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『WIRED』Vo.14の「ハメロフ博士の世界一ぶっとんだ死の話」への共感

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  『WIRED』最新号Vol.14の特集は「死の未来」。あまり気になるテーマではなかったが、デザインや写真を眺めているだけでも楽しい雑誌なので手に取った。でも読み始めたら凄く面白かった。まだ「スタートアップ大国イスラエル」と「ハメロフ博士の世界一ぶっとんだ死の話」しか読んでないが。


  麻酔医スチュアート・ハメロフ博士による「意識と『量子もつれ』と不滅の魂」の話がおもしろくて、希望の詰まった妄想に駆られて胸が苦しくなるほどだ。「量子脳理論」と呼ばれているおはなし。死者の意識の行方についてハメロフはこう語る。「『量子もつれ』によってひとかたまりになった『量子魂』なら、もしかしたら存在するかもしれないよ」と。

  「意識は、物質でできた肉体から離れてそのまま宇宙に留まるんだ。時間の概念がない、夢に出てくる無意識にも似た量子の世界だよ。ひょっとすると『量子もつれ』によって塊(かたまり)になった量子情報が『魂』と呼ばれるのかもしれないな」(スチュアート・ハメロフ)

 

  「そう、すべての物質には、空間にでさえ原始意識があるということになる。でもそれらに物事を統合する能力(微小管)はないから、意識といってもランダムで断絶していて、認識力はなく意味を感じない、原始的で未熟なものだよ。まるでメロディも音色もバラバラな、オーケストラのウォーミングアップみたいなもんだね」(スチュアート・ハメロフ)


  理論は科学的で理数系的なのでだいぶちんぷんかんぷんだが、言っている結論はなんとなくわかるし共感できる。たしかに「ぶっとんだ死の話」だが、アニミズムや汎神論風の意識や神についての意識を持っているぼくにとって、ハメロフはぼくのその意識に対する意識を実験と仮説で支持してくれる。


  「オーケストラのウォーミングアップ」という例えが面白い。ウォーミングアップとは演奏前のチューニングのことだろう。どこにでも、空間にでも意識は存在する。が、それは音楽のようではなくて音響だ。構成されたものではなくて、それ以前の原始的に当たり前に存在する音だと。


  オーケストラのチューニング音が好きだ。だってあれは紛れもなく音楽としてのドローン・アンビエントだから。残念ながら曲の演奏が心に響かない時、演奏前のドローンがその時の公演のピークになる。面白いのがチューニングの出来不出来はオケの成熟度にあまり比例せず、安定して心地よいことだ。


  チューニング音が安定していることで、ぼくの中でオーケストラの満足度の基準点が常にそこに置かれることになる。だからオーケストラはその基準点を越える演奏をしなければならなくなる。


  チューニング音は音楽度で言うと零度の音楽だろう。そして快楽度で言っても零度であり、満足できるオケならプラスへ上がるだろうが、そうでない場合はチューニング音以下の零度以下のマイナスへと下がる、ということ。


  ハメロフが言うには周囲や万物に意識があっても人間が気づけないだけ、ということだろう。だが、オーケストラのチューニング音をドローン・アンビエントとして音楽として把握できるぼくはわりかし意識できない意識というものにタッチできなくはないのではないか、とそういう馬鹿らしくもある妄想を膨らませて楽しい。