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11月の読書

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2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3565ページ
ナイス数:67ナイス




箱男 (新潮文庫)箱男 (新潮文庫)感想
難解なストーリー。難解なのは実験的な記述方法のせいだろう。ミッキーマウスの中身の人間が代わるみたいに、「箱男」の中身も代わっていきノートを受け継いでいる、ということなのかな。解釈に自信がないけど。箱男という存在や設定はとても魅力的で好きだ。箱男になることで匿名性に支配されて、彼は誰でもなくなる。ネットが普及した今では匿名をテーマにした作品はありふれているけど、この頃に匿名的存在を使っていることは先駆的なんじゃないか。人権の侵害や匿名的存在は他の作品でも見受けられるものだとおもう。誰でもない誰か。
読了日:11月22日 著者:安部 公房





燃えつきた地図 (新潮文庫)燃えつきた地図 (新潮文庫)感想
この失踪者は『砂の女』の失踪者かと思って読んでいたけど、どうやら違ったようだ。陰鬱であまりにも退屈だった。つまらない、とは言えないけど平凡な物語。ただ、この平凡などうしようもない物語を書き上げたことは平凡ではないように思える。探偵が謎を追えば追うほど謎が深まる、という逆行は振り返ってみれば面白いけど、読んでいる間は楽しくないんだからなあ。
読了日:11月2日 著者:安部 公房





幻夢幻夢感想
短編集。タイトルの「幻夢」は収められている短編の内の一つの名前だけど、全体的にほんのりファンタジーとか夢っぽさがある。藤沢周さんの他の作品もそういうものが多い。ほぼ全てオチのないような話だったとおもう。サスペンスではあるけど、ミステリーっぽく書いておきながら読み終えると全然ミステリーではなかったり。8篇の内の「袋」が個人的に衝撃的で、素晴らしかった。この短い話を読むためだけにでも、この一冊は読んでよかった。容れ物の中の容れ物。良い意味で期待を裏切られて、それが快感でまた期待してしまう。スパイラル。
読了日:11月20日 著者:藤沢 周





スキップ (新潮文庫)スキップ (新潮文庫)感想
昭和40年代初めに17歳だった女子高生がいきなり25年分歳をとってしまってどうしよう、という話。王道なストーリーで面白いけど、教育的な面が強くて10代の学生向けなのかなと思ってしまう。最後のあたりは感動した。文庫で571ページと無駄に思えるくらい長いけど、でも長く寄り添った本だからこその想いも生まれるわけなんだろ。ページ数が多いと言ってもとても読みやすい文章なのでスラスラ読み進められるけど。タイムリープの原因とか描写とかがいい加減で物足りなさが残る。
  一応タイムトラベルものだけど、時間を飛んだ行き先が(現代から見た)未来ではなくて現代(今より10年以上前だけど)=平成というところが新鮮だった。そして、飛ぶ前が昔=昭和。タイムトラベルものではあるけど、未来を描いていない点でSFとは言いにくい作品。
  もちろん現代の平成の風景自体は全く新鮮ではないんだけど、昭和生まれのその時代しか知らない人から見た現代の風景の見方が描かれていて、住み慣れた街を特殊なフィルターを通して見るようなかんじ。
読了日:11月30日 著者:北村 薫





熊の敷石 (講談社文庫)熊の敷石 (講談社文庫)感想
芥川賞受賞作の「熊の敷石」のみで一冊かと思って読んでいたので、唐突に終わったことがものすごく中途半端に思えてしまった。オチの無さに納得いかないけど、短いからまだいいけど。オチが絶対になければいけない、というわけではない。でも、オチの無さを読者に納得させるほどの文章がそれまでに書けているとは思えない。他二篇も含めて静かで落ち着いた文章なのは良いとおもう。「熊の敷石」の熊が石でハエをやっつけようとしたら老人まで……っていうエピソードは面白いとおもったけど、他はまあ、雰囲気は良いね。
読了日:11月25日 著者:堀江 敏幸





ここは退屈迎えに来てここは退屈迎えに来て感想
地方ガール短編集。まあまあおもしろい。地方出身者で20代の女性に合う本なんじゃないか。ちょっと背伸びした中学生以降の十代でもいいかもしれない。恋愛とか性の話ばかりだからくだらないっちゃくだらないし、くだらないんだけど。でも、田舎の退屈感とかそこに滞る人たちの書き方はなかなかリアリティを感じさせる。
読了日:11月20日 著者:山内 マリコ





阿修羅ガール阿修羅ガール感想
無理だった。数十ページ読んでみて、これは真面目に読めないとおもって諦めた。後は適当に一応読んだ。書いている文体も書かれている物語もしょうもない。
読了日:11月20日 著者:舞城 王太郎





