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2014年4月の読書

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2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4473ページ
ナイス数:72ナイス


「安部公房と小林泰三」(2014.04.27)




■フィクション


玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)感想
  悪夢みたいな怪奇小説。第一作品集。「玩具修理者」は怪奇でありながらファンタジーかマジックリアリズム小説のよう。「酔歩する男」はSFでありながら自己存在への懐疑にまで至ってしまい、敢えて名付ければ「ヒューマン・ホラー」。デビュー作でありながらも、二編とも少しずつジャンルが違うが独特の恐怖と不安感をひしひしと与えてくる。小説で言う「ホラー」というのがよくわからないのだが、「酔歩する男」の終盤は実にホラーだった。自意識の脆さに怯えるとなると何に怯えているのかもうわからない。無限に続く螺旋階段を歩くようで。
読了日:4月21日 著者:小林泰三




無関係な死・時の崖 (新潮文庫)無関係な死・時の崖 (新潮文庫)感想
  シュールな短編集。着想ありきな話が多く、全体的には不満。しかし、仮にズバ抜けた着想のある話というのは、読み始めた瞬間から読者は負けていて作者が勝っている感があり、出オチみたいなものなのでオチはなくてもいいのだろう。「無関係な死」のアパートに帰宅したら赤の他人の死体があった、という着想と他人や警察不信から起こる展開が素晴らしい。そもそも「無関係な死」というフレーズが非常に安部公房らしくて非常に巧い名付け。都市に生きる現代人だからこそ意識する、人の行き死にの自己との関係と無関係さ。
読了日:4月19日 著者:安部公房




友達・棒になった男 (新潮文庫)友達・棒になった男 (新潮文庫)感想
  戯曲、「友達」、「棒になった男」、「榎本武揚」の三編収録。どれも舞台を見たいとは全く思わなかった。「友達」の着想も展開も安部公房らしさが詰まっているが短編小説「闖入者」で読んだことあったし。ほぼセリフだけで読み易いが、安部公房のうま味の一つとして比喩の独特さとくどさなどがあるわけで、それも含めて安部公房だと思っているわけで、戯曲になってしまうとその味が無味になってしまい非常にもったいない。安部公房入門にはいいのかもしれない。
読了日:4月19日 著者:安部公房




アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)感想
  家族の崩壊と再生の物語。「アルゼンチンババア」と呼ばれるユリさんも主人公の女の子の父親も、どちらもキャラクターがちょっと現実とはズレていて、現実的な物語でありながらファンタジーらしい、その絶妙さが巧い。そして父親を失った少女の心の描写などが見事。個人的にこの話にとても共感でき、今まであまり良い印象のなかったよしもとばななさんへの評価が高まった。人によってはこんなのどうでもいいと思われる物語かもしれないが、ぼくにとってはとても親近感の湧くたまらなく熱のこもった物語。
読了日:4月19日 著者:よしもとばなな




太陽の季節 (新潮文庫)太陽の季節 (新潮文庫)感想
  短編五編収録。「太陽の季節」は文學界新人賞と芥川賞受賞作。全体的にまとめてしまえば、青春、暴力、セックス。当時はさぞセンセーショナルだったのでしょうが、前年ながら今読む価値は全くない。将来的にまた流行は来るかもしれないが。時代に合った物を書いたという意味で「テーマ勝ち」という言葉が浮かぶ作品群。しかし今読むと話の筋としてつまらなすぎやしないか。
読了日:4月30日 著者:石原慎太郎




聖痕聖痕感想
  男根を失った少年の成長譚。まったく女性に興味がなく、かといって男色でもない主人公というのは他にあまり思い浮かばない。その代わり才色兼備な青年に育つのだが、読んでいて惹かれる人物像というわけではない。本筋の成長譚を食らってしまうくらいに、食や料理に関しての蘊蓄が多くてうんざりする。まるで本筋よりもその蘊蓄を書くためにある物語みたいだ。枕詞を多用したり、語りの人称が散漫でありながらも読むには支障がない。そういう実験的なところは巧いと思うが、読んでいて楽しいわけではない。
読了日:4月30日 著者:筒井康隆




ワールズ・エンド(世界の果て) (村上春樹翻訳ライブラリー)ワールズ・エンド(世界の果て) (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
  『極北』を書いたマーセル・セローのお父さんの短編集。じめじめ。どれも初めは希望があるのだがだんだんとどん詰まりに向かっていく。異国で生きるひとびとの苦味とひとりぼっちさ。妻の浮気相手と自分の息子が凧揚げを一緒にしていたことを知るお父さん、切ない。
読了日:4月27日 著者:ポールセロー




長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))感想
  ハードボイルドは自分に合う。しかし、この話のつまらなさはなんなのだろう。序盤のテリー・レノックスとの出会いと別れの部分だけは好きだったのだが、テリーを中心とした事件が始まった直後から、事件とは直接関係のないことが長々と書かれていて全く興味がついていかない。せめて半分くらいの長さなら許せたが……。時間は有限なのだから、長くてつまらないとなれば罪な本でしかない。
読了日:4月3日 著者:レイモンド・チャンドラー




