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2013年4月の読書

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2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6055ページ
ナイス数:116ナイス





雪闇 (河出文庫)雪闇 (河出文庫)感想
シリアスでニヒルな、藤沢周作品としては珍しく典型的な純文学だった。現実から逃げ続けるような、里に戻っていくような。東京の不動産業の企業に勤める高木は、故郷の新潟に出張しあるビルを買取にいく。そこで、音楽に狂わされる。音楽=青春と言ってしまえば、いい歳した大人が青春に舞い戻っていくような破滅的で虚無的な物語。新潟という土地、雪、荒波、祖母から受け継いだ三味線とその演奏技術。それらが独特の世界観を作り出す。高木とロシア人女性エレーナのセッション場面など、音楽の描写がとてもいい。単行本「ダローガ」からの改題。
  「ダローガ」は作中のバーあるいはクラブの店名であり、ロシア語で「道」という意味とのこと。「雪闇」も悪くはないけれど、「ダローガ」の言葉としての不慣れさからくる違和感が幻想的でもある気がして元の題名のままがよかったとおもう。新潟弁というのは全く馴染みのない方言で新鮮。「もうぞたれ」、頭に残る字面あるいは響き。
読了日:4月25日 著者:藤沢 周





境界境界感想
読み終わって一週間ほど経ってから思い返してみると、なんとなく安部公房っぽい印象。病院、幻想、奇妙な女。特に病院というのが安部公房的な印象が強い。また、現実と妄想の境界が曖昧になっていく流れも。奇妙な女を追う話、という点では同作者の『黒曜堂』に近い。クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』の洗練されていない粗っぽい状態の物語、とも言えるような。とりとめもない物語。いや、モノガタリ…?と疑問を抱く納得できないような物語。人にすすめられる本ではないだろう。でも、この人の書く文章がただ好き。
読了日:4月1日 著者:藤沢 周





笑う月 (新潮文庫)笑う月 (新潮文庫)感想
エッセイと創作が混ざったような不思議な短編集。全部が夢なのかもしれないし、一部は現実なのかもしれない。空を飛んでいる男を見てしまって、その男が家に踏み込んでくるシチュエーションはなかなかな恐怖だ。『箱男』や『壁』などの安部公房自身の作品に言及している文章があるけれど、これが純粋にエッセイなのかは疑わしい。創作自体もメタフィクションなものがあるし、このエッセイもまたそうなのかもしれない。写真が多い、全体のページは少ない。
読了日:4月14日 著者:安部 公房





マボロシの鳥 (新潮文庫)マボロシの鳥 (新潮文庫)感想
短編集だけど小説と言うよりは童話と言ったほうが合う作品が多い。「冬の人形」だけは小説らしくてこの本の中では浮いた存在。話の一つに宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のパロディがあるけど、賢治の童話と少し重なる部分がある。戦争やテロに関わる話が多く、政治的なメッセージを感じさせる。具体的に何を言いたいのかは表しにくいけど太田さんの真剣で熱い気持ちは伝わるような。この本は爆笑問題・太田というキャラクターありきのものだろう。太田さんが好きで興味があるから読んでよかったと思えるけど、そうでなければ読まなくてもいいような。
読了日:4月23日 著者:太田 光





桐島、部活やめるってよ桐島、部活やめるってよ感想
朝井リョウ『もういちど生まれる』や有川浩阪急電車』のような、同一時間の同一の場所を複数の人物の視点で描く「グランド・ホテル形式」の物語。5人の高校生の主観によって語られる。高校時代が懐かしい。まあ、そのくらいしか意義がない本のように思える。読み込もうとすればできそうだけど、あまり真剣に読む気はせず。ヒエラルキーや「上」とか「下」とかに意識的すぎて現代的かもしれないが、異物感が残る。朝井リョウさんは何を書いてもネアカさポジティブさが出てしまうのかな。ネクラな自分とは相性がよくない。映画はいつか観たい。
読了日:4月25日 著者:朝井 リョウ





植物図鑑 (幻冬舎文庫)植物図鑑 (幻冬舎文庫)感想
前半は憧れるような恋愛の話で後半は切なかった。雑草や植物の見方が変わって、ふだんの生活もすこし変わりそうな一冊。イツキや作者にちょっといらいらする部分はあるけど、全体的には面白い。野草採りに連れて行ってくれたり、ノビルのパスタとか料理してくれるような同伴者がいればすごく楽しそう。
読了日:4月14日 著者:有川 浩





