2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3290ページ
ナイス数:46ナイス
斜陽 (新潮文庫)の感想
没落貴族がじわじわと落ちぶれていく様子が美しく書かれている。一人称で女性が語っている部分は「女生徒」っぽい。「女生徒」は興味が向かなかったけど、「斜陽」はまあまあ面白い。落ちぶれていくのに美しいのが良いのかもしれない。太宰の小説はほとんどが私小説ように読めてしまう。それは、作風のせいもあるだろうけど、他の作家と比べて本人の来歴を知りすぎているからかもしれない。
読了日:10月22日 著者:太宰 治
静電気と、未夜子の無意識。の感想
不思議ちゃんな女の子が不思議な男の子に片思いしたりする話。ちょっと幻想的な雰囲気ではあるけど、オリジナリティに欠けるようなありきたりの不思議さに思える。キャラクターにリアリティが感じられない。綿矢りさフォロワーというような印象。そういう女性の書いた文章が好きな人は好きかもしれないが。タイトルと装丁と作者名などの作りだす未だ読まれていない本の雰囲気が好き。作者が美人。
読了日:10月6日 著者:木爾 チレン
スミス海感傷の感想
「カナル高浜」、「スミス海感傷」、「アズマぁ」の三篇収録。「カナル高浜」は、本物か偽物かわからない拳銃を使って中学生三人がロシアンルーレットをする、というような話。これは『スタンド・バイ・ミー』や大橋裕之さんの『夏の手』、あるいは『リリィ・シュシュのすべて』のような、幼い多感な時期を思い出させる刺激的な話だった。前途洋々、縦横無尽のあの頃に戻りたくなるのだった。他の二篇はあまり記憶に残らず。
読了日:10月17日 著者:藤沢 周
銃 (河出文庫)の感想
「銃」は青年が偶然拳銃を拾って、それからの話。つまらないわけではないけど、とても退屈に感じた。溜まった池の油が浮いたりして汚れた水みたいな。特にオリジナリティも感じないので、何が売りなのかよくわからない。タバコ吸いすぎ、缶コーヒー飲みすぎ。読んでいると、安部工房の「燃えつきた地図」や樋口直哉の「さよならアメリカ」、藤沢周の「箱崎ジャンクション」などの小説を思い出した。サスペンスやハードボイルドっぽいところが近いのかもしれない。
読了日:10月31日 著者:中村 文則
神様のボート (新潮文庫)の感想
あっさりすっきりした文章。読み易い。山田詠美やよしもとばななをなんとなく思い出す。何かを食べたくなり、何かを飲みたくなる。不自然ではなく自然とおしゃれな生活の景色。母親の旅に出たがる行動は理解し難いが、子供を手放したくないという気持ちも現実を見ようとしない母親とは一緒にいられない娘の気持ち、どちらも分かるので切ない。タイトルの「ボート」の意味はわかるが、それが「神様の」である必要性がぼくの浅い読みではよくわからなかった。なんか無駄に大げさにしている気がする。江國さんを一冊丸ごと読んだの初。途中で飽きた。
読了日:10月3日 著者:江國 香織
黒笑小説 (集英社文庫)の感想
初東野圭吾。小説や小説家、編集者、出版業界を小説家が小説としてメタ的に書いた前半は特に面白かった。前半だけで終わってしまったのが残念だった。後半は『世にも奇妙な物語』のような短編が続く。これらも面白いけど、下ネタとか性的なものが多くてくだらないとも思ってしまう。オチには笑えたりするのだけど。初めて東野さんの本を読んだけど、やっぱり読ませるのが上手いしミステリーじゃなくても話の作り方やオチの付け方が上手いんだなぁ、と感心した。
読了日:10月24日 著者:東野 圭吾
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)の感想
中二病が成人してから暴発して世界危機。初伊藤計劃ということで、中盤までいろいろ新鮮で面白かった。文体がカッコいい。終盤は新鮮味が薄れたらからか予定調和気味な気がして関心が薄れてしまった。人間や社会に対する問題提起が興味深い。かつての幼馴染同士が世界の命運をかけて対立するトァンとミァハという構図は、『AKIRA』の金田と鉄雄を思い出した。ほかの作品もぜひ読みたい。
読了日:10月31日 著者:伊藤 計劃
タイム・マシン (ハヤカワ文庫 SF 274)の感想
