高校の頃、タツヤと二人で吉祥寺のブックオフに行ったのを覚えている。二人で、安く買える小説を買ったのを覚えている。文庫本は高いけど、単行本は安く買えたから。俺が白石一文の本を買ったのは覚えている。それは当時、かなり衝撃的で面白くおもえた。タツヤが何を買ったのかは覚えていない。彼は翌日の授業中とかにそれを読んでいたのだとおもう。
その時に買ったのか、あとになって買ったのかは覚えていないけど、うちにずっと読んでいない「\105」のシールが付いたままの本があった。鈴木清剛の『スピログラフ』。この本を見ると、タツヤとブックオフに行った日のことをいつも思い出す。カバーがドギツイ色のデザインで、いつも本棚で目立つ。何年もの間、本棚に置いてあったが読んでいなかった。それをすこし読んでみる。
20代前半の男女三人。毎週水曜日の夜にボーリングに揃って行く。カフェスタンドで働く青年。あいまいな理由で大学を中退する元女子大生。就職活動中で内定が決まらない大学生。カップルがラブホテルを探して街を歩いていて、なぜか女の子の方がおしっこを漏らしてしまう挿話とか。いまのところそんな話だ。
現代の小説はどれを読んでも、村上春樹や江國香織を思い出してしまう。これもそうにはちがいないが、ギリギリのところで気取ってる印象をそこまで受けないから、まだ読んでいられる。
こういう青春のストーリーを活字で読んでいると、なんだかこっちも恥ずかしくなってくるような時がある。その感覚が懐かしくて、すこし嬉しい。物語を読むこと自体が久しぶりのようにおもう。
- 作者: 鈴木清剛
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08
- メディア: 単行本
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