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『永遠の僕たち』(Restless)の感想(追記、2012.01.02)

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※以下の文章はネタばれを含みます。




映画『永遠の僕たち』予告編




「永遠の僕たち - オフィシャルサイト」
http://www.eien-bokutachi.jp/




  ガス・ヴァン・サント監督作品の『永遠の僕たち』(Restless)という映画を観ました。とても良い思い出になりました。




■あらすじ

  交通事故によって両親を失い、臨死体験をした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)のただ一人の友人は、彼だけにしか見えない死の世界から来た青年ヒロシ(加瀬亮)だけであった。他人の葬式に参列するのが日常的なイーノックは、ある日、病によって余命いくばくもない少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会う。

(http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tydt/id339726/)




ガス・ヴァン・サント監督
  ガス・ヴァン・サントはアメリカの映画監督で、ゲイであることを公表していてゲイの映画も作っています。僕の中で、この人の映画はゲイのイメージが強い。あくまでもイメージですが。監督作品でぼくが観たことがあるのは、『マイ・プライベート・アイダホ』、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』、『小説家を見つけたら』、『エレファント』、『パラノイドパーク』、『ミルク』、『永遠の僕たち』(おおよそ公開年代順)ということになります。最も好きなのは、男同士の友情、男女の恋愛、精神科医と患者の信頼関係などが描かれている『グッド・ウィル・ハンティング』です。




■難病モノ青春映画
  この物語は「難病モノ」というジャンルで語れるとおもいます。難病モノというくくりで言えば、『セカチュー』や『恋空』とあらすじだけで見れば近いものがあります。『セカチュー』や『恋空』という作品は観たことないのですが、陳腐だという印象が強いです。「お涙ちょうだい」で、そのために人が死ぬようなものだったりと。『永遠の僕たち』もそういうところがなくはない。ただ、演出が丁寧で素晴らしいのであからさまに感動を強要されているように感じる人は少ないのではないかと思います。


  しかし、『永遠の僕たち』は他二つの作品と難病モノというカテゴリーでは並んでいて、なおかつこちらでは加瀬亮(ヒロシ役)が演じる「オバケ」が出てくるという点でトンデモな作品です。臨死体験や脳の異常などによる幻覚を、いかにもファンタジーチックに見せているので他二作品以上に陳腐になり得る可能性があります。


  ぼくにとって、ヒロシという「オバケ」みたいなあまりにも浮いた存在は良い方向に捉えられたこともあり、総合的にこの映画は気に入っています。「難病モノで陳腐だ」というように感情移入できなかったりするかどうか、観る人や状況によるでしょう。この映画の良いところでも悪いところでもあるのは、難病モノであることだとおもいます。




■死に近い映画
  主人公のイーノックは交通事故で両親を亡くし、自身も昏睡状態が続いて臨死体験をする。その後、ヒロシという日本の特攻隊員だった「オバケ」が見えるようになり友達になる。高校には行かなくなり、赤の他人の葬式や告別式を毎日見に行く生活をしている。落ちこぼれの青年だ。イーノックの恋人になる少女アナベルは不治の病で、彼と出会った時点で余命三カ月と宣告されています。


  ヒロシは既に特攻によって死んでいる人で、イーノックは一度死んでいて、アナベルはもうすぐ死ななければならない。主な登場人物の三人が死そのものか、死にとても近い存在ということです。


  イーノックとアナベルは、彼女が死ぬまでの三ヶ月間なにをするかというとほとんど遊び惚けるんですね。これが良い。観ていて清々しいものがあった。例えば夏休みはだいたい2カ月くらいですが、「夏休みを丸々と遊ぶぞー」とか「就職決まったから卒業まで数カ月遊ぶぞー」とか、そういう心持で三か月後も生きていなければいけないイーノックも死んでいなければいけないアナベルも遊ぶんです。


  二人は始め友達になって、その後恋人になり喧嘩したりします。子供みたいに列車に石を投げて遊んだり、手をつないだりキスをしたりセックスをしたり。その三ヶ月間の記録をぼくたちは見せられて、彼女が死んだ後もイーノックは三ヶ月間の記憶を頭に残して生きていなければいけない、それも見せられる。イーノックが彼女の死後どうなったかは映画で映されていませんが、彼なら大丈夫な気がします。そう思わせる映画になっています。


  話のあらすじとしては難病モノですが、演出がすごく良かった。だから良い映画だと感じる。ガス・ヴァン・サントの映画は映像と音楽が派手ではないけれども、淡く素敵な印象があります。『永遠の僕たち』はガス・ヴァン・サント作品にしては独特な映像などではありませんでしたが、派手すぎずでも綺麗でよかった。ダニー・エルフマンの音楽や冒頭に流れるビートルズの曲も素敵でした。




■特攻隊員のヒロシ(加瀬亮)
  ヒロシはたしか第二次大戦の特攻隊員だったという設定だとおもうのですが、特攻隊員といえば少年兵やわりと若い人が選ばれていたような記憶があります。そういう知識はほぼないのですが、映画を観ている間も30代前半くらいの加瀬さんが特攻隊員を演じているのはちょっと変なのでは、と疑問でした。加瀬さんはわりと若く見えて20代中盤くらいに見えることもありますが。


  劇中で「片思いのおさななじみに結局告白できなかった」というような場面がありましたが、そこまでうじうじしているのが30代前半の人ってのが考えにくい。キャスティングの問題とかもあり、細かいところですがヒロシが何歳くらいのつもりで作られているのかというのが少し気になります。


  ちなみにWikipediaの「特別攻撃隊」の項目には以下のように記されています。


  殆どの特攻隊員は下士官・兵と学徒出陣の士官(将校)である。海軍では下士官・兵は予科練、陸軍では少年飛行兵出身であり、部隊編成上特攻の主軸となった。そして学徒出陣の士官は海軍は主に飛行予備学生、陸軍は主に幹部候補生・特別幹部候補生・特別操縦見習士官出身者からなる。


  海軍の全航空特攻作戦において士官クラス(少尉候補生以上)の戦死は769名。その内飛行予備学生が648名と全体の85%を占めた。これは当時の搭乗員における予備士官の割合をそのまま反映したものといえる。

(http://s78.biz/k/lrno)



  ヒロシが「カミカゼ」=特攻隊員として登場することもあり、劇中では広島と長崎の原爆の映像(どちらか?)が使われたワンシーンがあります。日米の戦争はこの作品で主要なテーマではありませんが、アメリカ人が作った映画で原爆について触れているというのは意外な点でした。アメリカ人視点、日本人視点、それぞれで異なる見方ができそうな映画でもあるとおもいます。


  加瀬さんの演技は悪くなかったです。意外に周りの役者とも合っていました。英語の発音はほとんど違和感なく。「オバケ」みたいな存在なので、それで良いのでしょうが存在としてちょっと浮いている感じはしました。



■追記(2012.01.02)
  たしかこれが冒頭で流れていたビートルズの曲です。いろんなバージョンがあるみたいで、若干ちがう気もしますが。


The Beatles - Two Of Us (Anthology 3 [Disc 2])


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