クロス×レガリア女王の領域 (角川スニーカー文庫)クロス×レガリア女王の領域 (角川スニーカー文庫)感想
  「妖怪大集結」みたいな感じで白鳳六家と鬼仙が街を壊しながらぶつかり合う。そんな中で、かよわい人間である主人公・馳郎が精神的に追い込まれていく流れへの持って行き方、書き方がお見事。やはり三田誠さんは良いものを書くな、と改めて思う。元ネタらしい『封神演義』などの中国の古典を読みたくなる。次が楽しみ。
読了日:4月19日 著者:三田誠




レンタルマギカ―妖都の魔法使い (角川スニーカー文庫)レンタルマギカ―妖都の魔法使い (角川スニーカー文庫)感想
  舞台はロンドン。協会本部。オピニオンが登場し、一気に話の規模が大きくなってきた。アストラルの皆もそうだが、イツキ、ラピス、ユーダイクスの信頼関係がこの巻では際立っていて良い。シリーズを通して、やはり魔法の法則や論理がしっかりしているのがいい。それがご都合主義で崩れる前の建前だとしても。しかし、そういうセーフティみたいな建前があるからこそ、法則の崩壊によるカタルシスも増すのだろうけれど。
読了日:4月1日 著者:三田誠




イスカリオテ (電撃文庫)イスカリオテ (電撃文庫)感想
  断罪衣と書いて<イスカリオテ>と読む。戦う偽物司祭様と美少女サイボーグ。聖書の世界観と混ざり合ったファンタジーバトルな雰囲気がなかなか。しかしシリーズ一巻目でありながら、映画一本見て満足してしまったような読後感で、続きを読むかは……。
読了日:4月27日 著者:三田誠




■ノンフィクション


心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 (幻冬舎文庫)心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 (幻冬舎文庫)感想
  単行本からの再読。長谷部さんは凄く立派だしもちろん有名人でもあるのだが、その地位に見合わない謙虚さが素晴らしく、そのギャップによって素朴さが強調されて伝わってくる。一般人との変わらなさがあると同時に、到底マネできなさそうな「心を整え」て努力するための意志を持っている。でもやはり、この本に書かれている自分の心の保ち方などは目標にしたいと思う。サッカーが好きではなくても問題なく読めるでしょう。自己啓発本として名著。
読了日:4月19日 著者:長谷部誠




創作の極意と掟創作の極意と掟感想
  小説創作術の本でもあり物書きのエッセイでもり、物書き志望の人のためにもなり、純読者にとっては小説をより楽しむことと、物書きを目指すきっかけにもなるかもしれない。「凄味」、「色気」、「表題」などのように30個ほどの項がありそれについて述べられている。多く著者自身のものを含めた実作が紹介、引用されている。現代の国内作家と外国人作家が多く、近現代以前の国内の文学はほぼない印象。例外で夏目漱石だけはよく語られていたが。ただ単に筒井さんが読んでこなかったからなのかな。ヘミングウェイについて言及が多くて嬉しい。
読了日:4月19日 著者:筒井康隆




しない生活 煩悩を静める108のお稽古 (幻冬舎新書)しない生活 煩悩を静める108のお稽古 (幻冬舎新書)感想
  ネットに触れないとか肉も卵も食べないでベジタリアンでいるとか、虫も殺さないとかきゃりーぱみゅぱみゅにハマりそうだから敢えて近づかない、とか。小池龍之介さん自身にそういう戒律があり、それらと現代社会での折り合いの付け方とかが意外と面白い。菜食主義であることが自身にとって正義であっても、他人に押し付けるべきではないし、それによって体調を崩したのならばうずらの卵なら食べるように戒律をゆるめよう、など。著者を含めた我々は煩悩だらけだが、仏典の言葉を読むことでちょっとした戒めにはなるんじゃないかくらいの軽い感じ。
読了日:4月20日 著者:小池龍之介




Satori体験―フランス人の参禅記 (1980年) (Books′80)Satori体験―フランス人の参禅記 (1980年) (Books′80)感想
  フランスの作家。邦訳されているのはこれと『世界樹木神話』、『世界宗教・神秘思想百科』、『植物の魔術』くらいなのが残念。その著者がパリなどの道場で弟子丸泰仙さんの元で座禅の修行を行った記録。文章の多くは、長時間の座禅による体の痛みや同じ立場で座禅をしている周囲の人々の無礼さなどに耐える苦しさが書かれている。だからある意味でその苦しみを疑似体験できる、と言えば聞こえは良いが。でも、そういった俗な言葉の狭間に突然投げ込まれる禅の教えなどは、暗闇の中の一筋の光のようでひと際煌めいて見えるから不思議だ。
読了日:4月19日 著者:ジャック・ブロス




「読書メーター」




玩具修理者 (角川ホラー文庫)

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無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

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創作の極意と掟

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