ジュール・ヴェルヌと共に「SFの父」と呼ばれるているらしいウェルズの短編集。全体的にしんみりという印象で、「タイム・マシン」もそんなに面白くはない。意外にもファンタジーに分けられる作品が目立った。荒俣宏さんの解説を読んでいて、SFの歴史をしっかりと知りたくなった。
読了日:10月22日 著者:H.G.ウェルズ
レンタルマギカ 鬼の祭りと魔法使い (上) (角川スニーカー文庫)の感想
「鬼の祭りと魔法使い」の上巻。葛城みかんの実家の話。いつき社長が拳法で強くなり始めていて良いかんじ。人間にも魔法使いにもなりきれない中途半端さとアウトローなところとか、石動圭はなんとなくお気に入りのキャラクターだ。表紙のイラストの切れてしまっている部分が気になる。
読了日:10月9日 著者:三田 誠
ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書)の感想
副題に「人の心を映す鏡」とあるように、本書では「ロボットは人間の鏡である」と主張されていて、それに共感できた。分り易いし面白いロボットについて。 石黒浩さんは物凄く真面目そうな方だけど、(ブラック)ユーモアのセンスもあるようで、たまに大真面目にふざけたようなことを言っているところがあり笑えた。自分そっくりのロボットを作るなど、変わっている。 石黒さんは偉大な科学者であり、かつ「マッドサイエンティスト」でもあるように思えた。とても魅力的な科学者。
読了日:10月17日 著者:石黒 浩
ロボットは人間になれるか (PHP新書)の感想
タイトルが「ロボットは人間になれるか」と一応問いかけになってはいるけど、中身を読むとどうも「ロボットは難しい」という否定的なことばかりが書いてあって、希望的ではない。だからちょっと読んでいて楽しくはない。現実的と言えるのだろうけど。新書ということでだいぶ専門外の人にも分り易く書いてはあるけど、理数系が苦手なぼくにはそれでも難しくて入り込みにくかった。ロボット工学の専門書とかでは数式があったりして、それを噛み砕いて説明するのは物凄く骨が折れそうだ。
読了日:10月11日 著者:長田 正
キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 超大国の悪夢と夢の感想
アメリカのゴシップやとんでも、ビックリニュース、時事ネタの紹介本、という感じの一冊。アメコミのことばかり書いてあるのかと思ったら全然そんなことなくて少しがっかりしたけど、読み終わってみるとなかなか充実していて面白かった。それにアメコミの話も一割くらいはあった。今ではネットがあって海外のへんてこなニュースも日本語で読める機会が増えたけど、それでもこの本にはアメリカの知らない部分だらけで、アメリカという国の意外な一面を知ることができたのは良かった。
読了日:10月11日 著者:町山智浩
今年の10月19日で「読書メーター」を始めてから丸一年が経ちました。密かにそして漠然と目標にしていた「1年間で100冊読むこと」は達成されて、130冊くらい読んでいました。今までで一番読んだ一年間かもしれません。ここ一年くらいでライトノベルを読み始めたことから、冊数の数字としては水増しされている気もしますが。数が全てではないし、多く読んでいるから偉いと考えるのはマズイのでしょうが、こうして数字で読書量を測れたのはよかったとおもいます。多少「ゲーム脳」気味のぼくは、数字が上がっていくのを見ると経験値が溜まっていくように思えて、達成感があるんでしょう。
今まで、一年間の記録を付けたことは全くないので、今までどんだけの量を読んでいたかなんてもう神のみぞ知るってやつです。もう分かりようがないのはもったいない気もしますけど、全てを数字で表せば良いっていうわけでもないのでね。
しかし、100冊は達成しましたが、「読書メーター」を始めたことで、一冊とにかく読み切るという意識と数を多く読まなければいけないという意識が強くなり、読み方が粗くなったとはおもいます。つまらないところや気に食わない、よくわからない部分は読み飛ばすことが多くなってしまっています。以前なら読みかけで放棄していたところを、無理して読み切るから粗く読み飛ばしてでも読もうとしてしまう。
ゆっくり、じっくりと熟読することができなくなっている。そう感じます。気をつけなければ、とたまに思います。
良いことばかりではありませんね。
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