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2014年7月の読書

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2014年7月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2851ページ
ナイス数:75ナイス





■フィクション


ムントゥリャサ通りでムントゥリャサ通りで感想
  ルーマニア語で書かれたルーマニアが舞台の幻想小説。タイトルや装丁から滲み出る奇妙さの通り、不思議で理解の追いつかない物語だが、その常識からの外れ方が快感でさえある。突然の訪問者の老人がある物語を語り、その内容と言えば『百年の孤独』みたいなふざけた信じられないものばかりだ。でも、なぜか聞き手も我々読者にも多少の信憑性があるように聞こえる。その理由は、やはり出来事が目の前で起きているのではなく、他者を介して物語として聞いているからだろう。ふざけた話ばかりだが、その信じさせ方のうまさに感服する。信じたくなる。
読了日:7月27日 著者:ミルチャエリアーデ





ゴリオ爺さん (新潮文庫)ゴリオ爺さん (新潮文庫)感想
  「人間喜劇」と呼ばれる作品群の内の一つ。パリの貧相な下宿屋を中心とした群像劇。これを読んでいてやはり思うのは、一人の同一人物をいくつもの代名詞などの名称を使い分けて呼んでいること。例えば主人公は、ウージェーヌでもありラスティーニャック、学生、彼などと呼ばれる。その呼称の使い分けによって読者は、実際に舞台にいる人物以上の人数が頭に浮かぶ。そういう誤読への誘導。また、一人物の多様性を表す点でも有効だろう。分かりにくさというデメリットがあるが、特徴的な文体。悲劇的出来事が起こるが、彼らはやはり喜劇的。再読。
読了日:7月9日 著者:バルザック





谷間の百合 (新潮文庫 (ハ-1-1))谷間の百合 (新潮文庫 (ハ-1-1))感想
  青年と貴婦人のプラトニックな恋。人妻との不倫、そしてセクシャルな部分へと手が伸びそうで伸びないその緊張感やバランスが凄くうまくておもしろい。でも、物語の内容に対して文章が無駄に思えるほど多すぎる。修飾過多、という感じで19世紀文学の、そしてバルザックの特徴かもしれないが、物に囲まれ過ぎた現代人には贅肉に思えてしまうのだろう。『ゴリオ爺さん』は悲劇の混ざった喜劇なので流れに波がありよかったが、こちらは悲劇一辺倒なのも読んでいてつらいところ。
読了日:7月27日 著者:バルザック





ダヤン・ゆりの花蔭にダヤン・ゆりの花蔭に感想
  ダヤンと呼ばれる天才的な数学の才能を持つ青年。眼帯を片目にしていたが、大学からの命令で反対の正常な方に眼帯を掛けなければならなくなる。奇妙なユダヤ人と遭遇して無事反対の目に眼帯は移るのだが、そこから街を彷徨うことに。目撃者によると、ダヤンは三日間行方不明で墓場から出てきたとのこと。「ゆりの花蔭に」という言葉が合言葉のように連鎖反応を起こして旧友たちが集うことになる。宗教学者エリアーデによる幻想小説。原書はルーマニア語で書かれている。書かれていることが不可解でも、著者の名による説得力で納得してしまう。
読了日:7月4日 著者:M・エリアーデ





大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)感想
  序盤は密室殺人などをわりと真面目にミステリーをしているけど、他はほとんどミステリーとしてはふざけているものばかり。とは言え、ミステリーの多様性を紹介した本としていいのかもしれない。読み易いが同時にとっても軽い内容。探偵という存在はなかなか面白いのかも、と思ったり。次は小林泰三さんのホラーを読もうかな。
読了日:7月2日 著者:小林泰三





新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)感想
  ここ数カ月でもっとも読むに足りない本だった。思っていた内容とはちがった。ドラッグとセックス。それだけ。狂気の表現が凝ってはいるが、作者の自己満足には付き合いきれない。電車の中で読み終わり、ゴミ箱に捨てて帰ろうかと思った。
読了日:7月29日 著者:村上龍





■ノンフィクション


おかげさまで生きるおかげさまで生きる感想
  同著者の『人は死なない』ではスピリチュアルな死生観も多く書かれていたが、こちらではその面は抑えられている。医者でありなが魂の存在を主張するような突き抜けた部分が面白いので、個人的にはそういうものも読みたかったが、一般向けの自己啓発書としてならない方が良くて正解なのかもしれない。渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』と近い印象。矢作さんの考えの基調となっている宗教は仏教または神道で、渡辺さんはキリスト教なので異なるのだけれど、理想とする日本人像というものが共通しているのかもしれない。
読了日:7月31日 著者:矢作直樹





阿頼耶識の発見―よくわかる唯識入門 (幻冬舎新書)阿頼耶識の発見―よくわかる唯識入門 (幻冬舎新書)感想
  仏教の入門書でもあり、唯識派入門でもある。「阿頼耶識」というのは心の奥のほうの意識のことを言うらしい。唯識をほとんど知らなかったが、私は存在しないとか心は無いとか、私一人で世界だ、とかなかなか考えることの虚しい現実離れした考え方だな、とすこし呆れた。しかし、もっと広く仏教入門的な面では利他主義的な考えを持ちなさい、などのあるべきことを言っているので、やはり仏教は良いと思えるのだった。世界を変えるのではなく、己を変えて世界の見え方を変えようとしているのが仏教だろうか。宗教でありながら信仰とも程遠い。
読了日:7月29日 著者:横山紘一





日本の神話―天の岩戸は、何を象徴するか (1967年) (カッパ・ブックス)日本の神話―天の岩戸は、何を象徴するか (1967年) (カッパ・ブックス)感想
  『古事記』と『日本書紀』に書かれている、イザナミイザナギなどの神話について。書かれたのが随分昔だし突飛な説が多いのでいろいろ信じるわけにはいかないが、その分トンデモな解釈の説が多くておもしろい。ただ、著者がフロイト心理学に影響されすぎているからか、解釈を性的な象徴として考える方向に偏りすぎているのはどうかと思う。こういう昔の本は変なことも平気で書いてあるのでたまに読むとけっこう面白いかも。
読了日:7月27日 著者:高橋鉄





聖と俗―宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス)聖と俗―宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス)感想
  「聖と俗」というタイトルだが、当然と言えば当然で書かれている多くは聖、言いかえれば宗教的なもの。聖なるものの定義のために、その対照である俗なるものの提示が必要、とのこと。「宗教的人間」という言葉が何度も使われていて、なかなか新鮮な考え方を与えてくれた。例えば神父や僧侶は宗教的人間だろうが、彼らとて非宗教的となる時間があるはずだ。逆に、我々現代人も極めて短いだろうが宗教的人間となる時間がある。要するに宗教的人間とは職業や特定の人物を指すのではなく、祈りや儀式により一時的に聖性をまとった人間を指すのだろう。
読了日:7月27日 著者:ミルチャ・エリアーデ





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ムントゥリャサ通りで

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ゴリオ爺さん (新潮文庫)

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おかげさまで生きる

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