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オオヤユウスケライブ@山奥

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先日の日曜日に、オオヤユウスケのライブに赴いた。

  1997年にバンドLaBLIFeでデビュー。'00年柏原譲とPolaris結成。自身のレーベル「Familysong」を設立。'01年に『Polaris』でデビュー以来4枚のフルアルバムをリリース。最新作は’06年10月リリースの4thアルバム『空間』。'07年秋公開の廣木隆一監督作品「M」、'05年公開の守屋健太郎監督作品「スクールデイズ」の音楽を担当するなど映画音楽を制作をする。またテレビ番組「ハートをつなごう」(NHK教育'06年5月〜現在)のナレーションを担当している。 近年はサウンドプロデューサーとしても活動中。主なプロデュース作品としては、原田郁子ソロアルバム「ピアノ」、ハナレグミ「音タイム」「あいのわ」(09年6月発売予定)などがある。また楽曲提供も多く行う。 '07年よりソロプロジェクトを始動。 現在、レコーディング中!(2009/9/9)


  Polarisというバンドは、元フィッシュマンズのベース柏原譲とオオヤユウスケが結成したもので、フィッシュマンズの影響を色濃く受けた浮遊感のある音響やダブポップと呼ばれる楽曲などを作っている。
  自分はフィッシュマンズというバンドに衝撃を受け、そしてPolarisを知った。残念ながらPolarisは活動休止中ではあるが、オオヤユウスケがソロライブをやるというので、わざわざ山奥の僻地にある東京造形大学まで小旅行に出た。


  ライブの内容はというと、一時間ほど時間があるとのことで三部構成のものとなっていた。始め、オオヤユウスケ一人がステージに現れ、ステージ上にはギターやベースやドラムなどの楽器が揃っているので後々バンド構成でも演るのかと思っていたが、終始彼がアコギや他機材を用いての完全にソロライブであった。記憶を辿り箇条書きとともに内容を記しつつ評価していきたいと思う。


  第一部。アコギにディレイ、ループ、リバースなどのエフェクト。ラップトップを用いて環境音を下地として流す。歌詞なしのハミング。
  このパートが最も気持ちよかったと思う。曲の主幹がアコギによるループで成されていて、その背景には砂利道を歩く足跡のような音や車の排気音や、虫の鳴き声などが含まれる環境音がある。アコギ自体はその場でサンプリングし後は、自動再生を繰り返す方法をとっていたので、彼自身は足元のエフェクターや他の機材をいじるなど、その姿勢からして音響的であった。正直に言うと、Polarisの割とポップよりの曲ばかりを彼は演るのかなと思っていたので、Poralisの“Slow Motion”(11:24)という諸にポストロックのようなダブロックと言うより、分かりやすい音響みたいな曲をやってくれるとは全く期待していなかった。
  この第一部での演奏手法は、ようつべに上がっているEluviumのライブ映像の“Under the Water It Glowed”*2と酷似していて、見慣れたものであったが生でそういった手法を観るのは初であったし、音楽的パフォーマンスとしてはこういった手法は疑問の残るところだが、音響とはやはりこれだと思った。


  第二部。映像、VJ(?)を交えた実験的なもの、名称不明の機材(手を周りで動かしたりすると音がゆらいだりする)、カオスパッド的なものの活用。
  このパートは第一部が分かりやす音響であったのに対して、こちらはやっていることも出ている音もなかなか分かりづらい音響であった。VJなのかどうかわからないが、音と映像が反映しているのかしていないのかは判然とせず、その面では失敗ではないのかと思う。映像を映すスクリーンというのが、彼の斜め背後にあり、前面にはモニタースクリーンがないことからちらちらと、斜め後ろのスクリーンを気にしながらの演奏になっていたこと、映像的には大して面白味がないこと、なにをやりたいのかが把握しづらく今出ている音が、彼の意図であるのかなど成功か不成功かという面で、観ているこちらとしては不安になる演奏であった。途中に歌詞付きの歌もありそれはとてもよかった。結果としては不成功であったとしても、彼がここまで実験的に音響をやっていてくれることに敬意を表したいと思う。


  第三部。割と一般的な音楽に近づいた、エフェクト少なめ。1、新曲2、天気図(Polarisの曲)からのステレオ(LaB LIFeの曲)3、英詞の曲のカヴァー、アンコール=新曲。
このパートでは音響的面白味は薄らいだが、最も一般的で盛り上がっていたのかもしれない。新曲はどちらもエフェクトが少なめのアコギと歌が主体のものだったが、彼らしい曲でありまぁまぁ良かったと思う。「2、天気図(Polarisの曲)からのステレオ(LaB LIFeの曲)」は、後半の「ステレオ」は「天気図」を演奏中にそのままのリフで演ることを思いついたらしい(演奏後のMCで話していた)のだが、その流れはとてもなめらかなもので、どちらも知っていた曲であり好きな方であっただけに心の中では称賛していた。


  総合的に見て、大分音響的かつ実験的なライブだったなと思う。終始ソロのライブで、後半は聴いていて少し飽きてきてしまったことは否めない。「ひとりでできるもん」という証明と同時に、「ひとりの限界」という現実も露呈していたかと思う。「天気図」は個人的に気に入っているのでやはりバンドとして、否、Polarisとして演奏して欲しかったのもあるが。第三部のような一般的音楽を演るようなときはソロだと、ギターや歌が超絶的に優れているとかでもない限り物足りなさを感じえないものかと思った。行ってよかったと思える内容ではあったし、彼の近況をMCで聞けたことや人となりが魅力的であったこともあり、それなりの収穫であった。残念ながら少なくとも近い将来にはPolarisを再開する気は無いように見受けれたが、現在ソロでのレコーディング中ということで、それが今回の第一部、二部のような内容なら許せるかなと思える。


  ライブ会場となった東京造形大学は多少縁のある場所ではあるけど、実際に行ったのは初めてであった。正直、この大学の僻地具合をなめていた。駅を降りると周りには高い建造物はなく、ほとんど山の中で、大学へと向かうバスは道中は山奥を進んで行く。キャンパスは地図などで見て想像していたよりは小さく見え少し親近感を覚えた。

  一番驚いたのは、小学校以来の後輩に遭遇したこと、しかも彼もオオヤユウスケのライブを観る予定であったことだったのだけど。彼はバンドをやっていたりして多少の音楽的交友もあったことから音楽について語りあったり、美大の授業風景などの情報を提供してもらったたりした。彼はPolarisフィッシュマンズの方面は然程詳しいわけではないようで、オオヤユウスケを知ったのはハナレグミクラムボンなどを通してとのことであった。ハナレグミ方面となると自分は好きではないしむしろ嫌悪感を抱く方ではあるのだけど、オオヤユウスケはこちらとの交友が盛んであるようだ。その後輩の話を聴いたりライブを観ていたりして、美大というのは音楽でもなんでもクリエイティブなことをするには最適なんじゃないかと思った。この大学の場合は山奥にキャンパスがあることが、創造的な面ではとても幸福なことなんではないかとも思い、少し彼を妬ましく思った。


  考えてみれば、この夏季期間に自然の中に埋没したのは今回くらいだろう。特に自然の中で何をしたわけではないけど、あの寂れた空気感が気持ちよかった。


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*1:http://oyayusuke.blog.shinobi.jp/

*2:Eluviumの音源では最も気に入っているかもしれない。http://www.youtube.com/watch?v=DdzCnht_uxM