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sibafutukuri

音響系音楽、文学、アニメ、映画などについて書こうかなとおもっています。

さっき見た夢

創作物語
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  家族ででかけた後だったのかな。家族と言っても弟はいなかったけど、父と母と一緒に電車に乗っていた。都会方面から地元の駅の方へ向けて。地元の駅に着いたんだけど、両親は二人とも用事があるとか言ってまた電車に乗って来た道を戻ってしまった。俺は別に用が無いから、改札を出て家に帰ればよかったんだけど、なぜかまた電車に乗らなきゃならない気がして、到着を待つ人たちの列に再び並んだ。



  それは帰ってきたほうとは逆の、もっと向こうに行く方向だった。電車が来て乗る。居眠りをしたのか本を読んでいたのかは忘れたけど、気付いたら一駅目に着く寸前で車掌さんのアナウンスが車内に流れていた。外を見ると、どうも全然知らないところらしい。駅名はなんとなく聞いたことがあるんだけど、惜しいような。「牟礼倉敷」とか「連雀外山」とかなんとか。聞いたことがあるんだけど、惜しいんだな。



  知らないところだから焦った。一駅ぶんだからそんなに遠くには行っていないはずだし、もちろん知っている土地なはずなのに。恐くなってとりあえず電車を降りた。改札も出た。すぐに元来た方向の電車に乗りたいと思ったけど、上りと下りの駅が一緒の建物になくて、どうやって元来たほうの電車に乗ればいいのかがわからなかった。



  出たら意外に栄えたような街だった。でも駅は一階建てというか、ちょこんと段差があってそこが「駅らしい」場所になっているだけのようなものだったけど。屋根は一応あったな。駅周辺は栄えてはいるんだけど、ちょっと都会とは少しズレているようなかんじがした。それに道路のずっと先を見ると、いつまでもビルやお店が続くわけではなく途中で途切れて空とか木々が見えてくるようだったし。ぽつんと降り立ってしまった土地だから、都会か田舎のどちらかに二元化させたくて頭が困った。どうやら中途半端な田舎のようなところのようだったけど。東京のひだりっかわにある日野を思い出す。



  すぐに電車に乗りたい気持ちもあった。すぐに帰れるから。でも、特にその後用事があるわけでもなくまだお昼を過ぎたあたりだったから、なんとなく冒険をした気持にもなる。一駅分だから当然歩いて帰れるはずだし。30分くらいならちょっと疲れるけど、じゅうぶん歩ける距離だ。



  道路の角に地図が書いてある看板が立てられたのを見つけた。一駅分だから、うちの場所も載っているはずだから見ようと思って。地図はぜんぜんわからなかった。パッと見て、一部でも分かる場所ならだいたい見当がつくものだ。でも、丸っきりわからない。地名がいっこもわからない。また聞いたことあるような名前がたくさんあるんだけど。「富士見山」とか「柴崎丘」とか。どうして、「富士見ヶ丘」や「柴崎」であってくれないんだろう。それなら分かるのに。携帯の「ナビモード」ってやつで地図を見ても同じで、ぜんぜんわからない。もうどうにでもなれ、とおもった。まだ昼間だしなんとかなるだろうって。



  冒険といっても、街のなかを探索する気分ではなかった。帰りたい気持ちは優先されていたみたいだ。ちょっと街外れまで行くと、そこはもう半分山の中みたいな景観なんだ。土臭い。山の傾斜に畑があったりして。それで、俺は川が流れているのを見つけた。わりと大きな川で、両脇は山に囲まれていて小さな渓谷になっている。野川を思い出した。



  そういえば、電車に乗っているときに川のそばを通ったような気がした。それにここが川の上流なら、下流のほうに行けば都心の方向に近づくはずだ。そうおもって、下流に向かって歩くことにした。昨日が雨だったかみたいに、土の地面が少しぬかるんでいる。靴が汚れるのが嫌だけどしかたない。



  川に沿って歩くのはそんなに嫌いじゃない。前にも夢で見たことがある。それは俺自身はたぶん歩いていなかったけど。川に沿って歩けば、どこかへちゃんと着くような気がする。そんなことを考えながら歩いていて、ふと川の水があるべき場所を見る。そしたら、水が全くないんだよ。さっきまであると思っていたのに。まったくなかった。川は干からびたみたいで、底が丸見えだった。チョコレートみたいに堅くなっておなじ色をした土の地面は、ジグザグにヒビが入っていて、川だけどぜんぜん川じゃなかった。



  5分か10分も歩いていないころ、向こうから人が歩いてきた。大塚だった。まさかこんなところで会うとは思わなかった。しかも数年ぶりだし。「よお」とか言っている。すごく平然としている。「ひさしぶり」と俺は言う。どうしてこんなところを歩いているかはわからなかったけど、どうやら大塚も道に迷っているような様子だった。迷っているかは曖昧だけど、ふらふらと暇そうだった。相変わらず余裕そうなかんじだった。



