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2013年11月の読書

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2013年11月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2637ページ
ナイス数:65ナイス



  この11月はKindle Paperwhiteを購入した月ということもあってか、いつもの半分くらいしか本を読めなかったな。Kindle PWではカフカの短編などをちょくちょく読んでいたのだけれど、読書メーターには登録しずらいのでしていない。


  Kindle PWの使った感じなどはこちらに書きました↓


「Kindle Paperwhiteが届いた。」(2013.11.11)




■フィクション


他人の顔 (新潮文庫)他人の顔 (新潮文庫)感想
  化学実験の事故によって顔面に醜い火傷を負う。そして新しい顔として仮面をかぶる。コウモリに襲われてトラウマを負ったバットマンのよう、いやジョーカーやトゥーフェイスの方が近いか。ノートに記された文章は主人公の葛藤などの思考的な部分が多すぎてくどいのだけれど、仮面や整形、化粧というテーマは面白く、やはり安部公房の比喩の多様さ独特さは読みごたえがある。「顔を失った」と男はひたすら信じようとしているが、火傷による顔面の変化は自我をも超える程の新しい顔を無個性な男にもたらす。飛び抜けた個性の入手とも言うべきでは。
  やはりこれを読んでいるとどうしてもヒーローものとの比較をしてしまう。主人公はヒールかアンチヒーローと言えるような存在だろうか。事故はヒーローかヒールになるかの境界線だったわけだが、どちらにしろ社会から半身は外れるしかない。特殊な能力または特性を得たわけだが、この主人公は元の顔に戻る努力でなく二つ目の顔をいびつな方法で完成させようと努める。男のヒールらしい活動としては結局のぞきくらいしかしていないが。事故後の男の目標が元の顔(人格)ではなく二人目の自分だった点は、物語の大きな分かれ目だったのだろう。
読了日:11月21日 著者:安部公房





虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)感想
  小説の中で論文じみた小難しい文章を展開されても、引用されている文献が明確でなかったりして全く信用できない。でも、これでは主人公の思考やディベートみたいなもので哲学や政治などの気取った論文的やりとりが異様に多い。作者の知識量や世界観の構築への熱情は凄いのだが、知識をひけらかしたい気持ちを感じてしまい中二病の延長のように思えてしまう。始めはガチガチのSFとして期待して読んでいたがストーリーの進行は遅く展開も遅く大したことは起こらず期待外れだった。世界を舞台としておきながら書いているのが日本人というのも痛い。
読了日:11月19日 著者:伊藤計劃





ビターバレーの鴉 (幻冬舎文庫)ビターバレーの鴉 (幻冬舎文庫)感想
  初の弐藤水流さん。元公安、現在ヤクザの鴉川(あがわ)が主人公。公安はいろいろなフィクションで怪しい活動をしている組織として登場していて、ぼくとしては実態がつかめず魅力を覚える。「公安のエース」と呼ばれた程の鴉川だが、ヤクザの親分に弱みを握られて冒頭からいきなり情けない役回り。表紙のダークなカッコいいイメージは裏切られるが、やはり優秀ではある。ヤクザの内情をある複雑に絡み合った事件から描いていて、映像作品でよく見るようなサスペンスだが面白かった。ヤクザ側からの視点が多かったりと新鮮さもあり。
読了日:11月3日 著者:弐藤水流





■ノンフィクション


都市への回路 (1980年)都市への回路 (1980年)感想
  二つのインタビューと講演を収録。10頁に一枚くらい安部公房自身が撮影した写真が載っている。インタビューは政治的な話題が多い。政治運動をしていたこともあるだろうが。安部公房の発言も小説も政治性はあるが、運動的でも目的的でもなくさほど嫌いではない。彼の発言というのはあまり読んだことがなかったので面白かった。安部公房の思考と、写真も含めて作家性とは別にその当時の時代性が窺えるのもいい。『BRUTUS』の写真特集に本書が載っていたので読んだ。ガルシア=マルケスジュール・シュペルヴィエルを読みたくなった。
読了日:11月4日 著者:安部公房





鎌倉 古都だより鎌倉 古都だより感想
  鎌倉在住の藤沢周さんの97-99年頃に『新潟日報』に連載していたエッセイをまとめたもの。著者が『ブエノスアイレス午前零時』で芥川賞を受賞したのが98年。繁忙を極めた時期だったのかもしれない。鎌倉についてよりも、故郷新潟に関する記述が多いか。著者の影響で、どちらの土地にも憧れる。十年前以上の時事的な出来事はもうあまりにも古いが、時評的おもしろさがある。小説とはまたちがった類の文学者やその作品への言及がある。本書で少し披露されているが、藤沢さんによる批評をもっと読んでみたいと思う。
読了日:11月30日 著者:藤沢周藤沢周





悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)感想
  退屈。紀行文学らしい箇所と人類学の論文調の箇所があり、南米の話かと思いきや東南アジアやインドに話が飛んだりして、雑多すぎてあまりにも読みにくい。構造主義らしさも感じないし。紀行文学的な文章は読んでいて、沢木耕太郎さんの『深夜特急』を思い出したが『悲しき熱帯』はあれに遠く及ばない。2巻目こそ読む意味があるのかもしれない。が、あまり読む気はしない。
読了日:11月30日 著者:レヴィ=ストロース





森を語る男 (熱帯林の世界)森を語る男 (熱帯林の世界)感想
  「熱帯林の世界」第三巻。アフリカの森の中に住む青年バッチンデリアの幼年期から成人後までの身の上話を収集した一冊。狩り、漁、カバに噛まれて死んだ男、呪術師の話など話題は多岐にわたる。バッチンデリアが語る話には事実もあるだろうけど、意図的ではないにしても誇張や脚色をした伝説のような話も多い。ノンフィクションの中の虚構性がアフリカや森への神秘性を強め、また真実味も増していく。1980年頃を中心とした話だけど、おとぎ話みたいな話もあるので現代のこととは思えない。たまに日本人の研究者たちが話に登場する。面白い。
読了日:11月14日 著者:加納隆至





ウォールデン―森で生きる (ちくま学芸文庫)ウォールデン―森で生きる (ちくま学芸文庫)感想
  1845年にマサチューセッツ州コンコードにあるウォールデンの森に自分で小屋を建てて、二年ほど暮らす。思想家であり詩人でもあるソロー現代社会批判と自然礼賛の書。「森の生活」の邦訳で有名。社会を批判するのは簡単だが、ソローは実際に森で暮らすという日常からの離脱を経験し、社会を外から見ることに成功しているので説得力がある。詩的でありギリシャ神話や仏教経典からの多くの引用によって綴られるウォールデンの森、池の姿はとてもまぶしい。森に住むというこれほどまでの彼の行動力が羨ましく憧れる。人類史上貴重な一冊。
読了日:11月13日 著者:ヘンリー・D.ソロー





読書メーター




他人の顔 (新潮文庫)

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ウォールデン―森で生きる (ちくま学芸文庫)

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ビターバレーの鴉 (幻冬舎文庫)

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