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2013年9月の読書

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2013年9月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3466ページ




■フィクション


刺青 (河出文庫―文芸コレクション)刺青 (河出文庫―文芸コレクション)感想
  96年頃に書かれた中編。近親相姦、姉が亡くなったことでおかしくなり妹と姉を混同しがちな母親、家庭崩壊寸前。ここまでありがちな状況だが、現状打破のために妹のアヤがとった行動は背中に刺青を彫ること。この発想は凄い。そして、全体的にやはり尖っている。同じく河出文庫で同時期の三篇を集めた『サトーリ』に近い。彫り士の刺青屋がスラムのような歌舞伎町のような土地にあり、多国籍的でサイバーパンクなSFっぽくもある。背中に大きく彫る観世音といい、奇妙に文章に混ざる仏教用語が良い味を出している。病的な世界観に価値あり。
読了日:9月7日 著者:藤沢周





アウトロー 上 (講談社文庫)アウトロー 上 (講談社文庫)感想
  トム・クルーズ主演の映画の原作。スナイパーによる殺人事件を元軍事警察官のジャック・リーチャーが追う。普段読まないミステリー系の小説だが映画がよかったので読んでみた。ストーリーは映画とほぼ同じだが、キャラクターが多く描写が細かく、映画がどれだけ原作を削って組み立てなおしたかがわかる。例えばジェイムズ・バーを自宅で逮捕する場面は映画では一瞬だった気がするが、小説ではミランダ警告をするぞとか意識があるか調べるために救急隊員を呼んだりと、細々としている。一方、映画はテンポの速さや演出、トムの魅力が売りだろう。
読了日:9月18日 著者:リー・チャイルド





アウトロー 下 (講談社文庫)アウトロー 下 (講談社文庫)感想
  ハードボイルドで現実的なバットマンとも言えそうな、ダークヒーローの元陸軍犯罪捜査官のジャック・リーチャー。優れた推理力、行動力、戦闘能力が魅力的だが、社会から逸脱したせいで冷静に狂った人物でもある。しかし社会の外にいるからこそ法で裁けない「悪」を懲らしめることができ、この物語でもリーチャーの気にいらないという理由で「正義」は執行される。乱暴で手段を選ずに己の正義を貫く姿はダークヒーローとしてやはり格好良い。これはシリーズの一作で、映画も小説も面白かった。ただ、小説はお人好しが多すぎる気がするが。
読了日:9月30日 著者:リー・チャイルド





マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)感想
  2012年刊行『ディック短篇傑作選 トータル・リコール』と比べると「マイノリティ・リポート」、「世界をわが手に」、「追憶売ります(トータル・リコール)」の三篇がかぶっている。しかし重複のものは二度読む良い機会で、初読のものは凄く刺激的だった。タイムトラベルものであり、ディック自身などのSF作家が出てくる「水蜘蛛計画」は特に面白かった。興奮した。メタフィクションでありパロディであり、物語としてもよくできている。ディックを読んでいると、SFってスゲーなぁと素直に思えてくる。他にない不思議な感覚だ。
読了日:9月15日 著者:フィリップ・K.ディック





けがれなき酒のへど 西村賢太自選短編集 (幻冬舎文庫)けがれなき酒のへど 西村賢太自選短編集 (幻冬舎文庫)感想
  『苦役列車』の著者西村賢太の自選短編集。非常に趣味が悪いほぼエッセイのように思える私小説群。基本的に不幸自慢。露悪的で自虐的、下品で最低の男の話。ひとが敢えて目を向けないと同時にチラ見はしてしまうような、社会の底辺という暗部が書かれているが、事実らしいことと半擬古的で上品ぶった文体などが読む者に読ませる力なんだろう。ただ「社会科見学」的な意味ではホームレス関連の本のほうが衝撃度も新鮮度も高いだろうけれど。『苦役列車』はまだ読んでいないので読みたいし、著者が偏愛している藤澤清造の著書も気になる。
読了日:9月26日 著者:西村賢太





文字移植 (河出文庫文芸コレクション)文字移植 (河出文庫文芸コレクション)感想
  小説らしくない小説。タイトルの「文字移植」や装丁からSFっぽいものを感じていたが全然そんなことはなく、趣味で翻訳をやっている女性が翻訳のためにある島にいって生活と小説が混ざっていって、みたいな感じで、この物語にもこの作者にもあまり深入りしたくないとおもった。作者の来歴や女性であること、母語と非母語との対比など、第29回太宰治賞を受賞した岩城けいさんの『さようなら、オレンジ』に少し近いものがある。ただ『文字移植』は実験的でありメタフィクションな部分に異物感がある。初多和田葉子
読了日:9月18日 著者:多和田葉子





冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)感想
  絵画の修復士であり『Rosso』のあおいの元彼である阿形順正が主人公。辻さんと江國さんの書いたそれぞれ別の物語が合わさって一つの物語になる。辻さんの本は初めて読んだが、物語としての細部もそうだが、文体という面でも別々の人が書いたような違和感はなく驚いた。和歌から派生した連歌に近い実験的な創作方法をとりながらもこの『冷静と情熱のあいだ』は成功している。ここまで完璧に近いものを作ってしまったら、面白い手法でありながらなかなか真似はしにくいだろう。恋愛事情に共感できるし面白いしで、充実した時間だった。
読了日:9月15日 著者:辻仁成





パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から (幻冬舎文庫)パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から (幻冬舎文庫)感想
  『ビブリア古書堂の事件手帖』や『珈琲店タレーランの事件簿』などの「お店+ミステリー」系の流行りな類の本なので読んでみた。ミステリーはあまり読まないが、これは先が気になって面白い。一冊で事件が四つほどあり一つ一つ、元刑事のイケメンパティシエがスイーツなどを交えながら解決していく。わりとノリが軽い文体やキャラだけど、人が死ぬ。『ビブリア』と『タレーラン』では殺人事件はなかった記憶があるから意外だった。殺人の動機とか簡単に人が死にすぎで倫理的に不信感を抱いたが、シリーズものとして続きが出そうで気になる。
読了日:9月5日 著者:似鳥鶏





週末は彼女たちのもの (幻冬舎文庫)週末は彼女たちのもの (幻冬舎文庫)感想
  薄い一冊だけど100人くらいの男女が出てきた気がする。キャラクターをいちいち覚える気にならない。実際は十人前後だろうけど、彼女らのいろいろな恋愛があったり重なっていたり。さらっと読みやすく、いろいろな恋愛のパターンがあるのでどこかしらで共感できるような作り。意外と、男同士でビリヤードをやっている場面が一番好きで印象に残っている。そこで、わたせせいぞうさんの昭和で気取ったふんいきのマンガを思い出した。落雷で遅れた行きの電車と家路に殺到する人々を乗せた帰りの電車でまるごと読んでしまった。
読了日:9月5日 著者:島本理生





さよなら、ジンジャー・エンジェル (双葉文庫)さよなら、ジンジャー・エンジェル (双葉文庫)感想
  死者の世界を創造し生者の世界との交流を描いたミステリアスなファンタジー。死者の世界<シキイ>のルールやアクションシーンでの行動を選択肢で表現するところなどから、ゲーム的小説という印象を受ける。<シキイ>のルールや物語の謎が気になって読み進めたくなるものの、あまり面白くはない。ルールの創作が好きな作家と言えば映画監督だがクリストファー・ノーランを思い出す。彼のオリジナルルールは好きだが、本書はルール自体があまりハッキリせずファンタジー寄りなもので好みではない。『物語工学論』、『サマー/タイム〜』の著者。
読了日:9月2日 著者:新城カズマ





■ノンフィクション


トーテムのすむ森 (熱帯林の世界)トーテムのすむ森 (熱帯林の世界)感想
  ニューギニア島に住むギデラ族をフィールドワークした記録。人類学の専門書でありながら、著者=調査者自身があまりにも主観的に見たものが記録されていて驚いた。例えば『金枝篇』はこういう記録を引用した集大成であり、その一つがこの本なのだろう。大塚さんはギデラの人々にとって始めは部外者だが、「オーツカ」と呼ばれるようになり後半はもう村の一員になりきっている。ギデラの者として認められる試験に合格し、生まれた子供の名付け親にもなり、オーツカの帰りを待って長老の葬儀が行われる。退屈な箇所もあるが、刺激的な一冊だった。
読了日:9月30日 著者:大塚柳太郎





零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)感想
  航空関係の知識に明るいわけでも理系でもないので退屈な箇所もあった。でも『プロジェクトX』的なドキュメンタリーの面白さがあり、宮崎駿監督の『風立ちぬ』をそして先の戦争をより深く知ることができるのでとても良い一冊になった。日本国民ならば読んでおいたほうがいいであろう一冊。この本には零戦の開発事情はもちろん、堀越二郎の個人的な出来事や意見も多く書かれている。設計の仕事の間に身体を壊して長野へ療養に行っていることなどがわかる。それを読むと堀越二郎堀辰雄を同一人物のように意識することはさほど不自然ではなく思える。
読了日:9月26日 著者:堀越二郎





喜びは悲しみのあとに (幻冬舎アウトロー文庫)喜びは悲しみのあとに (幻冬舎アウトロー文庫)感想
  前作『友がみな我よりえらく見える日は』がよかったので第二弾も。弱者を取材したルポとしては優れているが、前作にあった文学らしさが薄れてしまったのが非常に残念。著者が意識してだろうが前作と明らかに焦点がズレている。鶴見俊輔さんの解説を参考にして書くと、前作が「自分を道ばたに転がっている小石のように感じる時、人は自分をどのように支えるのか?」がテーマであるのに対し、本作は「つらい場面をのりこえた瞬間の喜びの表情をスケッチする」がテーマと言える。この二つのズレは面白いが本作は自分には合わない。三冊目も読もう。
  「のりこえた瞬間の喜びの表情」まで書いてしまうのは、テレビのバラエティ番組でやっているようなうさんくさい感動もののドキュメンタリーや、ただ涙を流すためにあるような大衆小説と変わらないのではないか。やはり、前作のつらい時にそれ以上倒れないために支える時の方法や表情までが文学らしいのであってそれを読みたかった。登校拒否で学校に行けずマンガを描いて救われる男子学生。そこで克服は起こらず、弱者でありながらも「生きねば」というリアリティのある表情がそこには見えていた。彼らの存在という現実。
読了日:9月15日 著者:上原隆




木精狩り木精狩り感想
  木精と書いて「こだま」と読む。作家の荒俣宏さんとカメラマン安井仁さんの共著。巨木や奇妙な見た目や伝説のある木を日本全国を巡って取材した文章と写真の記録。木というのはやはり不思議で魅力的でもあり、その見た目から幻想的な物語が伝説として語られ続けていることがある。マングローブなどの沖縄の木を扱った章が三つあり、他に屋久島のがじゅまるとあこうの話など、南の方はふだん生活している土地とはあまりにも別世界で熱帯地域という感じで、そこでの伝説も異世界じみていて面白い。
読了日:9月6日 著者:荒俣宏,安井仁




読書メーター





刺青 (河出文庫―文芸コレクション)

刺青 (河出文庫―文芸コレクション)

アウトロー 上 (講談社文庫)

アウトロー 上 (講談社文庫)

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