きことわきことわ感想
現代だけどすこし古びた和風の雰囲気や文体、場所が逗子なので海岸沿いの雰囲気。そういう雰囲気だけは良い。それだけと言えばそれだけだけど、こういう洒落ていてちょっと上品な文章を書ける人は貴重なのかもしれない。
読了日:11月17日 著者:朝吹 真理子





腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)感想
真剣に怒ったり悲しんだりしているのだけど、どこか白けてしまう。意外にも終始陰湿な暗さの物語だった。田舎サスペンス。一人もまともな人が出てこないところは『グ、ア、ム』と重なるかもしれないけど、『腑抜け』の場合みんなマイナス面が強い。例外的に待子だけが天然なキャラクターなので、闇に灯った一つの光のように映る。それでも救いがない話なんだけど。このどうでもいいどうしようもないような悲惨な一家の事件あるいは物語が、一匹の野良猫から始まっているという皮肉な感じは面白い。
  こういう悲惨な話を小説として、傍から見るような視線で見て喜んでいるのは、ツイッターでの失言とかで炎上の対象を見下して叩いて喜んでいる最近のネットの風潮と重なる。そう考えると読者には好まれるのかもしれないけど、いろいろと卑しい気がしていやだな。
読了日:11月5日 著者:本谷 有希子





モロー博士の島 (ハヤカワ文庫 SF―H・G・ウエルズ傑作集 (266))モロー博士の島 (ハヤカワ文庫 SF―H・G・ウエルズ傑作集 (266))感想
「傑作集2」から読んで次にこの「傑作集1」。「タイムマシン」が収録されている「2」もSFの要素は少なかったけど、「1」はさらにSFらしさが少なくて割とダークなファンタジーに近い。それでも、SFの歴史を考えながら読むとなかなか面白い。歴史の面は荒俣宏さんの解説のおかげが大きそう。「モロー博士の島」はトマス・モアの「ユートピア」に近く、「ユートピア」自体がSFの源のようなところがあるから、現代のSFまでも地続きなのだろう。無人島にマッドサイエンティストが住み着いて動物人間を創り出す……。
読了日:11月14日 著者:H・G・ウエルズ





文学と精神分析―グラディヴァ (角川文庫)文学と精神分析―グラディヴァ (角川文庫)感想
「文学への精神分析の最初の応用」。全集か何かで部分的に読み記憶に残っていたので改めて読んだ。イェンゼンの『グラディヴァ』は青年が彫像が歩いていると妄想して恋するフェティシズムっぽい話で、ギリシャ神話のピュグマリオーンやバルザックの『サラジーヌ』に近く、現代の二次元の女性に恋するオタクの現象を思い出す話でもある。それをフロイト精神分析的に分析していく。この二つはセットだから面白い。片方だけでは微妙かもしれないけど。一つのテクストに固執して深読みしていくような姿勢が好きだ。精神分析の文学への応用の希望。
読了日:11月19日 著者:フロイド,イェンゼン





新潮 2012年 11月号 [雑誌]新潮 2012年 11月号 [雑誌]感想
新潮新人賞受賞作の高尾長良「肉骨茶」と門脇大祐「黙って喰え」を読んだ。この二つはなぜか「食」繋がりの話。どちらも作家としての将来性を買っただけの作品に思えた。新人賞はどれもそんなものかもしれないけど。読者はこういうのを読みたいと思っているのかな、と純粋に疑問に思う。ぼくはつまらないとしか思えないのだけど。沼野充義の「翻訳は世界文学の別名である」は、世界の翻訳事情がすこしわかって面白い。
読了日:11月25日 著者:





快楽上等!  3.11以降を生きる快楽上等! 3.11以降を生きる感想
対談本。おばさん同士の愚痴や若かりし頃の武勇伝を聞いている、という感じの一冊。でも、お二人がインテリだし上野千鶴子さんは社会学者だから面白い一冊にもなっている。笑えるところもあり。主にフェミニズムとかセクシャリティとかについて。「3.11以降を生きる」というサブタイトルがあるように、震災に絡んだ割と真面目な話があるのもいい。人間関係での「予測誤差」という考え方が面白い。
読了日:11月25日 著者:上野 千鶴子,湯山 玲子





現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)感想
2007年刊行なので、すこし古くなった「現代」。言われてみれば、たしかにホームレスを見て見ぬふりして、いるのにいないように扱ってしまうことはあるかもしれないと思った。そういう貧困を隠そうとする意識を見直さなければならないのだろう。学歴が低いことやシングルマザーは貧困に陥りやすいというような、統計による事実から言えば、人は生まれた瞬間から、というか生まれる前から人生はある程度決まっているということになって、なかなか世知辛い。
読了日:11月8日 著者:岩田 正美






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箱男 (新潮文庫)

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幻夢

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ここは退屈迎えに来て

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快楽上等!  3.11以降を生きる

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