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「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」

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  数ヶ月前に、J.D.サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』、『フラニ―とゾーイ』、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア-序章-』の文庫を中古でまとめ買いしていた。その中で読んだことがなかったのは、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア-序章-』だけだった。それで、いまそれを読み終えた。


  この本には「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」と「シーモア‐序章‐」の二話が収められているが、どちらもグラース家の長兄シーモアが中心の物語になっている。だから、文庫丸ごとシーモアの思い出話みたいなもので、もう2,3年会っていない兄を思い出したり、兄弟で遊んだ幼いころのことを思い出したりして郷愁に浸ることがある。これを読みながらずっと思っていたことは、サリンジャーは兄弟間の露骨ではなく本人たちも意識はしていなかったりする、血の繋がりによる縁のようなものを描写するのがとても巧いということだ。


  サリンジャーの作品で最も名が知られている『ライ麦畑でつかまえて』だって、あれは物語それ自体が起伏に富んでいたり意表を突いていたり、というような面白さがあるわけではなく(私はそういう「面白さ」を文学にほとんど求めていない、期待していないから問題ないのだが)、『大工よ〜』もまた同じである。でも、つまらないのに、兄弟たちの生温かさが懐かしかったり羨ましかったりするから、その人物たちに感情移入していったりして、時が経てばサリンジャーの作品を読みたくなってしまうのだ。


  『ナイン・ストーリーズ』はその名の通り九つの物語を収めた短編集であり、その第一話目には「バナナフィッシュにうってつけの日」が収められている。この短編集を読んでから一年か二年ほどしか経っていないが、話の内容を覚えているのはその話と「笑い男」くらいだ。「笑い男」はそこまで好きな話ではないが、「バナナフィッシュにうってつけの日」は強く好印象が残っている。この話には『大工よ〜』にも登場するグラース家の長兄シーモアが主人公として登場する。『大工よ〜』を読み終えたいま、「バナナフィッシュにうってつけの日」を読みなおしたくて仕方がない。理由はネタばれになるから書かない。


  「バナナフィッシュ」が最も印象に残っているのは、シーモアと浜辺で遊ぶ幼女のセリフやしぐさが非常にかわいらしかったせいだとおもう。『ライ麦畑』の主人公の小学生くらいの妹が、終盤に出てくるのだが、その兄弟のやりとりが微笑ましく、とてもうらやましかった。サリンジャーの作品は、そういう生温かさが読んでいて心地よい。

大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章 (新潮文庫)

大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章 (新潮文庫)

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