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『物語工学論』

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『物語工学論』、新城カズマ

物語工学論

物語工学論

『物語の命題 6つのテーマでつくるストーリー講座』(アスキー新書) 、大塚 英志著


  昨日、ぷらぷらと書店を歩き回って偶然見つけて、今の自分に最適だと思える本だったからつい買ってしまった二冊。どちらも、アニメ、マンガ、小説、ゲームでもなんでも、とにかく物語を作る人へ向けられた「物語の作り方論」みたいな体裁の本だと思う。まだ『物語工学論』(副題「入門編 キャラクターをつくる」)の序章しかしっかりと目は通していないが。


  でも、『物語工学論』をすこし読んだけれども、実際のところこれらが物語を作る上で役立つかは怪しい。作れる人ならば、自然といままで享受してきた創作作品などからのみの影響で、物語を構築することができるのではないかと考えている。物語を作る上で、物語論を学ぶ必要は必ずしもない、ということ。

  その時、物語作家は自覚するのです――自分は確かにその技術[物語を作る技術]を知っているのだが、知っていることを知らない人に知らせる方法は、おのずと別の技術であるという事実を。

(『物語工学論』、p5、[ ]内は引用者)


  上で言わんとしていることは以下の通りだとおもう。物語作家は物語を作れる。それは実際に作品にできるという意味で。しかし、物語作家は物語を作品にはできるが、作り方を知らない人に教える術を知らない。なぜかといえば、物語作家にとって物語を作ることが当たり前すぎてそれに客観性をもって他者に伝えることができない。


  これは、日本語話者が日本語を話せるが、「ら抜き」がどうして「ら抜き」なのか、動詞の五段活用と一段活用の違いは?、「れる」?「られる」?、というような文法的なことを説明できないのと同じだとおもう。


  実用と説明は別である、といえば簡単かもしれない。物語作家のなかでも、宮崎駿のような人は、昔話などの民話の構造も熟知しているだろうから、説明できそうなものだが、作家にとってそれは創作技術のネタばらしみたいなものだから、出来たとしても普通はしたがらないのかもしれない。




  言うのが遅れたけれども、私がこの二冊を買った理由は卒論のためというわけだ。物語を書くことにいずれ役立つかもしれないが、今はそれよりも、「短編小説の構造分析」というテーマでの論文の資料が必要だと、店頭でこれらを見ておもった。そして、この『物語工学論』と『物語の命題』の二冊は、その期待に応えてくれそうだ。


  『物語工学論』の序章だけを読んでみたが、すくなくともこの本は役に立つと思う。アニメやマンガ、映画などのサブカル系の物語を扱っていて親しみやすいというのも良い。表紙が萌え系のイラストなことが玉にキズだが、しかたないのだろう。そういったキャッチーな外見とは裏腹に、中身は意外にまじめだ。


  レヴィ=ストロースの神話の構造分析についてもすこし触れられているようだし、直接「構造主義」と名前が出てくることはないかもしれないが、明らかにその影響がある。

  本書は、オリジナリティというものを決して否定しませんが、オリジナリティ信仰については少なからず懐疑の目をむけるところから出発しています。

(『物語工学論』、p5)

  本当はゼロから1を生み出しているわけではない芸術家(中略)は、しかし、現実的にはこの近代社会において「神や大自然の代理人」として創造主の役割を果たしていることになります。「著作者」とは英語で author と表記しますが、author の有する特質とはすなわちオーソリティ authority 、つまり日本語で「権威」になります。

(『物語工学論』、p6)


  こういった文章は、そのままロラン・バルトの「作者の死」と重なるくらいに、構造主義の文学論の意志を受け継いでいることを如実に表している。違うのは、ロラン・バルトは「作者 author」を否定(パフォーマンス的であったとしても)したが、『物語工学論』ではあくまでも「作者」の存在を疑い、創作に大事なことはオリジナリティを貫き通すことではないという、物語制作上での、実用的な立場にあるということだろう。




  今から読むのがとても楽しみだ。ちなみに新城カズマさんはSF小説ライトノベルの作家らしい。どこかで見た名前だと思ったら、『サマー/タイム/トラベラー』(ハヤカワ文庫)の表紙を書店で見かけて気になっていたからだった。その気になる大きな理由は、カバーイラストが漫画家兼イラストレーターの鶴田謙二のもの、ということだった。「サマー」とか「タイムトラベラー」とかいう爽やかな印象を与えるタイトルの語句と、鶴田謙二の淡泊な色使いの絵がステキで、中身はダメでも欲しくなった。いつか読みたい。



サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

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