sibafutukuri

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2015年3月の読書

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2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3482ページ
ナイス数:121ナイス





■フィクション


エリアーデ幻想小説全集〈第2巻〉1959‐1971エリアーデ幻想小説全集〈第2巻〉1959‐1971感想
  「ムントゥリャサ通りで」は改めて読んだがやはり傑作。多重構造的に物語内物語が紙の上を支配していく構成であり、謎を深める結末でもあるのだけどミステリー風の謎解きの面白さと読み易さがある。というか、他の作品が読みづらく何が起きているか把握するのが大変なものが多いのだけど。エリアーデはおそらく意識してだろうけど、同じ文章を繰り返す文体をよく使っているせいもある。その文体は読みにくさと同時に迷宮みたいな幻想性を生む。タイムスリップしたりワープしたり、そういうことが魔術的に起こるがやはり現実味とのバランスが上手い。
読了日:3月22日 著者:ミルチャエリアーデ





六秒間の永遠六秒間の永遠感想
  異能ものと刑事ものが混ざり合うものだとは考えもしなかったが、ここでは上手く一つの物語になっている。念じるだけで火をおこせる、という物理法則無視の能力を持つ主人公だが、どうやらこの世界には他にもおかしな能力を持つ人間が身を潜めているらしい。が、あまりそういう異能方面は掘り下げられず完結してしまい、裏の世界が凄く気になるところ…。異能者と一般人との共存という一面では、山田宗樹さんの『ギフテッド』や『X-メン』と重なる。超能力前提とは言え、ミステリー性も高くて意外な組み合わせに満足の読了感。
読了日:3月1日 著者:杉井光





家に棲むもの (角川ホラー文庫)家に棲むもの (角川ホラー文庫)感想
  ホラーとちょっとミステリー短編集。「家に棲むもの」は起きていることはホラーなのだけど、描写が軽いせいと老婆が『エクソシスト』を超えるアクロバットさを発揮し出して、一周してコミカルに思えてしまう。それが小林泰三さんの味かもしれないけど。ミステリー要素が強い「五人目の告白」は現在起きていることの予想も未来への予測も次々と裏切られていく感覚がなかなかに快感。他に、肉体的なグロさが多いけどグロというよりエグい、という感じか。全体的にちょっと物足りなかったかな。
読了日:3月1日 著者:小林泰三





サヨナライツカ (幻冬舎文庫)サヨナライツカ (幻冬舎文庫)感想
  主人公とヒロインに共感しづらい。エリートサラリーマンで婚約者がいるにも関わらず浮気をする豊と、ミステリアスで大金持ちらしい美女という二人なのだから、その二つの人生が破滅に至ろうがなんだろうが知ったこっちゃないという感じで。とは言え読み終わって時間を置いて思うのは、理性を越えた衝動というのは誰にもあるのだろうから、時にはハメを外す時期もあるのかもということ。後半の第二部は蛇足気味だし感動の押し付けがしつこいかな。1975年頃のバンコクの描写がなかなかいい。屋台の脂っこそうな飯をたらふく食べたい。
読了日:3月8日 著者:辻仁成





きらきらひかる (新潮文庫)きらきらひかる (新潮文庫)感想
  「ホモの夫にアル中の妻。セックスレスでも傷つけあっても、離れられないふたり」というあらずしが衝撃だけど、それでもおしゃれな世界で奇妙な夫婦なりの愛の在り方みたいなものを上手く書いているとおもう。情緒不安定で躁鬱病みたいな妻とゲイで恋人ありの夫だけど、読者として二人の関係が続けばいいと心配しつつ読んでいて、おもしろかった。しかし、精神疾患者の妻・笑子が全く性欲がないみたいなキャラとして書かれていて、実際はどうか知らないが、そう書いてしまうと聖人化しているみたいで、冷静に読むとその面はちょっと気色悪い。
読了日:3月1日 著者:江國香織





学問 (新潮文庫)学問 (新潮文庫)感想
  なまぬるいお話だった。性の衝動と死というものがテーマになっているようにおもえるが、どちらも表現がなまぬるく特に冴えたところもなく、並みの青春小説に留まっている。自然描写も土地固有なものがあったりするわけではなく、キャラクターも含めて記号的な印象。「学問」という不釣り合いに仰々しいセンスのないタイトルはどうにかならなかったのか。
読了日:3月8日 著者:山田詠美





■ノンフィクション


見守られて生きる見守られて生きる感想
  『おかげさまで生きる』に続く二冊目。特定の宗教に属することはなく、主に仏教とキリスト教が混ざり合ったような宗教観や人生観が書かれていて、都合のいいところだけ持ってきた感じがなくはないが、現代人らしくもある。人の本体は魂で死ぬことはなく、肉体が死んでも魂がいったん外部の空間に留まり、また次の肉体へ移るだけ、というような割とぶっ飛んでることを真面目に語っていて驚きもするが、食事や挨拶は大切というような一般的な自己啓発書らしいことも語っている。矢作さんのこの人間としての成熟具合には憧れる。
読了日:3月24日 著者:矢作直樹





