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藤沢周 『さだめ』 - AV女優スカウトマン視点

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さだめ (河出文庫)

さだめ (河出文庫)





藤沢周の『さだめ』を読んでいる。
河出文庫から出ている。
AV女優のスカウトマンが主人公という、悪趣味な設定。
でも、AV業界のリアリティとかエグさとか
主人公の男の真剣な視点の描写に、
読み応えを感じさせられる。





街行く若い女を、
AとかBとかCとランク付けする。
Aは極上モノなのだろう。
もちろん、AV女優として優秀かどうか、という格付けだ。
街の素人をそういう目で見る。
スカウトマンの、その目は悲しい。
野球のスカウトマンが野手の肩を、
パワプロ』風にアルファベットで評価するように、
男は女をアルファベットに置き換える。
どちらも仕事だ、仕事ではある。
だが、素人から見ればそれは悲しい。
仕事とは言え。





だが、別に素人である者の目でさえ
その悲しい目と大して差はないのかもしれないが。
街の若い女を見れば、
やりたいかやりたくないか、
はたまた、
やれるかやれないか、
という区別を付けるだろう。
そんな自分を脇に置いて、
『さだめ』の主人公のような
AV女優スカウトマンを蔑むような
態度を取るのは、恥ずかしい行為だろう。





『さだめ』のAV女優スカウトマン。
『波羅蜜』の葬儀屋。
『奇蹟のようなこと』の田舎ヤンキー。
箱崎ジャンクション』のタクシードライバー。
『死亡遊戯』の歌舞伎町のポン引き。





藤沢周の選ぶ主人公たちの職業や立ち位置というのは、
悪趣味だったり、王道でないイメージが強い。
すこし反社会的な。
職業がどうあれ、そういう登場人物は多いだろう。
そういう日の当らない職業に興味はない。
興味はないが、興味がない分、
そういう仕事をぼくは知らない。
だから、新鮮ではある。
そして、読んでみると面白い。
そこが藤沢周の小説の魅力の一つだろう。





波羅蜜

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