sibafutukuri

音響系音楽、文学、アニメ、映画あるいはゲームの感想、攻略などについて書こうかなとおもっています。

「音響を聴く」とは作者になること

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・出力装置、外部環境、人間の心情


  データとして保存された音を再生する際には、出力装置、外部環境、人間の心情などの要素で、音源が同一であってもそれらが異なればがらりと音も変わる(スピーカーで聞くかヘッドフォンで聴くかだけでもかなり違う)。それは狭義にいう音楽も狭義にいう音響も変わらないが、差異はある。私がここでいいたいのは、音響はそれが顕著であるということだ。


・限りなく自然の音響に近い音響


  例えば、ギターの短いフレーズをサンプリングし、ループ、リバース、マーク、ディレイなどのエフェクト群を使用してなるべく非音楽的にサンプルを捏ねくりまわす。そうして出来るのが、もはやノイズに近いかもしれないほど音楽の原型を留めない音響が出来上がる。ここまで非音楽的なものは、エレクトロニカやポストロックらへんのアーティストはあまり作らない。竹村延和、Eluvium、Ovalなどがたまに作っているか。もはやノイズに近いかもしれないとも思うが。だが、私はこれこそ限りなく自然の音響に近い音響であると思う。


・音響の再生


  そういった、人間が慣れ親しんできた音楽とは程遠い音響の場合には、その音は出力装置、外部環境、心情次第でいとも簡単に変容する。音楽は安定しているが、こういった音響は人間の認識ではかなり不安定なものとなっているので、音源を再生するごとにそれ自体が姿を変えて現われる。「再生」という字の如く、再生されるごとに「生命」を持って違った音響として現われる。
  先ほど挙げたギターから作られた音響であれば、作った本人でさえも聴いたことのない音が聴こえてきたり、いつもと少し違った音が聴こえてくるのである。自分の耳を疑いたくなるほどに、一つの音源であっても事毎にちがう音が聴こえてくるのである。その理由としては、普通の音楽の法則が頭に浸み込んでいることと、捏ね繰り回されてできた音響はノイズで複雑に絡み合っているということが挙げられるだろう。音響は不安定であるがゆえに、一定の現象を繰り返さない。


・音響の不安定性


  デジタルディレイやリバースなどの処理の仕方などを説明できれば、私がいつもいっている持論の「音響」などではなく、一般での音響学などで客観的に数字や記号をもってして説明できるのだろう。私はそちらの方面は無知蒙昧なのでそこまでは至らないが。しかし、音響の不安定性を音響学をもってして説明できたとしても、私の音響論を顧みると矛盾している気がしなくもない。
  あくまでもこの不安定性は差異の問題であって、狭義にいう音楽でも十分起こり得ることである。しかし、私が音響へ抱いている希望としては、この不安定要素が多いということが肝要である。


・読者は作者である


  なぜ肝要かというと、まず、音響は録音あるいは編集を終えデータ化した状態で完結すると思っている。完結はするが、これは音響としての音源を完結させたにすぎない。本当に音響を完結させるのは、再生する人々だと思っている。再生する人は、別にその音響を録音した人でも構わない。先述したように、録音した者でも聴いたことがない音が聴こえてくることが多々あるのだから。
  完結させるのが聴者という発想は、同時に原理的作者を抹消させている。聴者が後発的作者となるのが音響であって、それを成立させているひとつの要因が、ここでいう音響の不安定性である。


・音楽を聴くための多大な出費による環境づくりは本当に必要か


  音響の不安定性を重視はするが、出力装置、外部環境、心情を万全の状態で音響を聴くことが必ずしもいいとは思わない。以前に、音楽雑誌で「コンセントや電流のワットの違いによってでさえ、音の聞こえ方は変わる」というような記事を見た。これは極端ではあるし、一見ギャグで言っているのかと思うほどぶっとんではいるけれども、これは正しい。音響、いや音はそれほどにも繊細である。しかし、普通の音楽を聴くためにそれを実践しても効果は薄いだろう。なぜなら、音楽には型があり、事実の音が少し変わったくらいでは人間の自己修正の作用が働き、元の音楽の型にはめ戻そうとするからである。音響ではより効果は高まるだろう。しかし、だからといって高いオーディオ機器をそろえたり、スタジオ室を作ったりとかすることが音響のためにいいということはない。
  良い環境で良い音響を聴くというのは、確かに私にとっても理想ではあるだろう。しかし、そこまでしなくても、様々な音響が一つの音源から聴こえてくるのだから、必ずしもそこまで出力装置や外部環境にこだわる必要はないと思う。


・音響の楽しみ方


  私の音響の一つの楽しみ方というのは、音響の発見である。良い悪いは関係なく、ただ聴こえてこなかった音が聴こえてくることがとても嬉しいのだ。

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