2月14日金曜日
東京に雪が積もった
街からパンが消えた
と言えば大げさすぎるが、
いつも行くスーパーのパン棚は間違いなく空っぽだ
おそらく少なくとも土曜日から月曜日までは
でも、ぼくはパンを持っている
金曜日の夜中に買った焼きそばパンがある
まだあの頃は棚に色とりどりのパンが溢れていた
雪はしんしんと降り積もっていたが
街からパンが消えることなど思ってもみなかった
あの時買いだめしておけば
朝食に食パンをトーストにして
ピーナッツバターを塗りたくって食べられたのに
まあ代わりにホットケーキを焼いて食べるのだが
しかし街からパンが消えた今、
この街唯一のパンであるこの焼きそばパンの
価値というものが物凄く上がっている気持ちになる
金の延べ棒のような焼きそばパン
100円で買ったこの焼きそばパンを
どこかのブルジョアが1万円で買い取ってくれないだろうか
と夢想をしながら今、
右手で空中に掲げられた焼きそばパンを丸齧る
月曜日の深夜