有頂天家族 (幻冬舎文庫)有頂天家族 (幻冬舎文庫)感想
森見登美彦。2013年7月にアニメ化された放送されるということで、今まで読んでみたくて読めていなかった森見さんに挑戦。んんん、これは、何が面白いのか理解できなかった…。つまらない、というわけではないけど、面白い、と言えるほどでもない。後半は展開が速くてまだ楽しめたけど、それまでが単調すぎた。もう少しライトノベルっぽくキャッチーだったらいいのかな、と思いながら読んでいた。おちゃらけている割に変にかしこまっていて、アンバランス。キャラの特徴も魅力も薄い。狸は可愛いので映像で見てみたいとは思う。
読了日:4月30日 著者:森見 登美彦





珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
ビブリア古書堂の事件手帖』に近い日常系ミステリーもの。ライトでありチープでもある。読みやすく手ごろな面白さがある。ミステリー的な面白さはあるものの、おそらく原稿をミステリー方面でいじくったせいで、キャラクターが明らかに不自然で物語に動かされていると感じさせるのが残念。あと、ヒロインのバリスタが『ビブリア』の栞子さんほど魅力的ではないなど…。まあ、こういうのが好きな人なら楽しめる無難な出来なんだろう。著者のデビュー作のわりにバリスタの発言などからオヤジ臭さが目立つのが気になる。
読了日:4月23日 著者:岡崎 琢磨





プラチナデータ (幻冬舎文庫)プラチナデータ (幻冬舎文庫)感想
おもしろかった。特に序盤はどんどん読み進みたくなる。読み易いのもあり。SF、刑事モノ、ミステリーをほどよく味わえる。ただ、不思議な女性のファンタジー要素はないほうがよかったかな、と思うけど。先週くらいに放送が終わったばかりのアニメ『サイコパス』と、管理社会という点などで共通点があり読みながらいろいろ考えていた。『サイコパス』で言う、シビュラシステムや免罪体質者に当てはまるものが『プラチナデータ』にあり、どちらもソフトなSFとしてけっこう好き。映画も気になる。
読了日:4月1日 著者:東野 圭吾





小説 PSYCHO-PASS サイコパス (下)小説 PSYCHO-PASS サイコパス (下)感想
アニメと小説、二つで一つ、両方見て読んでほぼ完成、という形。片方だけでは片手落ちとも言える。アニメを見た後の小説は良い補完の材料となっているんだけど、キャラの心理描写をアニメでもっと上手くやれなかったのか…と残念な気持ちになる。アニメありきとしても深見真さんの小説を読むのが好きだった。活字や紙の本が落ち着くのか。槙島聖護は極悪人だけど共感できる部分も憧れる部分もある。レズビアンはバーチャルあるいはフィクションとしては良いのだけど、やっぱり現実的に考えてしまうと種の保存などの倫理観からして拒否感がある。
読了日:4月7日 著者:深見真,ニトロプラス





タイムスケープ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)タイムスケープ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)感想
1980年頃に書かれたタイムトラベルもののSF小説。現在から過去へメッセージを送るというモチーフは『シュタインズゲート』を思い出す。『シュタゲ』に比べればひどく地味で時間超越のための謎解きをくだくだとやっている本作だけど、その謎解き的な部分は面白い。ただ日常的部分がけっこう退屈。しかし、本格派のタイムトラベルものだと思うので読み始めてみてよかった。書かれた1980年頃から見た未来の1998年と過去である1962、63年を行き来しつつ物語は進む。ぼくから見た現在は2013年なのでややこしい。下巻も楽しみ。
読了日:4月30日 著者:グレゴリイ・ベンフォード






レンタルマギカ  未来の魔法使い (角川スニーカー文庫)レンタルマギカ 未来の魔法使い (角川スニーカー文庫)感想
大魔術決闘(グラン・フェーデ)から二年後を描くシリーズ最終巻。後日譚のようなもので書いてくれるだけありがたいのかもしれないけど、まだまだ読み足りないような気分…。でも、新シリーズへの引き継ぎみたいなエピソードがあるのはよかったな。レンタルマギカの世界観はやはり好きだ。まだまだ外伝的なものを読みたい。実はまだ読んでいない巻が10冊以上あるのである意味幸せだけど。三田誠さん、9年間お疲れさまでした。
読了日:4月14日 著者:三田 誠