  大塚は中学の同級生だ。あまり好きではない。嫌いとも言えないけど。ギャンブル好きで陰でこそこそ女遊びして、ちょこっと遊び感覚で盗みをやったりするやつだ。だから印象が良いわけがない。でもなんだかんだで、当時はつるんだりしていて、それでも良いところがあるやつだから完全に憎いとも言いきれない。そのあやふやさがいやらしくて腹が立つけど。そんなやつと、このよくわからない土地でよくわからないタイミングで再会するというのは奇妙だし、迷子になっている俺は気恥ずかしい。



  「飯食ったの?」「いや、まだだけど」「んじゃ、食おうよ。良い店知ってるし」「あー、じゃあ行こうか」と、大塚の提案で腹ごしらえをする流れになってしまった。一人だったらなにも食べずに帰りたかったわけだけど、知り合いに久しぶりに会ったりすると不安と楽しさが合わさったような変なテンションになってしまうからか、一緒に食事するだけでも楽しいような気になる。



  そして二人で今来た道を戻って、駅がある方に向かった。



  大塚が連れていった「店」はどう考えても民家にしか見えなかった。しかも、言っちゃ悪いけどボロい。木材で建てられた小屋に近いような一昔な感じの家屋。その「店」の周りを眺めてみても看板とかメニューなんてものはまったくないし。



  それでも大塚は、インターホンを押してなかの「店員」を呼んだ。出てきたのは小汚いおばあさんで、白い前掛けをして髪をおだんごにしてまとめている。こんな店、入ったことがない。不安なんだけど、恐いもの見たさのわくわく感はあったかもしれない。おばあさんは「どうぞどうぞ」と言って、俺たちを御座敷に上げてくれる。



  入ると、畳の床のテーブルが一つあって丁度いいくらいの部屋に座らされた。中央には円いお座敷用の机があって、周りにはいくつか茶色い座布団がしかれている。俺と大塚はそのうちの二枚に座って、対座した。



  メニューを見つける間もなく、おばあさんは湯呑みに入ったお茶を二つ持ってきてくれた。また「どうぞどうぞ」。俺はそれをズズッとすすりつつ、メニュー表とか壁に貼られているかもしれない料理名が書かれた紙とかを探すんだけど、ぜんぜんないんだなこれが。それでも、大塚はまるで常連客みたいに通ぶってるのかしらないけど平然としてる。



  「初めてのお客さんでねー、いやぁお口に合うかわからないんだけど食べてちょうだい。どうぞどうぞ」と言いつつ、食事を勝手に持ってきてくれた。こちらには選ぶ余地がないみたいだ。



  それは、大きめのどんぶりに入ったほかほかの白米とすこしつぶれて良い感じにご飯と混ざりそうな大粒の梅干しが二つ。ご飯の上に豪快に梅干しがグデンと乗っかっている。運ばれてきたのはこれ一個と、箸が二膳。



  俺が食事をするのがめんどくさいときに作るご飯みたいな料理だ。こんなものをよそで出されるとは思わなかった。料理自体はいいにしても、これを二人で分け合って食べるのは難しいぞ。「すみません、取り皿ふたつください」といって取り皿をもらう。



  味は覚えていない。食事を終えた後、大塚はおばあさんに頼みごとをしていた。「おばちゃん、アレ頼むよ」と言って、ここから帰るための地図やらを出してもらうつもりに見えた。でも、おばあさんが出してきたのはアルバムかなにかでなかには写真がたくさん入っていた。どうやら大塚がいつかの夏にみんなと遊びに来たときの写真みたいで、充実した夏の景色が映っていた。川辺で水着の様子とかバーベキューをしているようなところとか。羨ましかった。



  地図は押入れの奥のほうにしまってあるみたいで、それを取るために上の方に置いてあったアルバムを出しただけだったみたい。おばあさんがゴソゴソと数分やってるけど出てくる気配がないので、二人も手伝って押入れのなかからいろいろと物を出す作業が始まった。5分くらいして、地図が入った箱が出てきた。



  地図を三人で眺めたけど、役に立ちそうはなかった。結局街中にある地図と一緒で、ぜんぜん見てもわけがわからないんだ。一駅分なのに、なんでこんな山奥の知らない場所なんだ。でもなぜか、ちがう路線の駅が三つくらい隣接している場所があって、そこが街の中心になっているようだった。



  「役に立てなくてごめんねー。料理のお代はいいから」と言って、おばあさんはすまなそうにしていた。こっちの気も滅入ってしまうのだった。それじゃ悪いので、一人200円をしっかり払って、俺達はこの「店」を出た。店名があるのかもわからないけど、おばあさんの名前も未だにわからない。出入り口に表札もかかっていなかったもんだから。



  店を出たところで大塚とは別れた。駅の方へ向かったみたいだけど、電車に乗って帰るような雰囲気ではなかった。これから女の子とデートするみたいな感じで、隠しごとをしている素振りだったけどただそういう素振りをしているだけだったかも。あいつはそういうよくわからないところがある。ハニカミ野郎なんだよね。



  俺も駅の方に向かって、電車に乗るとか駅員さんとか交番で道を聞くなりすればよかったのかもしれない。でも、なんだかそれは負けのように思ってしまうんだ。自分に負けたような。それに、電車に乗るとまたどこか知らない場所に運ばれそうな不安もあった。だからといって歩けばいいというわけだはないけど、とりあえずやっぱり川沿いを下流に向かって歩こうと決めた。



  それから先はまだ見ていない。

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