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panpanya 『蟹に誘われて』

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蟹に誘われて

蟹に誘われて


  panpanyaさんのシュールで夢想的なマンガ作品集『蟹に誘われて』。数カ月前に買ってさっき読み終わった。読み切りの連続なので集中が続かないのと終えるのがもったいなくて時間がかかったが、濃厚だった。いい漫画家を知った。


  『蟹に誘われて』は日常のなかの不思議を発見してそれを妄想により拡大させて物語化している。目の付けどころがユニーク。しかし新鮮な過程ではないのできな臭さを時々感じるが。物語としては模倣作品の嫌いがあるが、ぼやけていて夢のような画風にオリジナリティがあるため満足できる出来になっている。


  『蟹に誘われて』はマンガでありながら文学性を感じさせる。それは、例えば漱石のような文学でなくて安部公房のような文学だが。日常の隙間に不用意に入り込み、シュールな世界でアリスみたいに冒険をして逃亡劇を展開して、というような。好みなんだな。


  文学と一言に言っても、リアリズムと非リアリズムがあるということだろう。漱石だって新潮文庫の『倫敦等・幻影の盾』という一冊や、「夢十夜」なんかは幻想的で異境に足を踏み入れているものがあるのだけれど。


  『蟹に誘われて』は『不思議の国のアリス』と比べると、遥かに生活的で静かで日本的なのだけれど。私たちにとって身近であり卑近とも言える。安部公房はおそらくルイス・キャロルに影響を受けていて、だから『蟹に誘われて』を読むと連想的にこの二人を思い出さずにはいられないのだろう。


  次は『足摺り水族館』を読みたい。


足摺り水族館

足摺り水族館