オルゴールワールドオルゴールワールド感想
キングコング西野さんによる絵本三作目。原案はタモリ。緻密でファンタジックな絵柄だけど意外にもSFでもあった。悪性の細菌だらけで毒に冒された「森」は『風のナウシカ』のようで、空中帝国と「森」の二ヶ所に分かれた人類というモチーフは、地球と月に人類が二分された『∀ガンダム』のようだった。西野さんの描く絵は物凄く細かくて温かみがあり芸術性があるとも言える。アニメーションで観てみたい。絵本だけど子供には理解はできないかもしれない。でも絵だけを見て想像して、大人になってから読み返して分かればいいんじゃないかな。
読了日:4月16日 著者:にしの あきひろ





寺山修司少女詩集 (角川文庫)寺山修司少女詩集 (角川文庫)感想
「帰ってきた寺山修司」という展覧会に行って興味を持った。これは読んでみてよかった。寺山修司の演劇はエログロのイメージで苦手だけど、詩は初々しく、かわいらしく、わかりやすく、言葉遊びも多くとっつきやすい。少年や少女の視点で詠ったものが多い印象。海が多く登場するからか、三好銀さんのマンガ『海辺へ行く道』をたまに思い出しながら読んでいた。憧れる言語風景。
読了日:4月23日 著者:寺山 修司





深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)感想
中東からヨーロッパに入ってしまった。だからなのか、少し面白みに欠ける。『深夜特急』らしい、ひねくれていたり貧しかったり泥臭い雰囲気が薄れてしまった。全体的に映画の話はちょこちょこ出てくるけど、この五巻から六巻までは特に多い気がする。日本人が西洋の映画をよく見ているので、土地との関連で思い出されるのかもしれない。フェリーの旅はおそらくここに来て初めてか。『おもいでエマノン』(漫画:鶴田謙二、原作:梶尾 真治)みたいで憧れる。小学生の頃、北海道まで行きだけフェリーに乗った記憶。次の六巻でもう終点。
読了日:4月3日 著者:沢木 耕太郎





深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)感想
深夜特急』、旅をしない人間な自分にとっても面白い本だった。旅の実用書みたいなものではなく、紀行文学として読んでいたからだろう。5、6巻のヨーロッパ篇は普通の観光旅行みたいであっさりしすぎていたけど、それ以前のアジア、中東辺りはやっぱりよかった。ヨソ者としての旅行ではなく、現地の者に馴染んで生きていく、という感じがおもしろい。全体として、物語で言う伏線があって回収されないものも多くあるのだけど、たまに回収される伏線があるところが良い。回収のなさはノンフィクション的で、そこにたまに混ざって生じる物語性。
読了日:4月7日 著者:沢木 耕太郎





新宿ホームレスの歌―「放浪歌人」の70余年新宿ホームレスの歌―「放浪歌人」の70余年感想
図書館にはホームレスみたいなおじさんが多い。そして、仲がよさそうに他のそれっぽい人と話していてけっこう楽しそうにも見える。その図書館で、「藤沢周」の棚を見ていて見つけた本。短歌を詠む路上生活者・富士森和行さんの短歌を中心とした半生を、中村智志さんが聞き書きしたもの。当然かもしれないけど、ホームレスも昔はまっとうに働いていたんだな、と読みながら思う。富士森さんは未成年の頃から父親の代わりに働きながら短歌を詠んだりする文学青年だったけれど、戦争や病気、不景気などに圧されてホームレスに。興味深い一冊だった。
読了日:4月17日 著者:富士森 和行,中村 智志





植物の魔術植物の魔術感想
フランスの随筆家、作家のジャック・ブロス。『世界樹木神話』の著者でもある。この『植物の魔術』はエッセイのような植物学の本のような不思議な本。著者自身もこの本も神秘性に少し偏っていて色物という感じだけど、そこが好きでもある。植物の進化などを総合的に論じた第一部は特によかった。植物別に論じた第二部は、コーヒーノキ、タバコ、茶、アサなどがよかったかな。やはりこの人は、植物の中毒性や毒について論じている時が一番面白いかもしれない。神秘的で文学的なものが見え隠れしていて。
読了日:4月14日 著者:ジャック ブロス





