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2015年1月の読書

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前回の分に比べれば全然読んでいない月になったので、編集がかなり楽に感じる。
意識していなかったが、三田誠さんを三冊も読んでいた。
『ロード・エルメロイ2世の事件簿』よかった。




2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3674ページ
ナイス数:131ナイス





■フィクション


羆嵐 (新潮文庫)羆嵐 (新潮文庫)感想
  ヒグマに襲われた村人たちが怯えながら退治を試みる実際にあった話をもとにした小説。襲われて熊を追って、というただただ一本道なストーリーなのに綿密に書かれた描写が一々リアルで熊の恐ろしさがまざまざと伝わってきて、非常に読み応えがある。熊ってただの動物のように思ってたけど、人間を何人も殺してそして食べて農具や旧式の銃を持った人間が数十人集まっても太刀打ちできない、となるともはやこいつはモンスターと言ってもいいくらい。動物ものをよく描き確か熊ものも描いていた谷口ジローさんのマンガで読んでみたくなる。
読了日:1月24日 著者:吉村昭





破船 (新潮文庫)破船 (新潮文庫)感想
  漁村が舞台だが漁だけでは餓えてしまい、家族の一人や二人が身を売ることが常になっている。が、数年に一度「お船様」がやってきた時には村人たちは狂喜する。お船様とは岩礁に座礁した難破船なのだが、村人はそれを待ち望み夜中に火を起こして誘いさえする。積み荷も船の材木も船員の命をも奪う。あまりに悲愴的でひもじく痛ましいのだが、村人たちの無力さと純粋さが度を越していて、安部公房が好きなせいだろうかひどく滑稽にも思えてくる。閉鎖された村で破船を待たなければならない、何の縛りによるルールのある世界なんだ?と不思議に思う。
  読んでいて、このあまりにもバカらしい村と村人たちの話がもしノンフィクションだったらどうしよう、と心配で調べないようにしていたのだが、この『破船』はフィクションだそうだ。とは言え、破船から物を奪うことは一般的にあったのかもしれないし、飢饉などに面した村のひもじさというのは神頼みするしかない状態であり、いまだから嘲笑できるものなのだろう。村人の無知さ加減がアホらしくもあるのだが、『羆嵐』とはまたちがった面白さがあるので嫌いではない。
読了日:1月26日 著者:吉村昭





グレート・ギャツビー (新潮文庫)グレート・ギャツビー (新潮文庫)感想
  野崎さんの訳は好きな方だけど、これはちょっと古すぎて読みづらく描写がわかりにくい。ただ、2013年公開のバズ・ラーマン監督の映画を観ていたのでディカプリオやトビー・マグワイアなどの顔を思い浮かべながら記憶で補強して読むことができた。ギャツビーという男は詐欺師みたいな奴だが、語り手ニックから見ればひどくピュアな奴でもある。解説で野崎さんが書いているように、ギャツビーの出世は手段でしかなくて、昔の恋人デイジーを取り戻すことが目的だ。しかし、成り金と生来のお嬢様では決定的に人間性が異なる。センチメンタルになる。
  実はこの本は買うのも読むのも二度目。酔っぱらって醜態を晒した時になくしたので。敬愛する作家ヘミングウェイがパリ滞在中の思い出を書いたエッセイ『移動祝祭日』で親交のあったフィッツジェラルドとのエピソードをいくつも書いていたり、あと村上春樹がやたらと高く『グレート・ギャツビー』を評価していたりする影響で、一度は読了せずにはいられないと思っていたのでついに読めてよかった。また途中でなくさないかと心配しながらの読書だった。また映画を観たくなったし村上春樹訳も読んでみたい。
読了日:1月25日 著者:フィツジェラルド





スティル・ライフ (中公文庫)スティル・ライフ (中公文庫)感想
  文学の中で科学っぽいことを書いていてそれでも詩的で抒情性があるのは新鮮でいい気持ちがした。染料の話とか好きだな。そういうところは好きなのだが、株とかロシアのスパイの話とかみたいなエンタメ的で現実的な異質なものが混ざってきてその意図が意味不明だし、それは魚の肉だと思って咀嚼してしまいそうになった骨みたいに不愉快だった。理解しがたい。中途半端でもったいない。
読了日:1月24日 著者:池澤夏樹





文明の子文明の子感想
  短編集のようだけど繋がりのある話もあり、連作という風でもある。すべて童話調でSFやファンタジーっぽさがある。同じく芸人の西野亮廣さんの描く絵本もそういう雰囲気で近いものがある。この『文明の子』には宮沢賢治サリンジャーの影が見え隠れしている。過去の作家への尊敬は理解できるが、この本はそこから脱し切れずオリジナリティが不足しているように思える。童話調が悪いわけではないが、夢や妄想のような幼稚さを感じる。どちらかと言うと短編集の前著『マボロシの鳥』の方が好き。
読了日:1月24日 著者:太田光





白い指先の小説白い指先の小説感想
  四編収録。それぞれ別の話だが、やたらと作家や写真家あるいはその志望者たちが主要人物として登場する。数少ない読んだことのある他のいくつかの作品も含めて、なぜか最後には女性が成功者になり男性は変わらないまま、という構成が多い気がする。別に成功するとかしないとか、そういうオチはなくていいんじゃないかなと疑問を感じる。男が女たちを見守る、という形式なのかなと思う。まとまりのある一冊だが、まとめられる素材が光っていなければ良い本にはならないだろう。
読了日:1月10日 著者:片岡義男





