ドキュメンタリーの取材者になった気分だ
取材者なら静観すべきだろう
けれど、ただの人間である人間なので
網戸をでこぴんで叩いてみる
ハチ蛾をぴんと
狩人ヤモリ氏をぴんぴんと
すると、先にヤモリが羽から口をはなした
しかも落下する
でも大丈夫
蔓だから葉っぱもたくさんあるのだから地までは落ちない
それでも蛾はブンブンうるさい
部屋の電気を消す
さっきから読んでいたKindleだけが白く発光している
やがて、ハチ蛾の羽音は聞こえなくなった


ケータイでパチパチと文字を入力する
原始的な方法だが身近ではある
こうしていると高校の頃を思い出す
やけに高校生たちの中でケータイ日記みたいなのが流行っていた
パチパチと日々文字を打ち込んだものだ、と思い出す


とにもかくにも物は茶色箱に仕舞っていった
身の回りに紙の本は藤沢周一冊だけになってしまった
眠くなってきたのでそろそろ布団に入るが
暇をつぶせる方法がどんどん減っていくのは心細いものだ
ネコはまだ部屋の隅で丸まっている
蔓がはびこる窓からの夜風が涼しくなってきた
うちわもいらないくらいだ

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