日本文化の論点 (ちくま新書)日本文化の論点 (ちくま新書)感想
アニメ、東京の地理、AKB48などのフィルターを通して政治や日本文化が語られている、入門的現代文化批評の本。読んでいて、つくづく宇野さんはミーハーだなーと思った。分かり切っていたけどやっぱり。まあでも、作品の批評だけでなく日本文化の批評をするとなればミーハーなことは強みだろうけど。ただ、この本はAKB48と政治に興味のないぼくにとっては少し物足りなかった。『ゼロ年代の想像力』や『リトル・ピープルの時代』は好きだったので、こういう作品の批評を読みたいけど、どんどん政治の方に行ってしまうなあ。付録必要?
読了日:4月3日 著者:宇野 常寛





日本の難点 (幻冬舎新書)日本の難点 (幻冬舎新書)感想
よく分かる部分とちんぷんかんぷんな部分の差が激しかった。主に政治的な文章は元から興味がないので読んでてすこしつらかった。全体的に言っていることが正しいかは置いておくして、読んでいて面白い(部分もある)。作り手側も意識しているだろうけど、章ごとの連続性が薄すぎて散漫な印象。新書一冊で日本を総括的に語る、ということじたいが無謀に近い試みかもしれないけど。宮台さんは発言が少し攻撃的かつ挑発的なところが気になる。それがキャラかもしれないが。初宮台だった。他の著書も読みたい。
読了日:4月23日 著者:宮台 真司




企画脳 (PHP文庫)企画脳 (PHP文庫)感想
名プロデューサー秋元康さんによるビジネス書。実用書というよりは自己啓発書の面が半分くらいある。この本は1996年に『スーパー・ビジネスマン講座』として刊行されたものを、大幅に加筆・修正して2009年に刊行されたもの。細かな時代を代表する「企画されたもの」は2009年頃に流行ったものに置き換わっている。企画術を学びたくて読み始めてみたけど、企画術に特化した本ではなかった。とは言え、秋元さんが「企画脳」だからビジネスについて=広く企画についての本になっていて全くの期待外れではなくて、ためになった。
読了日:4月30日 著者:秋元 康






賢者の処世術賢者の処世術感想
17世紀の著者によるためになる言葉集。初出やどういった状況での記述や発言か気になるところだけど、実際、ためになるような身にしみる言葉が多い。例えば「122 過去」の「(前略)変えられないのは、自分の過去だけ。」や、「172 真実は受け入れ難いもの」の「真実を受け入れるより、嘘を信じるほうがたやすい。」など。簡潔に物事の正鵠を得る言葉の数々。「賢者」という理想像が著者にとって、著者の父親であることが多いのが面白い。神を信じている様子はうかがえるけど時代の割に、意外と宗教性が薄い。
読了日:4月30日 著者:バルタサール・グラシアン





時間に支配されない人生時間に支配されない人生感想
『媚びない人生』の著者のジョン・キム(金正勲)さん。ビジネス書でもあるけど自己啓発書の性格が強い。自己啓発書は苦手なのだけど、そういう先入観のせいでこの本の半分以下しか吸収できなかったように思える。それでも、心に刻んでおきたい言葉は多い。「自分が成長できる場に身を置く」、「人に『忙しい』と言うことは、自分の器の小ささを告白すること」、「失敗なくして優れた本には出会えない」など。向上心に溢れ、正しいことを綴ってはいるけれど、具体的なエピソードが少なすぎる印象。「おわりに」の奥さんの言葉が最も優れた挿話か。
読了日:4月17日 著者:ジョン・キム(John Kim)





先手必勝!仕事を3倍速くする サキヨミ仕事術 (アスカビジネス)先手必勝!仕事を3倍速くする サキヨミ仕事術 (アスカビジネス)
読了日:4月14日 著者:吉山 勇樹





読書メーター





雪闇 (河出文庫)

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マボロシの鳥 (新潮文庫)

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植物図鑑 (幻冬舎文庫)

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プラチナデータ (幻冬舎文庫)

プラチナデータ (幻冬舎文庫)