老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))感想
  四編収録。他の三つはただの文字の羅列でしかなかったが、最後の「漂った男」はなかなかいい。ほぼ水しかない惑星に不時着して、題名の通りぷかぷかと浮かんで漂い続ける男の話。遭難した時の心境変化や周囲の人々の対応など、巧く書いていてすごいと思った。ただ、ほぼ水しかない惑星でその不思議な水だけで生きていける、という舞台設定がただのご都合主義でリアリティもクソもないのが非常にもったいない。始めの「ギャルナフカの迷宮」が顕著だけど、作品内世界が小説というよりゲームなんだよね。そこらへんはあんま感心しない。
読了日:1月10日 著者:小川一水





ロード・エルメロイ2世の事件簿ロード・エルメロイ2世の事件簿感想
  「Fate」シリーズのスピンオフで、ロード・エルメロイ2世=ウェイバー・ベルベットが主人公。原作の世界観に沿っているが、剣士などが活躍する話ではなくて魔術師たちがメイン。ロード・エルメロイ2世は魔術師としては二流だが、洞察力や博識という設定でこの話では探偵の役割を担っていて、広義のミステリーになっている。やはり三田さんと魔術考証担当の三輪清宗さんの織り成す魔法世界は楽しいものだ。原作のゲームなどの方を知らないので比較できないが、三田誠ファンが納得できる作品になっているとおもう。二巻目も期待。
読了日:1月4日 著者:三田誠





レンタルマギカ  滅びし竜と魔法使い (角川スニーカー文庫)レンタルマギカ 滅びし竜と魔法使い (角川スニーカー文庫)感想
  前巻からの続きで修学旅行で来た京都での魔法使いたちの決闘。終始緊迫しシリアスな展開。残りの巻数も少なくなってきたこともあり、この世界での日常の平和が恋しくなるものだ。嘘やごまかしで隠してきた真実が様々な人物から次々と明かされたりして、今までの常識が崩れていく。それでも結社「アストラル」や仲間を守るために闘うイツキを代表して、それぞれのキャラクターの信念には熱いものを感じる。いざこざの渦中での「ゲーティア」首領のアディリシアの葛藤もよくて、その末、絆は深まっていっているのだろう。第二部完。
読了日:1月24日 著者:三田誠





アガルタ・フィエスタ!―てのひらに女王を! (電撃文庫)アガルタ・フィエスタ!―てのひらに女王を! (電撃文庫)感想
  古代地下王国アガルタの王女・イセリア。ヒロインでもあるイセリアはかつては人間だったようだけれど、今は人形に魂が移っているような状態で、主人公と共闘したり恋愛っぽくもなるのだからそこだけで言うとなかなかマニアックなフェチだ。お話は一般的でライトなドタバタアクションという感じ。地下の世界でありながら地上のように光が照らす世界というのは、富野由悠季さんの『リーンの翼』のバイストン・ウェルに近い印象。この『アガルタ・フィエスタ!』は4巻までと短いしサラッと軽く読めるので続きも読んでおきたい。
読了日:1月24日 著者:三田誠





■ノンフィクション


スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)感想
  これは難しい。でも分かりたいと思わせる神秘性も同時に感じさせる。あの『エチカ』の原題を訳すと「幾何学的秩序で証明されたエチカ[=倫理学]」であるように、スピノザの記述方法はユークリッド幾何学に影響されているようで、ひどく数学的で日本語を読んでいる気がしない。内容はほとんど分かっていないけれど、でも「神あるいは自然」というフレーズは好きだ。
読了日:1月10日 著者:上野修





宗教人類学―宗教文化を解読する宗教人類学―宗教文化を解読する感想
  総勢20名以上の研究者たちによってまとめられた、総合的かつ教科書的な宗教人類学の本。祖先祭祀や死者儀礼、新興宗教などについてはさほど興味がなかったが、やはり呪術関係はおもしろい。シャーマニズムもいいけど陰陽道も奥深そうだな、とおもうのだった。直接は関係ないけど最近は錬金術にも興味が湧いてきて辿り着く先がまったく見えなくて困る。
読了日:1月10日 著者:





世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)感想
  穂村さん変なひとだなーダメなひとだなー。まさに「世界音痴」。おもしろいんだけど、こういう「俺ってダメなやつ」エピソードを自身で語るっていうのは信憑性が低いし痛くもあるね。キャラ作ってる感じで。そう思ってしまうのは、こういう自虐的エッセイが巷に溢れているからだろうけど。全て真実だとしても、それはそれで穂村さんが変人過ぎて信じられないし気持ちわるいっていう状態だ。穂村さんの書く文章や詠む短歌には興味があるけど、本人のような人には悪いけど近づきたくないなと思ってしまった。
読了日:1月24日 著者:穂村弘





読書メーター


羆嵐 (新潮文庫)

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マボロシの鳥 (新潮文庫)

マボロシの鳥 (新潮文庫)