sibafutukuri

音響系音楽、文学、アニメ、映画あるいはゲームの感想、攻略などについて書こうかなとおもっています。

宮沢賢治作 「犬」 二、語釈

スポンサードリンク

二、語釈


注、「( )」内の語は辞典に記載されているままの名称。「※」は本文中にはない用語。


【犬】 狗とも。(中略)総じて賢治は犬と「やっぱりしょうが合はない」(詩[丘陵地を過ぎる])傾向があるようである。小学生時代によく近所の犬に吠えたてられた体験の後遺だろうという説もある。(『新宮沢賢治語彙辞典』より)




【ひのき(檜)】 高さ三〇〜四〇m、径一・五mにもなるヒノキ科の常緑高木。(中略)和名「火の木」からもわかるように枝ぶりは炎の形に見え、髪の毛を連想させたりもする。檜が、いずれも動的な印象を与えるのはそのためであろう。賢治作品には楢や柏と同様多く登場する。しかし『牧野植物図鑑』にあるように、檜は福島県以南に分布し、岩手地方にはないはずであるから、おそらく檜によく似たアスナロ(→檜葉) のことであろうか。(中略)いずれにもせよ賢治の檜は、街道筋や丘等に立ち、黒く天に向かって伸び、なにか悪だくみでも企てているように擬人化されたりする(「くろひのき」「わるひのき」など)。目立つ表現として「ひのきはみだれ」(詩[原体剣舞連]〈→原体村〉)があり、さらに象徴的な表現としては「夜明けのひのきは心象のそら」(詩[犬])等があげられる。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




【心象(心象スケッチ)】 メンタルスケッチ(mental sketch)。恩田逸夫によれば「心象」の語は大正期でも必ずしも一般的ではなかった(後略)。境忠一は、今日の「心像」と同意の、image(イメージ)の訳語と考え、大同館の『哲学大辞典』(1912)に「心象」の訳語があることを指摘している。「心象の」意味は、まず、心の中で起こる現象という意味での「こころの風物」(『春と修羅』[序])を意味しよう。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




【薄明(薄明穹)】 薄明の夜空。賢治の最も好んだ語の一。薄明(twilight)は日没後、または日の出前に空が薄く光る現象。(中略)「薄明穹」の「穹」とは「穹窿=ドーム」のことで、地上から見ると空がちょうど円いドームの形に見える(プラネタリウムが好例)ことから、天空の意味にも使われる。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




【灰色錫(錫)】 天然には錫石として産出。スズには摂氏一八度を境に気温の高い時の銀白色のβスズと低い時の灰色のαスズの二つの変態があるが、ふつうはマイナス三〇度ぐらいまではβスズで存在する。極低温ではβスズは表面上に突起を生じ、ついには粉状灰色のαスズに変化して、くずれてしまう。ロシアの博物館で最初に発見されたことから「錫の博物館病」とも、「錫のペスト現象」とも言う。『春と修羅』第二集の詩[津軽海峡]には波の描写に使った例として「あるひは葱(そう)緑(りょく)と銀との縞を織り/また錫病と伯林青(プルシャンブルウ)/水がその七いろの衣裳をかへて」がある。歌[七〇四]にも「錫病のそら」とあり、次の[七〇五]にも「灰色錫のそら」とαスズへの変態を使った用例がある。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




【草穂】 未詳。詩「春光呪詛」には「春は草(くさ)穂(ぼ)に呆(ぼう)け」(『新編 宮沢賢治詩集』より)とルビがふってある。また、この作品の本文は十一行と短いにもかかわらず、「くろくて」「蒼ぐろくて」「うすあかく」「茶いろ」「青さ」というように、色彩に関する記述が多く表れている。




【不正】 1、正しくないこと。正当でないこと。正義でないこと。また、その行いやさま。よこしま。2、きちんとしていないこと。ふぞろいであること。形などがゆがんでいること。また、そのさま。不整。(『日本国語大辞典 第十七巻』より)




【キメラ】 chimera 遺伝子型の違う組織が結合して同一植物体に混在している現象。動物の場合モザイクと呼ぶ。語源は頭が獅子、胴が羊、尾が蛇であるギリシャ神話中の怪獣キマイラから植物学者ウィンクラーがこのように命名した。もとは生物学用語なのだが、賢治の場合は彼の仏教的転生観や進化論の認識とも結びついており、(中略)『春と修羅』の序の「(あらゆる透明な幽霊の複合体)」にもキメラ的生命観の反映がある。詩[犬]では自分に向かって盛んに吠えてくるのに恐れを感じ「それは犬の中の狼のキメラがこわい」とあり、詩[〔はつれて軋る手袋と〕]には「春のキメラがしづかに翔ける」とある。また、初期の短[あけがた]には「一人はさまざまなやつらのもやもやした区分キメラ」ともある。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




【エレキ】 electriciteit(オランダ) エレキテルの略。賢治はエレキ、イレキ、とも。電気のこと。賢治の場合、河原の楊の木に鳥の大群が吸い寄せられるように止まる情景を、あたかも電気の力で吸引されたというふうにとらえる。(『新宮沢賢治語彙辞典』)




※【大犬】 大犬座の略。中国名天狼星。冬の南天星座。オリオンの伴犬とも、冥土の門を守るケルベロスとも、月の女神アルテミスの侍女が連れていた犬とも伝えられる。主星シリウスはそれ自体犬の星とも呼ばれる。ス[四一]中の「大犬の青き瞳」、詩「東岩手火山」の「大犬のアルファ」はシリウスのこと。童[よだかの星]では、よだかは「南の大犬座の方へ」飛びながら叫ぶ。(『新宮沢賢治語彙辞典』)





宮沢賢治作 「犬」 三、先行文献と参考資料
http://d.hatena.ne.jp/sibafu/20100605/1275665097





■リンク
宮沢賢治作 「犬」 一、作品

宮沢賢治作 「犬」 二、語釈

宮沢賢治作 「犬」 三、先行文献と参考資料

宮沢賢治作 「犬」 四、連ごとの分析

宮沢賢治作 「犬」 五、鑑賞と感想

宮沢賢治作 「犬」 六、参考文献・資料

  スポンサードリンク