陰謀論の正体! (幻冬舎新書)陰謀論の正体! (幻冬舎新書)感想
  副島隆彦さんの『陰謀論とは何か』みたいに著者が陰謀論者ではないので、だいぶ客観的に解説していて信憑性は高い。その分、面白みは半減だがためになる。歴史上で陰謀=共同謀議はあり、3.11でも政府がPR会社に依頼して世論を操作しようとしていたらしい。本当に陰謀だったかは別として、3.11による「ただちに影響はない」みたいな信用できない言葉を国民は繰り返し聞いたのだから、当然不信感は高まる。例えばアメリカ陰謀系にしても、敵対心だけでなく被害者意識としての自己憐憫や不安、またおふざけなどが陰謀論を生むのだろう。
読了日:3月22日 著者:田中聡





陰謀論とは何か (幻冬舎新書)陰謀論とは何か (幻冬舎新書)感想
  陰謀論の定義や具体的な陰謀説が解説されていて分かり易くもあるのだけど、著者の副島さん自身がアポロ計画の月面着陸陰謀論者であったりするし、半分対談形式なせいかわりとふざけている部分もあって、どうも信用してはいけない気がする。陰謀論者が書いた陰謀論の解説なんて、疑い始めたらどうどう巡りになるようなもので、この正しさの根底さえもない不思議感が面白くはあるが、どこまで真面目なのか本当によくわからない本だ。こうやって全てに疑心暗鬼になっていき、いつの間にか全てが陰謀に見えてきてしまうものなのかもしれない。
読了日:3月22日 著者:副島隆彦





Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説2 受け継がれし語られる者たちへ (幻冬舎よしもと文庫)Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説2 受け継がれし語られる者たちへ (幻冬舎よしもと文庫)感想
  666が悪魔の数字と言われているからといって、巷に溢れる666を探し出してフリーメーソンが隠し込んだんだ!みたいなのはいかにもバカっぽい。とは言え、日ユ同祖論の章ではわりとまじめに検証していて夢があったり、また、陰謀論としての語り口だとしてもアメリカが日本を操作して利用している歴史は実際そうだろうから、理由がどうあれそれを告発していて愛国心が見え隠れしているから意外でよかった。裏の世界の人が地球を支配することを指すニューワールドオーダー(新世界秩序)という言葉は知らなかったけど、実に荒唐無稽で好き。
読了日:3月14日 著者:関暁夫





ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説―信じるか信じないかはあなた次第 (幻冬舎よしもと文庫)ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説―信じるか信じないかはあなた次第 (幻冬舎よしもと文庫)感想
  バカっぽいし読んでたら恥ずかしいと思いつつも、ページ数が少ないし写真も多くて手頃そうなので読んでみる。口裂け女とかスタバのマークの秘密とか徳川埋蔵金とかバカっぽいのも多いけど、ドル札に隠されたメッセージとかフリーメーソン系とか陰謀論に近い話はバカというより書いている人がアブない方向とは言え、なんだかワクワクしてしまう自分がいる。柳田國男とかエリアーデとか、民俗学やオカルトを組み込んだ小説など、こういうバカっぽい都市伝説が基盤になっているのだと思う。やはり、踏み込み過ぎたら人として危ない分野ではある。
読了日:3月14日 著者:関暁夫





社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書)社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書)感想
  「ソーシャル」というワードと柳田國男の組み合わせは奇妙だが、多少強引ながらも読み終われば納得できる一冊になっている。「ソーシャル社会」という不思議な言葉が使われるこの国には「社会」がない、というのが大塚さんの主張であり、柳田國男は戦後に選挙のシステム作りなどを通して民俗学で社会づくりをしようとした、というところだろうか。あまり集中して読めず、内容も文学、民俗学、社会運動と広範に渡っていることもあり頭にしっかり入っていない。柄谷行人さんの『遊動論 柳田国男と山人』は社会づくりという点で近いか。
読了日:3月8日 著者:大塚英志





無罪 (新潮文庫)無罪 (新潮文庫)感想
  欧米で実際にあった未解決事件など13件、被告人が無罪になっていく過程を紹介した一冊。読み始めて小説なのかと思っていたが、実は全てが外国人が書いた本などを基に大岡が編集し直したもの。淡々に捜査や裁判の過程を書いているので退屈さもけっこうあるが、科学的知識がまだ貧しかったり判事ではあっても意地を張ったり思い込みをしたりして、証拠不十分にもかかわらず有罪へと押し進めようとするなど、人間の愚かな心理が明かされていくなど、予想とは違った内容だがなかなかに楽しめた。エンタメ性は低いが、ミステリーに近くはある。
読了日:3月2日 著者:大岡昇平





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六秒間の永遠

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