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豊田徹也短編集『ゴーグル』

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ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)

ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)


  2012年10月23日。鶴田謙二さんに並ぶ寡作な漫画家、豊田徹也さんの単行本未収録だった作品を集めた短編集『ゴーグル』が発売された。



■目次
  タイトル - 初出
1. スライダー - アフタヌーン 2008年1月号
2. ミスター・ボージャングル - アフタヌーン2011年4月号
3. ゴーグル - アフタヌーン 2003年9月号
4. 古書月の屋買取行 - 彷書月刊 2007年1月号
5. 海を見に行く - アフタヌーン 2012年11月号
6. とんかつ - アフタヌーン 2012年10月号


  待ちに待った単行本未収録の未読の作品を読めたので嬉しい。ぼくにとっては、「スライダー」、「ゴーグル」、「古書月の屋買取行」がこの短編集で初めて読める機会だった。


  たまたま古本屋で『アンダーカレント』のあの透き通るような青い背表紙に惹かれてパラパラと中身を見たら好きな画風だったので買ってみた。それが豊田徹也さんの作品に初めて出会ったときだった。それがどのくらい前だったかは覚えてない。5年は経っていそう。


  『アンダーカレント』が特に気に入ったけど、その時に読めるものは残念ながら他になかった。その数年後かに『月刊 アフタヌーン』で『珈琲時間』を連載していることを知り、にわか『アフタヌーン』読者になる。そして、読み切りの「ミスター・ボージャングル」のときだけ『アフタヌーン』を買ったり。


  そんな経緯だから、「ボージャングル」以降の読み切りは読めているけど、それ以前の「ゴーグル」などは全く読めていなかった。だから、こういう単行本未収録の短編を集めた作品集のようなものが待ち遠しかった。


  今回の短編集『ゴーグル』で豊田さんの作品は「在庫一掃大放出!」ということで、(ほぼ)全て出し切ってしまったようだ。


  「(ほぼ)」とわざわざ入れたのは、一応未収録作品が残っているから。Wikipediaのページには「1989年、アフタヌーン四季賞夏のコンテストにて『のら犬のいない街に住みたくない』が準入選を受賞」(http://p.tl/bdlG)と書かれている。準入選だし2003年の「ゴーグル」からすると10年前の作品なので、習作のようなものなのかもしれないけれど、この「のら犬のいない街に住みたくない」だけは未だ単行本未収録ということになる。


  作者からすればそんな昔に描いたものは恥ずかしくて見せられない、というような気持かもしれないけど、ファンとしては見てみたいものだなぁ。




  それでは、『ゴーグル』の感想をざっくりと書いておく。


  「スライダー」。『珈琲時間』にもいくつかあったギャグ色の強い話だった。あの「ロボット刑事」も笑えたけど、この「スライダー」も笑える。探偵の山崎さんに似た人が出てくるけど別人らしく、浩一は「ゴーグル」にも出てくる青年と同一人物、とのこと。


  「ミスター・ボージャングル」。『アンダーカレント』と同じく探偵山崎さんの人探しで、山崎さん視点で進む物語。雑誌掲載時に読んでいたのだけど、忘れていたから読みなおした。こんなに切なくて世知辛い世の中を思わせる作品だったのか…。助けられて感謝の思いから人探しを依頼するけど、その助けた張本人は生活の困難から泥棒に入っただけだった…、という悲しいようななんとも言い難い事実。不思議な女の子キキは『珈琲時間』の「KIKI The Pixy」の女の子と同一人物なのかな。


  「ゴーグル」。これまた切ない。『アンダーカレント』に近い絵の雰囲気。その絵の雰囲気からして切ない。雰囲気だけの話とも言えるかもしれない。でも、雰囲気だけでも満足できる。


  「古書月の屋買取行」。たった2ページの掌編。『アンダーカレント』のかなえと堀さんのお二人が古書店と中古レコード屋を経営している、というような設定なのかな。パラレルワールドのような。店名が「月の屋」なのは、別の世界線のあの銭湯の名前「月の湯」とかけてあるんだろう。本屋にしてもレコード屋にしても中古屋ってところが豊田さんの庶民らしさが出ていて、親近感が湧く。


  「海を見に行く」。「ゴーグル」の前日譚。あのゴーグルつけて無反応のひろこが、お爺さんと海であはははと笑い合ったりしているんだよなあ。この二作品を、ぼくは発表順ではなくて時系列順に読んでいた。この「海を見に行く」も「とんかつ」もそうだけど、『アフタヌーン』に載った直後の一ヶ月後とかに単行本に収録されてしまう、っていうのはなんだか良いことでもあるんだけど、もったいないような気持にもなった。


  「とんかつ」。当然とんかつを食べたくなる。諏訪千秋みたいなクールな女性はちょっと苦手だなあ。お爺さんのほうは好きだけど。千秋がなんとなくこわい。豊田さんは気に入ってるみたいだけど。話がよくわからなかったな。入れ歯が外れたところは笑わせてもらった。




  豊田さんの作品をいくつか読んでいると、登場人物の繋がりが多くいので、ひとつの同じ世界でちゃんと生活しているように感じられるのが面白い。山崎さんは良いキャラしているのでまた登場する話を読みたい。


  この『ゴーグル』が出たことで、読めたなかったもののほぼすべてが読めて本当によかったなあ。『珈琲時間』は四六判くらいの小さいサイズで残念だったけど、今回は『アンダーカレント』と同じサイズなのもよかった。


  あとがきに、「(「とんかつ」の)諏訪さんはかっこよく描けたので機会があったらまた登場させたいです」と書いてあって、まだ作品を描く気があることがわかって安心した。


  豊田さんはよく失踪しているキャラクターを作品内で描いているけど、そのせいかもしれないけど、豊田さん自身が漫画界から「失踪」しそうな不安がいつもあるので、こういう描く気持を確認できたのは嬉しい。



  気長に新作を待ち望んでいます。




アンダーカレント  アフタヌーンKCDX

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珈琲時間 (アフタヌーンKC)

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